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イドラデモン・アニヒレイト -23- #ppslgr

「今ので最後?」
「周囲15メートルまで気配は感じられない。だが油断は禁物だ」

「やれやれ、パチモンの樹海に見えん怪物とはの。趣味が悪いっちゅうやっちゃ」

あたりは豊洲の競り市で廃棄されたタコ残骸のような有様な上に、奇怪タコの体液はまるでよどみ濃縮された汚泥の様な器官を揺さぶる感覚を与えてくる。死して濁った緑眼は、生き残ったこちらを妬むかの如く見つめる、そんな錯覚さえ感じるのだった。

「しっかし、この山林を見えん怪物相手に進むのは少々消耗するの」
「それなら、私がなんとかしましょう!」

自信たっぷりにどんと胸をたたいたO・Mは、お静かに、のジェスチャーを見せると立てた人差し指の先を起点にして、細く長い光輪を生成。出力された光の輪は輪ゴムが伸びるように延長していくと、俺達三人を中心に平行に並んでは、惑星の輪のように滞空し始めた。

「これは、センサーか?」
「そのとーり!例えはっきり見えなくても、動く物がレーザーを遮ったら光が分散して検知できるんです!」
「そいつは頼りになるのう」

異臭漂うこの場にとどまる理由もない。改めて俺が前に、J・Qがしんがりにつくと即応体勢を保ったままに偽りの森を進む。一見樹海の様に見えて、まるで迷路のように通路が縦横無尽に張り巡らされた様は、やはり天然自然の地形とは似て非なるモノだ。紙へマッピングを行っていたJ・Qがため息を漏らす。

「ううむ……こりゃどう見ても天然の森とは似ても似つかん、今更っちゃー今更じゃが。さりとて人工林の様に理路整然と整備されてる訳でもなし。とどのつまり、迷宮のそれよ」
「だよな。今の所は木が歩き回ってかく乱してるって事もないが」
「こちらセンサー係、異常無しでーす。木があるくダンジョンもあるの?」
「ある」
「世界ってひろ~い、あんまり見てみたいとは思わないけど!」

途切れ途切れに、曲がりくねる山間の道を無機質なマネキンたちが相も変わらぬよたつき方で進行している。トラップの類は地下1階の頃と比較して全くと言っていいほど存在しないのも奇妙だ。

右、左、真っすぐ、T字路を右。ボットの流れのおかげで進む道が明確なのはいいが、変化に乏しい虚構の森の景色は油断すると方向性を見失いかねない。そうして森の中を延々歩き続けた先に、不意に開けた場所が目に入る。

「村、か」
「白々しいのう、まったくもって」

木々が開けた景色の中には、V字型の緩やかな谷間に点々と古めかしい和風の民家が点在している。Vの底にあたる部分が中央の大通りで、そこから枝葉の道が伸びて各家に接続している構造だ。ボットは村の終わり、木々の隙間から現れ出でて、中央の通りをまっすぐ縦断している。

「どうする?無視する?」
「いや、1階が自我漂白者の徘徊コースだったんだ。だとすると必然的にここに居るのは」
「搾取する側っちゅーこったな。黙って通してくれるとも思えんが、ちっとばっかし様子を探るのがええじゃろ」
「了解でーす」

【イドラデモン・アニヒレイト -23-:終わり:その-24-に続く

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