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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -12- #ppslgr

「M・K!量子干渉波の観測は!?」
「こうごたごたしてると、とてもじゃないがノイズが多すぎて観測できないね!」

「敵もアホではないな、やはり!」

端的に言って、手掛かりを探しに来る奴を潰すなら、竜種をぶつけるのは最適解の一つだろう。現代の生物において竜狩りを成し遂げられる存在は限られている。ソウルアバターを活用するにしても、並みの機体では歯がたたない。世界線にも寄るが、ドラゴンとはそれほどまでに強大な存在だ。

星明りを掻き消す燐光をまとって夜空を荒れ狂う赤竜はそのアギトに橙の火をたぎらせる。ヤツは旋回したかと思えば幾何学形状都市の大通り、つまり俺達がいる真っただ中へと首をもたげた。

「チイッ!」

破滅の予兆を直感すると、決定的な一撃がもたらされるよりも早く大太刀の柄に手をかけて一閃。渾身の斬撃が放たれた溶岩流めいた吐息と衝突する。重ねて放った二撃目の一薙ぎが交差斬撃の軌跡を描き、ブレスを完全に空中で押しとどめて相殺した。

人間など一瞬で蒸発させうる花火がもたらす、吹き荒れる熱波の余波に耐えながら後ろの二人を振り返る。

「シャンティカ!M・Kから離れるな!」
「離れるなって、アナタはどうするのよ!?」
「ハッハ、蒸発したほうがお前には都合がいいんじゃないか!」
「なっ……そんな事ないわよ!」

ハンドサインで、彼女を頼むとM・Kに伝えて熱い大路を駆けだす。

「頼んだよ!僕は荒事苦手だから!」
「任された!」

街の表にはもはや俺達以外の誰もおらず、奇妙な建物へ閉じこもっている。俺が見慣れたコンクリートジャングルとも違う低層ビルの群れは、屋上部に設置された幾つもの四角い砲塔を夜空に向けて砲火を放つ。

明かりの少ない闇夜を火線が幾重にも棚引いて、戦闘機よりも獰猛な戦闘軌道を取るドラゴンを迎撃する。だがその砲火は竜の速度にまるで追い付けておらず、牽制にすらなっていない。

「B・RかH・M、それかS・Gが居てくれたら良かったんだがな……無いものねだりしても状況は変わらんか」

肉弾戦派のパルプスリンガーなら、他にも充分竜種に対抗できる者がいるがさりとて深夜に叩き起こしてここまで来てもらう訳にもいかない。大体そんな事やっている時間でこの街は更地になりうる。

ニンジャめいて建築物群の壁を垂直に駆けあがって屋上まで到達すると、竜の次なる振舞が見える。

火竜は魚を狩る海鳥めいた急降下軌道で幾何学建築物に襲い掛かると、対空射撃を物ともせずにその巨体がもたらす破壊力で粉砕する。何人か転がり出てくるブリキ耐熱服には目もくれず、竜はそのアギトでもって建物を喰らい始めた。

「まるでハチミツを食べるクマだな」

もっともそのスケールは段違いのサイズであり、例えドワーフ似の連中が捕食対象でないにしても、降ってわいたその振舞だけで容易く殺戮が生じる。

「やはり斬る他ないか、恨んでくれるなよ!」

一心不乱に街を喰らう赤竜に向け、柄に手をかけたまま幾何学形状建築物の屋上をパルクールで飛びわたる!

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -12-:終わり:その-13-へ続く

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