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イドラデモン・アニヒレイト -58- #ppslgr

「はいはーい、約束通りお持ちしましたよー」

ひりついた感じのバー店内に、のんびりとした声が伝わる。O・Mだ。
彼女は腕にコーヒーを淹れるための器具一式を入れた、手提げ袋をぶら下げながらいつもの調子で入店してきた。

「んん?どうしたのR・Vさん。何だかいつにも増して不機嫌そうだけど」
「ボットが消えれど、世にスパマーの種は尽きまじ……ってやつだな」
「あー、手動スパマーの方はまだまだ居ますよねぇ」

昼間っから、CORONAの空き瓶が並んでいるテーブル。そこから俺達が瓶を退けると、彼女は手際よくコーヒーを淹れ始める。紅茶、コーヒーにこだわりがあるパルプスリンガー達は、その様子をお手並み拝見、といった様子で観察していた。

「なんだかすっごく見られてますけど、他の皆さんも気になるんでしょうか」
「飲み物系にこだわりがあるパルプスリンガーは、多い。わざわざやってきて淹れる位の相手だから気になるんだろう」

現に紅茶狂の、慇懃な執事っぽいS・Cは間近に寄って使用している器具やらコーヒーミルやらを細かく観察していた。一方、カフェのマスターめいてるT・Aは普段交流しない相手ということもあってか、カウンター内からつぶさにこちらを伺っている。

「実に興味深い……コーヒー豆はどちらで?」
「いつものお店から、生豆を買って自分で焙煎してますー」
「自家焙煎!こだわりがあるのがわかります」
「今日は多めに持ってきましたし、一緒にいかがですか?」
「お言葉に甘えまして、ご相伴にあずかりましょう」

話した事がない相手が増えて硬直してる真姫を他所に、コーヒーカップを受け取る。俺とJ・Q、真姫の分はミルクたっぷりにメープルシロップを入れたホワイト・ブラウンのコーヒー。O・MとS・Cの方はもちろんブラックだ。

「あれ、私も?」
「はい、いらなかったかしら?」
「あ、いいえ、いただきます」

おずおずと手を伸ばす真姫。自分もコーヒーをすすると、ミルクとメイプルシロップの香ばしい香りに、程よくコーヒーの苦味が混ざった味わいが喉に染み渡る。

「うん、美味い!もう一杯頼む!」
「はいはーい」
「美味しい……」
「奥行きのある、複雑な味わいですね。煎りが深いと苦さが勝ってしまう、これは自分で焙煎しないと中々出せない味です」
「へへー、お褒めに預かり光栄です!」

コーヒー片手にわいのわいの盛り上がる一同。そんな中、真姫だけうつむいた様子でコーヒーに視線を落としていた。俺の視線の端に、一瞬入り口の向こうに見覚えのある老婆が写った様な、そんな気がしたが店内にまで踏み入ってくることは無かった。

「どうかしたか?」
「あ、大丈夫……こういうの、初めてだったから」
「そうか。ま、こういう血の通った交流こそが、本当は大事なんじゃないかと俺は思うよ」
「そうそう!ちゃんと相手の事を考えて、顔を見て交流しないとね!」
「カッカ、ワシもここにやってきて、大事な楽しみの一つがコレじゃからの」
「……うん、そうする。私に足りなかったのは、これなんだってようやくわかった」

Noteの一日、そこには悲喜こもごもが入り混じっているが、バー・メキシコには、確かにフェイストゥフェイスの交流があるのであった。

【イドラデモン・アニヒレイト -58-:終わり】

次回予告

第二回小説大賞にて栄光を勝ち取ったバティ・ザ・セカンドチャンプ。
だが、その賞の重みは重圧となり、返って筆の進みを押し止める事となってしまった。苦悩する若者は、書けない現状をなんとか打破すべく、パルプスリンガー随一の執筆狂、凶鳥レイヴンに相談するのだが……
一方で、Note施設内でもクリエイターが、脈絡なく行方不明になる事件も進行していた。こいつはまた一騒動あるに違いない!

次回パルプスリンガーズ、『魂の灯』!ご期待ください!

作者注記

本作はNoteに投稿しているパルプスリンガーをモチーフに小説を書く、という企画の14作目だ。参加者は27人?いるので後13本だ、ガンバレ俺。

と言う訳で今回の主役はこちらの方。

ジョン久作さんです。わおわお!実力派パルプスリンガーの登場だ!

彼のキャラクターは割と早い段階から固まっていて、妖怪狩人ハーンや、彼の著作からマジックアイテムを拾ったり、見た目はガスコイン神父の要素を取り入れつつバランスを取った感じのデビルハンターとして位置づけた形です。一部では口調がカワイイと好評でした。

機体となる『アステリオス』は、迷宮が舞台となるので必然的に迷宮絡みのネーミングとしてミノタウロスの本名とされているワードから引っ張ってきました。機体形状もドワーフをモチーフにしたようなずんぐりがっしり型で、シンプルにパワフルな機体をイメージしています。

そして今回もうひとりのレギュラーは

カフェ・オオゼキのキラキラ殿下、マリナ油森=サンだ!ワオワオ!

思い切って打診してみた所、快く承諾いただけたので今回はダブルヒーローめいた回になりました。

キャラデザはご本人のキュートさを全面に押し出しつつ、やるときはやる物騒な一面も持つイメージで。棘と可愛さが両立したいい感じのキャラクターに仕上がったのではないかと思います。出てくるだけで画面が華やかになるので、今後もちょいちょいご登場いただきたいところ。

機体である『リリィ・クラウン』はキラキラした感じの~から華やかな舞踏会のドレスをモチーフに設定しました。しかし火力面は物騒極まりないのは、お読みいただいた方には既にご承知いただけてるものかと存じます。

という訳で、ご両名ご参加本当にありがとうございました。

一話はこちらからどうぞ

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ファンタジーミステリー?小説も平行連載中!

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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #バトルロボットアクションノベル #毎日更新

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL