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人類滅亡未遂を振り返る。

 もうすっかりそんな面影もないが、過去に一回この世界の人類は滅びかけた。多次元世界には、いくらでも人類が発生しては、滅んだ時線があるとも言われているので特段珍しいことではない……らしい。そんな高度な科学話は、俺にはよくわからんが。
「もう皆忘れちまった、みたいな顔してるよなぁ」
 俺は自機のコクピットの中で独りごちる。あの時運良く生き残った俺も、年齢だけならまあ立派な大人になった。年齢だけなら。
 突然の襲撃に、本当に一切、何も抵抗できなかった人類。幸いな事にぽっと出の怪物が主に一人で、危機をなんとかしてしまったので、滅びずに済んだに過ぎない。たまたま、あの正真正銘ぶっ飛んだ、とんでもスペックの男が、姿を見せた所に俺も居た。
「ありゃ本当にヤバかったぜ……語彙力が吹き飛ぶってのはアレの事言うんだな」
 そんなこんなで生き残りがビビって、襲撃者に見つからないよう引きこもってる間に、アイツがぜーんぶ掃除してしまったというオチである。
 じゃあ、今後もその化け物になんとかしてもらえば、というのは通らなかった。
『今後は自分たちで何とかしろ。二度目はない』
 という突き放した一言と、ソイツが持ってた技術を供与してくれた結果、俺は今もこうして生きてるし、機動兵器にも乗れてるって話だ。
「カナメは、滅後の事何か覚えてるかー?」
「僕が生まれて、物心ついた頃にはほぼほぼ復興が進んでたので、あんまり印象に残ってないんですよね。機神が暴れてる映像資料とか、冗談みたいな映画の様に見えて、現実感ないですし。アレだったら往時の映画の方が、まだリアリティーありますよ。馬鹿げてます」
「だよなぁ」
 コクピットのマイクを通して、俺お付きのエンジニアに当時の印象を聞いてみる。が、ふんわりした感想しか帰ってこない。アイツの年齢からすれば当然といえば当然なんだが。
「一度惨劇の痕でも一緒に見に行くかー」
「残ってるんですっけ」
「大部分は、滅後にアイツが自然環境を修復したおかげで残ってないが、元々荒野だったとことかは史跡として残ってる。すんごいぜ、辺り一面が月の地表みたいになってやがる」
「なんだかもう別次元の火力ですよね、逆算すると地球圏で戦ってた頃は、相当加減してたはずなんですけど」
「全くどうかしてるぜ、本当に」
 あの怪物は、今はもう居ない。残っているのは、破壊の痕跡と、技術として残したこのソウルアバターだけだ。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

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