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Noteの日常 アイスの悲劇編

「私の……アイスが……」
 買ったばかりの高いたかーいプレミアムジェラート。イチゴをふんだんに使った真っ赤なジェラートは、味わおうとした瞬間にバランスが崩れて、アスファルトにべしゃりと無惨な亡骸を晒した。
 私の、お気に入りの、紅と黒猫の着物に付かなかった事だけが、幸いだったかもしれない。
「もう一個買ってやるよ、高いけど」
「ありがとう……でもそういうことじゃないの」
「いらないのか?」
「買って」
 ちょっとズレた気遣いをしてくれる彼に、ついやるせない感情をぶつけてしまう。
「あのね、新しいアイスを買ってもらっても、今落としたアイスはもう帰って来ないの……」
 赤い赤いアイスは、もう目ざといアリさんが万遍なく味わって、巣穴にも持ち運んでいた。
「新しいの味わえば良いじゃん?」
「そうだけど、そうじゃないの。だって落とさなければ、もう一つ買ってくれた分と合わせて二つ食べられたかもしれないじゃない?」
「太るぞ」
「わーたーしーはふーとーりーまーせーんー!」
 まったくデリカシーがないんだから。好きだけど。
「わかった、わかった。つまり言い出せなかったけど二つ食べたかった、そういう事だな?」
「ちーがーいーまーすーっ!」
「じゃ、いらないのか?」
「……要ります。イチゴとバニラを一つずつ」
「あい、あい」
 私の彼は、ほんっとうにデリカシーが、ない。そんな気持ちも、ちゃんとバニラを舐め始めたら吹き飛んでしまった。我ながら、実にチョロいのである。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #毎日投稿 #空想日常 #掌小説

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