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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -5- #ppslgr

「あなた達の言う事が本当なら、我々は今異なる場所に送り込まれていると?」
「ええ、その通り。そしてそれは僕たちにとっても好ましい事ではありません」

歩哨の案内を経て通されたのはツリーハウスのある樹上の中でも一際大きな木のうろに作られた空間だった。
部屋の内部は、発光機構がぱっと見では計り知れないランプがいくつか天井からつるされている。家具などもこちらの世界と共通するモノは存在する物の、装飾自体はまるで見た事がない様式で少なくとも日本国内に在るべきものではない。

「確かにあなた方の服装は、仮に旅人としても我々には見慣れない物だが、にわかには信じがたい……」

恐らく里の長であろう、異種族の男性はやはり翠緑の髪を長く伸ばし、エメラルドグリーンの瞳と長くとがった耳を持った人物だ。年のころは外見的には青年といった頃合いだが、仮に長命種とすれば見た目通りの年齢とは限らない。まとっている服装も樹皮を伸ばしつぎはぎしてある造りではあるが、彼らのセンスが良いのか決してみすぼらしい印象は与えない。

彼の背後にはこの場に案内してくれた歩哨と、俺がファーストコンタクトを持ったあの少女が控えている。もちろん、少女の方が俺に向ける視線はとても厳しい。利き腕の肩を枝で貫いた挙句、身代をかっさらったのだから当然ではあるのだが。

俺が枝の投擲で貫いた彼女の肩は衣服とは異なる樹皮で覆われており、彼らのやり方で治療されていることが見受けられた。という事はこちらの世界であった事は、元の世界に戻ってもなかったことにはならないという事だ。

「R・V。銃を貸してくれる?」
「ああ」

控えている見張りの二人に断りを入れて、ホルスターから愛用のリボルバーを引き抜いてM・Kに渡す。銃を目にした彼らの反応は、明らかに未知の存在を見た事によるものだ。

「それは一体?」
「これは我々の世界における一般的な武器で、銃と呼称します。鉛の欠片が強い勢いでこの筒の部分より放たれ、相手の命を奪います」
「なんと……確かに、その様な得物は見るのは初めてです」
「もちろん、これだけでは僕達があなた達とは異なる世界の住人と保証するには足りないでしょう。ですが、この集落を取り囲んでいる未知の植物も合わせて考慮いただければ、僕達がウソを言っている訳ではない事の証明にならないでしょうか」

淡々と畳みかけるM・Kに対し難渋した様子ではあるものの真剣に耳を傾ける里の長。こうして話を聞いてくれるだけでも、相当に度量の広さを感じられる。

「シャンティカ」
「はい」

名前を呼ばれて返事をしたのは俺に肩を射抜かれたあの少女……シャンティカと言うらしい、彼女は明らかに不機嫌さを隠さない声色で長の呼びかけに応じる。

「この方達に同行し、異変の真相を確かめなさい」
「エッ……なんで私なんですか。大体この黒いの、私に枝投げつけた挙句攫っていきなり求婚してきたんですよ?」
「ハ?」

彼女の申し立てに今度は俺が唖然とする番であった。
なに、求婚だと?

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -5-:終わり:その-6-へ続く

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