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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -8- #ppslgr

「おかえり、R・V」
「おう、もう来てたのか」

出先より、朝方の都市型創作商業施設「Note」内にあるバー・メキシコへと戻ってきた俺……とシャンティカを迎えたのは、一足早くに戻ったM・Kだった。

シャンティカはというと、ここに来るまでの道のりにおいてもまず首都圏の高層ビルに驚き、電車と車と飛行機に驚嘆し、見た事もない食べ物に後ろ髪惹かれつつも衆目をバッチリ集めていた。

「休む前に今後の方針を相談していいかい?」
「それで頼む。どうせ家じゃ寝れんからどっか宿を借りないと」
「なに、アナタのおうちってそんなに狭いのかしら?」
「ウサギの穴倉並みだぞ、この街の連中の家なんてのは」
「こんなスゴイ街並みなのにおうちはちっちゃいのね……」
「多すぎるんだ、人が」

と、ここまでやり取りした所でM・Kがこっちを見てニマニマしている事に気づき、話を元の路線に戻す。

「昨日の探索で何か分かった事はないか?」
「もちろん、ある。出ないとR・Vのお嫁さん候補を増やしただけに終わった事になるからね」
「そういうのは、いい」

他のパルプスリンガー達に気取られる前に話を進めようとした俺の努力はあっさりと無駄になる。

バー・メキシコ店内にあるテーブルの一つに座っている俺達を、いな、シャンティカの方を複数のパルプスリンガーがガン見しており、シャンティカの方はと言うと謎の熱視線に居心地悪そうに居住いを正す。

「なんじゃなんじゃまた別嬪を連れてきおってからに!とうとう身を固める気になったか!」
「J・Q、彼女は、なんだ、少なくともそういうのじゃない。今回の件の協力者だ」

彼女はフードを目深く被っていた。それにも関わらずその容貌を見抜いていたのか、中世の闇医者の様な黒コートをまとったJ・Qがずかずかと割って入ってはこちらを問いただすのに対し、俺は鷹揚に否定する。

「なーんじゃツマラン。そろそろトンチキ胡乱トラブルに巻き込まれるのはほどほどにして所帯を持っても良い頃じゃろう?」
「どうかな、俺の予想じゃ今後も胡乱トラブルに巻き込まれ続けて孤独死するのがオチじゃないか」
「まーたオヌシはそういう夢のない事を言いおってからに」
「身の程をわきまえていると言ってくれ」

M・Kの方を見やれば彼は相変わらずゆったりと微笑んでいる。彼からすれば、特にこちらを急かす理由もないと言えばそうなのだが……

「ま、よかろ。こうしてメキシコに戻ってきたという事はまだまだ先は長いというこっちゃ」

思ったよりJ・Qはあっさり引き下がると、シャンティカの方へ何事かささやいて他のパルプスリンガーの作品を冷やかしに戻っていく。

「まるで話が進まんな……」
「ハハハ、良いじゃないかそんな焦らなくても」
「確かに夜まではまだ時間はあるがなぁ」

どうにも謎の圧力を感じる。だがしかして、俺はブッダのごり押しにも屈しない男だ。そして当座の目的は依然として虚実入り混じる事態の解決にあると言える。

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -8-:終わり:その-9-へ続く

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