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8月10日 日本の空で起こるスピカの星食

日本の空で8月10日夜、おとめ座の主星スピカに隠される 星食がおこります。

スピカと月が次第に近づいていき、スピカは突然消えます。
そして月が通過するとまた突然現れます。

この日は旧暦七月七日
七夕の夕べにおこる素敵な現象です。

前記事でアンタレスについてご紹介しましたが、今回は条件さえよければ、目のいい人は肉眼でも確認できるでしょう。
そして双眼鏡があれば、月が動いて星を隠す瞬間を捉えることができます。
ぜひこの競演をご覧いただきたくご紹介します。


タイトルの絵は、東京での様子 です。
これはスピカが月に隠れる直前、20:20頃のイメージです。
月のちょうど天辺にスピカが灯るように乗っています。もし晴れていればこんな光景が見られるでしょう。
このスピカがふっと消えるのが20:24~25分頃です。
(他の日本各地の時刻と見え方は後述します)

1等星の星食は今年3回も起こり、そしてそれらはすべて日本列島を横切る接食(グレージング)となります。
1等星の接食が集中して起こるのは珍しいことです。
今回のスピカは、日本海の粟島から太平洋岸の北上川河口にかけて、グレージングのラインが走ります。
この接食についてもあらためて詳説します。

そして。
この七夕の夕べに起こるスピカの星食は、今年もう一度起こります。
次回はクリスマス聖夜、12月24日~25日の深夜に起こるのです。
日本では今回と対の光景となります。
今回は、西んでいく七日月
次回は、からってくる二十五日月
ちょうど鏡映しに反転したような光景です。
東洋と西洋、2つの特別な夜にかけたイベントになります。

「食」は天体が動き合いながら交わる瞬間。
ここで見落とされがちなのは、観測している視点もまた同じように動き合う中で起こる現象であること。食は2つの天体だけでは起こりません。
つまり食とは、動き合う3者が一直線上に整列し重なり合うことです。
レイプロジェクト唯我では、この食という整列を意識のシフトのタイミングとしてとらえています。それにあわせたイベント「アクシスアライメント」について、記事末にその情報もお知らせいたしました。どうぞご覧下さい。


月によるスピカの星食


星食」は、「」が「恒星」を隠す現象をいいます。

そして星食は、
星が月に隠される瞬間の「潜入
星が月から現れる瞬間の「出現
の2つのイベントから成ります。

月は黄道帯から大きく離れること無く動いていきますので、その通り道にある星は次々と月に隠されてはまた現れます。

ほぼ点像である遠くの星に比べて、近くにある月は巨大なので、その様は、まるで大きなクジラが小さなイワシを次々と飲み込んでいくようです。

中でも、月と食をおこす可能性のある1等星は、アルデバラン(おうし座)、レグルス(しし座)、アンタレス(さそり座)、そして今回のスピカ(おとめ座)、の4つだけで、いずれも黄道帯にある星座の主星です。

今回は月がスピカを食します。

スピカ(Spica)は、おとめ座の主星。1等星です。
春の宵に昇ってくる、春の代表的な星として親しまれています。
スピカの語源は「穀物の穂先」といわれ、星座絵では乙女が持つ麦の穂にあたります。

今回のスピカ食の見え方

◇◇◇◇◇◇ ポイント ◇◇◇◇◇◇◇

・8月10日の日没後、月を見つけて下さい。
 20:00までに見つけておくと見逃しません。
 月は南西~西南西にあります。
 高さは沖縄九州以外はかなり低い位置になります。
 西南西の低い空が開けた場所で眺めて下さい。

・そしてスピカは月の左側にありますが、
 時間とともにどんどん月に近づいてきます。
 暗くなると肉眼でもなんとか見えると思いますが、
 ぜひ双眼鏡をご用意下さい。

・場所によって見え方が違いますので、
 以下記事を参考にしてください。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

全国各地での概要と予報時刻

まず、今回の星食は、山形市・仙台市のやや北あたりを限界線が通っていて、それを境にして北の各地では星食はおこりません。
星食が見られるのはそれより南の地域になります。

ここで、国立天文台から出されている情報をご紹介します。どうぞぜひご覧ください。

https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2024/08-topics02.html

特に、この図を見ていただければ、スピカがどのあたりに潜入して、どのあたりから出現するか、わかりやすいですのでご参照ください。

国立天文台 ほしぞら情報2024年8月より

食が起こらない地域での見え方


札幌市
付近をはじめ北海道全域では、日没後、西南西の低いところにある月を探してください。
まだほんのりと空が明るいうちに、沈みゆく七日月の左上にポツンとスピカが光っているのを見つけて下さい。双眼鏡はぜひご用意下さい。
食は起こりませんが、地平近くで2つの天体が接近している光景は美しいものです。
北海道ではそのまま月はすぐ沈んでいきます。
秋田市・盛岡市付近では、北海道よりも月は高く、両者はさらに近接して見えますが、やはり近づきながら月は沈んでいきます。
しかしこの光景は見る価値がありますので、ぜひ双眼鏡をご用意して眺めてみて下さい。
これらの地域では、20:30頃までが勝負です。

食が起こる地域での見え方


代表的な都市での見え方を記述していきますので、
最も近い都市の様子を参考にしてください。
時間は±3分くらいの幅を持って臨んで下さい。
そしてぜひ双眼鏡をご用意下さい。
各地とも20:00にはスタンバイしてください。


仙台市
付近では、
スピカの潜入 20:30
スピカの出現 20:38

月の上にあったスピカが「潜入」し突然消えます。
そして再び現れる「出現」は、七日月の先端です!
星が突然現れる様は感動的です。
目をこらして現れる様を見届けてください。

