見出し画像

夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -13- #ppslgr

まず、第一にあの火竜は竜としては『弱い』。
存在するだけであたりを死の大地に変えるほどの影響力を持つ訳でもないし、超自然の異能を持つ様子もない。

そして、一度自身の吐息を防がれたにも関わらず、意に介する事もなく捕食活動を優先している事から知能も低めだ。

つまり、あの竜にはつけ入る隙がある。人間が潜り込めばあっさり潰されてしまいそうな間隙だが、隙は隙だ。

ほのかに黒橙に光る幾何学的建築ビルの林を、飛びわたりながら火竜へと迫る。その装甲鱗には傷ひとつなく、元の世界であれば傷つけられる存在などいなかった事が用意に想像できた。

ビルの建築材をむさぼり食らう竜の背後のビルへと跳躍すれば、相手の構造を見極める。四足歩行、翼は二枚、首と尾は鞭のように長くお先には剣のようにトゲまである。

では、如何様に斬るか。幾つかのパターンから、俺は確実にこの竜を屠る為のルートを選択する。逃がさず、態勢も立て直す暇も与えず確実に斬る。

「ウッ、オオオオオオオオッ!」

飛び降り自殺めいた、迷いのない跳躍で持って竜の背めがけ強襲する。建物ひとつを覆ってなお余る広大な翼、その根元を行き過ぎる瞬間に居合いを振り抜く。

斬れたか否かなどは、確認することもなく大地に強かに着地すれば、火竜がリアクション取るよりもなお速く踏み込む。狙うは火竜の左後ろ足。

一歩、大地を踏み砕かんばかりに前へ。二歩、眼前に迫った、鉄塔の基部よりなお堅固な足首へ大太刀を振りかざす。三歩目、大地を踏みしめた衝撃で全身を慣性が駆け巡り、握りしめた大太刀に伝達。龍の強固な足首を、横一文字に振るった大太刀がトーフを切裂くくらい容易く両断した。

次の瞬間、黒さの勝る熱い血が竜の切断面から噴き出す共に火竜の困惑と憤激の咆哮が都市を揺さぶる。その時には既に俺は、別のビルを挟んで竜の怒号、その衝撃から身を守っていた。

「まずは良し……だが余り猶予はないな」

離脱手段を奪い、加えて態勢を崩しておいてなお竜の危険性は余りある。現に怒りのままに振るわれる尾先ですら、幾何学形状建築物群を草刈りの様な容易さで両断していく。

「M・K!そっちはどうだ!」
「ご心配なく!」

はっきりと宣言し返す彼だが、怒りに燃える竜はその口腔に灼熱を溜め込むと、太陽から噴き出すコロナの様に噴出した……様に、一瞬見えた。

だがまっすぐ突き進んでM・Kとシャンティカを焼き払うと見えた獄炎は途中で忽然と消失する。まるで狐にでも化かされたようだが、巻き込まれた大地には煤が残り、建物は軽く溶解していることからブレスが吐かれたこと自体は事実だ。

「ひゅーっ、おっかないね。君の吐息は今頃、生命の居ない世界を焼いている所さ」

肩をすくめおどけて見せるM・Kの横で、決意のこもった眼差しでシャンティカが弓を引き絞っては三本まとめて矢を打ち放つ。矢じりに蒼穹の輝きがこもった射撃は、竜の口腔にあやまたず着弾した途端に絶対零度の氷塊に変じた。

アギトを氷塊で塞がれるという屈辱に、火竜はままならぬ三肢を駆使して二人に迫る!

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -13-:終わり:その-14-へ続く

第一話はこちらからどうぞ

まとめマガジンはこちらからどうぞ

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の二回更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #スーパーロボット #毎日更新

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL