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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -35- #ppslgr

凡人の理解を超えた科学は魔法、などという表現もある。
だが、古代の魔術王の名を冠したソロモンが起こす現象は、まさに科学が魔法へと達したと表現するに相応しい事象だ。

不気味な赤錆に覆われた古代兵器がその連なった眼から放った、この大地よりもなお紅いレーザーは途中で神隠しにでも遭ったかの様に消失する。
阻まれたのでもなければ、相殺されたのでもなく、忽然と消失したのだ。
俺とて原理を噛み砕いて説明されていなければ魔法だと考えただろう。

「やはりそれなりの武装は備えていたか!」
「事前の打ち合わせの通りに頼むよ!」
「任されて!」

この一帯にある量子を制御し、視覚的には虚空の空間より無数の蒼く光るクナイチェーンを射出する。複数本を集中させてそれぞれの眼を狙うと、分厚いガラスを打ち砕く様にヒビこそ入るが決定的な破壊には一歩至らない。

「砲火、始め!」

俺が追撃に入るよりも速く、ドゥマに統率された各部隊より俺が打撃を与えた赤目に向かって銃撃が、円筒状の噴射煙を伴うミサイルが、そしてずんぐりとしたツボ状の臼砲から大口径の破城弾が一斉に撃ち込まれる。

「MuuuuuuuuuuNnnnnnnnnnnnnnn」

地鳴りの様に唸りながら、バルダン兵に寄る正確な集中砲火を甘受する古代兵器。一つ、また一つと赤目が割れ砕けては破片を舞い散らせる。

「やった、効いてるぜ!」
「まだ表層の脆弱な部分を攻略しただけです!油断せずに!」
「わかってるって!」

軽口を叩きあいながらもガアムとクルカは指揮を続行、随伴兵達は油断なく弾倉を入れ替え、兵器を御する。だが、敵の動きはより早い。

出来の悪い粘土細工の様に古代兵器はその下部から連結湾曲パイプめいた金属質感の触腕を何本も伸長させれば、一斉に周辺のバルダン兵へと襲撃。
5メートルほどの一般兵を丸のみ出来そうなサイズの触腕は兵の眼前へと迫れば不気味に脈動するが、それを黙ってみている俺とイクサではない。

「南無八幡、この世界に居るかは知らんが勇敢な彼らに加護を寄こせ!」

イクサの量子波導制御の大部分を障壁構築に回すと、古代兵器とバルダン兵達の境界を阻むように一周。蒼光ハニカム構造のドームで触腕の放射孔の妨害する。間一髪、古代兵器が噴出したどす黒い汚泥は波導障壁場によってことごとく防がれては、障壁で覆わなかった下方から大地へと落着していく。

「クルカ、あの汚泥の成分は」
「解析中です。ですが筆頭、今すぐ兵を後退させてください。把握できただけでも……」
「各員、後退!忌子を牽制しつつ奴との距離をあけろ!」

副官の一人であるクルカが進言を終えるよりも速く、ドゥマは判断を下し各部隊へ後退指示を行う。即応し、各兵達は後退を始めるが大型兵器についてはこの段上傾斜とあって気軽に撤退と言う訳にもいかない。

「この騒ぎで他人事とは全くいい気なもんだな!」

バルダン兵達が迷わず後退する中、下方に取り残された兵器のいくつかが盆地を満たしていく汚泥に呑み込まれたかと思うと、見る見るうちに溶解していく。金属製の兵器がだ。

「ムゥン!」

ドゥマはその身からジェット噴射を伴って宙を飛び、手にした戦斧を暴風に変えて古代兵器の触腕を斬り落とす!

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -35-:終わり:その-36-へ続く

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