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Cahier 2020.11.24

三連休中日は、かねてより気になってウズウズしていた桃山展@国立東京博物館へようやく行ってきました。

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秋晴れの行楽日和。意識の水面下にどこか緊張を抱えながら、みんながその日その日を懸命に生きている。

会場へ入ると、早速に狩野永徳「洛中洛外図屏風」がどーんと迎えてくれます。街の人々の様子を精緻に描いた六曲一双の屏風は、室町時代に永徳の描いたものから安土桃山、江戸時代と並んで陳列されており、前後の時代との比較を通じて桃山文化の特色を分かりやすく提示すると同時に、その系譜を示すという素晴らしい並びです。国宝とか重文ですしね、集めたくてもなかなかすぐには集められないと思うのですが、さすがトーハクっす。

洛中洛外図っていうのは、当時の人々の生活や姿が見えるようで一度見入ってしまうとなかなか抜け出せない魅力があります。専門的なことは分かりませんが、室町・桃山・江戸と御代替わりするにしたがって、人々の生活はさほど変わらないものの、どこの建物を中心にするか(桃山時代は伏見城、江戸時代は二条城とか)など、政情がはっきりと反映されているのも面白い。絵師は時代の観察者でもあったわけですね。桃山時代に描かれていたのが檜か何かの木であったのに対して、江戸時代には至るところに松が描かれていたり、時代のイメージもひっそりと描き込まれていたようにも思います。

先々週訪れた国立歴史民俗博物館「性差の日本史」展にも「洛中洛外図屏風(歴博甲本)」が展示されており、そこではここに描かれた女性の姿を緻密に追って、彼女たちがどのような身分でどんな暮らし・仕事をしていたかを考察するという途方もない仕事をやってのけておられるのを拝見しました。やっぱり洛中洛外図は漫然と遠目で見るよりも、じっくり虫眼鏡で見たほうが楽しそうです。

市井の人々がどのように暮らしているのかを、あそこまで仔細に活写し、ひとつの俯瞰図として完成させるというのは途方もないことです。写真のない時代、街を歩き人を観察し世相を読むのに敏かった絵師たち。現代にも、カメラを片手にした永徳がどこかにいるかもしれない…。

気になった作品は、また続きをぼちぼちと書いていきます。

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