東京付近では、
スピカの潜入 20:25
スピカの出現 20:51

まずは月の上にくっついているスピカを見つけて下さい。
そこにあるスピカが、予報時刻頃ふっと消えます。
そして次に現れるのは、
月の先端に近い「明るい側」になりますので、
出た瞬間は気づきにくいかも知れませんが、
ぜひその瞬間を捉えてみて下さい。
なんとか月が沈む前に食が終わります。

大阪付近では、
スピカの潜入 20:20
スピカの出現 20:52

南に行くほど深く入り込むので、
隠されている時間も長く、30分を越えてきます。
時間までに月の上にあるスピカを見つけて潜入を待ちます。
出現するのはやはり先端付近の明るい側です。

福岡付近では、
スピカの潜入 20:13
スピカの出現 20:52

九州では、月の高度は高く見やすいです。
潜入のときはまだ空がほのかに明るいかもしれませんが、
充分見えるでしょう。
40分近く隠れています。

那覇付近では、
スピカの潜入 20:12
スピカの出現 21:14

沖縄では、さらに月の高度は高く、
そして食の時間は1時間を越えます。
潜入ポイント、出現ポイントは、
本州とは大きく違ってきますので
紹介した国立天文台の予報図を参照してください。

もう一度スピカ食の予報です↓

https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2024/08-topics02.html


参考情報

もうひとつ、わかりやすい予報資料として、ASTRO ARTSの記事をこちらにご紹介します。

※この記事のご注意
記事中の、各地の潜入出現ポイントを記した月の図ですが、実際に「見たイメージの月」ではありません。かなり傾いて描かれていますのでご注意下さい。図は、見たそのままのイメージで描かれている前記の国立天文台の予報をお勧めします。
この記事では月を「天の北極方向」を上に描いています。専門の観測機材を使う天文屋にはこの方が便利だからです。正確に作図されていますが、実際に見たイメージとは違うことをご承知下さい。


接食(グレージング)とは

さて、ここからはさらに興味のある方向けのお話しです。

前回夏至前夜のアンタレス食もそうでしたが、今回のスピカ食も、星食限界線が日本列島を横切ります。

限界線は、西から東へと動いていく月の影の縁によって描かれる線ですが、
この線より北側では食にならない「北限界線」と
この線より南側では食にならない「南限界線」があります。

前述したとおり、今回は北限界線になります。
これより北は星食は起こらず、これより南は星食がおこるという境目の線です。

そして、その限界線上で起こる現象は特に「接食(グレージング)」と呼ばれます。
接食は、特殊な星食のケースと言えます。

今年の2つのスピカ食 限界線位置

今回は北限界線が日本列島を横切ります。

その線上では、月とスピカは、重なり合うでもなく、離れて行き違うのでもなく、お互いタッチするように接してすれ違う現象となります。

この天体同士がふれあう現象を特に「接食(グレージング)」と呼びます。

グレージングgrazing とは、「すれ違いざまに触れる」「擦れ擦れ」という意味で、天文用語では天体が天体に接してすれ違う現象、日本語では「接食」です。

おこるかおこらないか?
触れるか触れないか?
ぎりぎりで際どい現象です。

グレージングについては過去記事に太陽と月について書いていますので、こちらもどうぞご覧下さい。


スリリングな接食(グレージング)


月の縁は滑らかに見えますが、望遠鏡で観るとクレーターや山谷があり、かなり凸凹しています。

今回ちょうどスピカが接する地点の月縁地形を見てみましょう。

出典:星食観測ハンドブック 相馬充氏の計算による

月の縁の地形によって見え方が変わる


上の図は、日本の月探査機「かぐや」が月を周回しながら測量した地形データをもとに描いた、今回スピカが接する場所の地形です。

山脈のように見えるのが月の縁の地形で、ここでは平らに描いています。
そして放物線はスピカがそれをかすめていく軌跡です。
2本ある上側が限界線上、下側はそこから1"角(今回約5km)だけ内側に入ったラインを目安として描いています。
接食観測の場合、少しでも外側に外れると食は起こらず、深く入りすぎると1回入って出るだけの星食になってしまうため、この図を見ながら布陣する場所を決めます。

これは計算による予報ですが、
もし上側の放物線のとおりスピカが左から右へ通っていくとすると、
月の位置、星の位置、月縁データ、そして自分の位置の全てが正確だったとしたら、
スピカは、、、

 ーー点滅ー消えるー現れるー点滅ー消えるーー現れるーー

というふうに見えることでしょう。
それが実際にはどんな見え方になるのが観測です。

今回の限界線は、日本海に浮かぶ粟島から新潟県の寝屋漁港のあたりに上陸して、月山麓の五色沼、新鶴子ダム、東北新幹線古川、北上川河口の北岸、のあたりを通っていきます。

月は沈んでいくところなので、西南西の低い空が見渡せる場所でないと見えません。
もし本気で接食を見てみたいという方はご相談下さい。
できる限りでサポートさせていただきます。

星食・接食についてさらに情報が欲しい方へ


今回は、星食観測のグループであるIOTA/EA"月による星食"部局編の「星食観測ハンドブック」という、たいへん素晴らしい資料をご紹介します。
星食観測の現状や観測結果の整約、そして1年分の星食接食予報と、内容が卓越しています。
自体の活動として一般向け情報提供や観測支援も行っているようですので、どうぞこちらをご覧下さい。

 
 

急遽開催「スピカ食のアクシスアライメント」


レイプロジェクト唯我では、THE FOOL との共同企画として、響き合って意識のシフトを促す「アクシスアライメント」を行っています。
遠隔瞑想セッション「空響禅」を軸にしたイベントです。
今回、このスピカ食のタイミングを使って急遽開催いたします。
加速度的な変化の只中で、静寂に集う。
ご興味ありましたらどぞこちらをご覧下さい。


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