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イドラデモン・アニヒレイト -24- #ppslgr

谷合にぽつぽつと点在する古民家は、いずれも造りその物はかなり贅沢な造りである事が見て取れた。建造物に学のない俺でも感じ取れる程であれば、D・Aあたりならさぞかし喜ぶだろう。あるいは、虚構故の造りのつたなさに気付いてしまい、憤慨するか。

中でも、一際に贅をこらした邸宅に目星を付けてその玄関前まで進んでいく。この一帯は某国民的アニメ映画の様な、美しい里山の風景その物で、田園に注ぐ水路には透き通った甘露が絶え間なく流れていた。畑には見た目だけなら見事なトマト、キュウリ、トウモロコシといった野菜も鈴なりになっている。

「なんとも美しいと言えば美しいが、裏にある物を知っていると余計におぞましいというか、なんというか」
「こーいうのは美しすぎてわざとらしいっちゅうんじゃ。本物はもっと奥ゆかしくて、そこがええのよ」
「確かに、ね。所で私が行こうと思うんだけど」

いよいよ目の前に近づいてきた邸宅の玄関を前にし、誰が誘いをかけるかO・Mから提案が出る。視線を見合わせる俺とJ・Q。

「トップは彼女、サイドは俺達。危なくなったら即迎撃で」
「じゃな。いかんせんワシらは、これじゃ」

腕を広げて、自分の恰好を見下ろすJ・Qの仕草に俺も苦笑する。揃ってまあ中々個性的なファッションだ。

俺の服装はワイシャツを除いて黒ずくめな上にアチコチに武器が積まれており、何処にいても立派な不審者である。例え戦場に居てもこんなずれたファッションのヤツは居ないだろう。かたやJ・Qの方は古式ゆかしいインバネスコートにつば広帽、腰のベルトにはこれ見よがしに手斧がさがっており、これはこれで全くもって悪目立ちする事この上ない。

バー・メキシコではどちらかというとこれでも地味な二人だが、そこはそれ、外では違和感バリバリの異物である事に変わりはない。そんな俺達に向かってO・Mはウインクして見せる。彼女のファッションは何処でも目を引くカワイイっぷりだ。まっくろくろすけのこちらとは比べるべくもない。

「任せて、これでもコミュニケーションには自信があるの」
「そこは全く疑う余地がないな」
「うんむ、ワシらは臨戦態勢になってた方が適任じゃろう」

邸宅の主は玄関から遠い所に居るのか、闖入者三人の内緒話には気づく事もない。流石にあからさまに銃口を向ける訳にもいかないので、ホルスターに戻すといつでも撃てる様にグリップへ手をかける。J・Qも同様、すぐさま斧を居合めいて抜ける構えだ。O・Mが玄関のガラス戸、その右側にあるベルを鳴らす。

「ごめんくださーい」
「はい、はい、ただいままいります」

老年に差し掛かった女性の品のいい声、軽い体重の急ぎ足の音が廊下の板張りを叩く音がわずかに聞こえ、近づいてくる。

がらりとガラス戸を開けて顔を出したのは、上品に老いた風情を見せる和服の老婦人だった。場所が違えば、気を緩めさえしただろう。だがここは一瞬たりとて気が抜けない幻惑の底なのだ。

【イドラデモン・アニヒレイト -24-:終わり:その-25-に続く

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