イドラデモン・アニヒレイト -31- #ppslgr
老婆こと、ここではG・Rとしておこう――彼女がライフルの銃口で神父を突っつきながら道案内させた場所がここだった。
藪、正確に表現するならば山林樹海の良くある木々の密集帯。そこはこんもり海苔巻きおにぎりの様に木々が折り重なっており、人が通るのは実に難しそうな領域だ。
初対面の時の胡散臭い自信たっぷりな様子など今やどこ吹く風。神父もどきが今にも泣き出しそうなビビりっぷりで俺達を案内したのが、この木々の密集地帯であった。見た目だけなら、そう、ただの木々の群れで形成された一角に過ぎない。見た目だけなら。
「ここです!ここなんです!嘘じゃありません!」
「証明してみせな」
「え、いや、自分、もう仲間からリンク切られてまして……どうする事も」
「つっかえないねぇ、その辺の坂に転がそうかい?」
「ヤメテーッ!」
ライフルの先っちょでドスドス腰をつつかれるたびに泣きわめいてゆるしを請う神父モドキ。そんな彼らを放っておいて、俺は迷わずにリボルバーを引き抜く。撃ちだすのはそう、ごく普通の銃弾だ。
回転軌道と共に空中を駆けた弾丸は、木々にあたる直前でビシリ、と硬質のなにか……ガラスめいた物に着弾し、不可解なひび割れが木々に走る。
否、それは木々がある様に偽装していた液晶画面。
破損したタブレットが一枚、地面に落ちて液晶の破損を広げるよりも早く木々が裏返った。目の前の樹海を一部を成す光景は全てタブレットが巧妙に折り重なってダミー風景を形成していたのだ。
「ヒィッ!」
悲鳴を上げて逃げ転倒する神父は無視して、俺達は前方の脅威に集中する。
裏返ったタブレット端末群は見る見るうちに樹海の一角から剥がれ落ちては舞飛び、空中に集約するとその大小さまざまな液晶画面に無数の美麗な光景を映し出してモザイク画の様にその身を巨大な蝶へと変えた。ただし、蝶の本体にあたる部分はまだらに、七色に移り変わる奇怪な女の肢体。
蝶羽根の女はざらついたノイズ交じりの音声でもって、俺達に問いかけてきた。
『ウフッ、ウフフフフフフ……ネェ、アタシ、キレイ?』
「そのセリフを言うならマスクが足りないんじゃないか」
吐かれふるした怪異のセリフをなぞる蝶々夫人に、きっちり煽り返してやるが相手は意にさえ介さない。形態としては先ほどのスキ生首と同じ群体型の脅威だが、こちらは上階への門番である以上より強大な存在である事は容易に感じ取れた。現に神父は泡を吹いて失神している。
攻め時を見計らい、いつでも仕掛けられる様構えていた四者の中からまずはG・Rがライフルを撃ち放つ!蝶々夫人の眉間に高回転ライフル弾が突き刺さると同時に、タブレット群が蝶の群れの様に分散!
「一発程度じゃくたばっておくれでないかい、メンドクサイねぇ」
「きっちりすり潰すしかなかろ、やるぞい!」
まるで飾りコマの様に回転する未確認飛行物体めいて、蝶々夫人が四方八方に美麗画像を威圧的に展示し中空に制止する!
【イドラデモン・アニヒレイト -31-:終わり:その-32-に続く】
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