友の喜びは俺の喜び

 瞳が入る。武骨な装甲服の頭部カメラ部にハイライトを入れたのは、バラクラバというテロリストが良く使う目出し帽をかぶり、アーミーファッションに身を包んだ青年だ。目出し帽からわずかに覗く眼は真剣その物で、ハイライトが入った後も油断せず丸テーブルの上の食器乾燥機を流用した乾燥台の中に塗装を行っていたフィギュアをセットする。
「……ふぅ~……これで最後だ」
 透明な蓋を閉じられた乾燥台の中には種々多様大小様々なミニチュアが仕上がる時を待ちつつ眠っている。彼が神経を研ぎ澄ませて塗装作業を行っていた間も、西部劇風を装ったバー店内で来店客達が飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを繰り広げていた。そんな彼に、コートを初めとして着る物の悉くが黒尽くしに黒髪黒瞳の、衣服のそこかしこに武器を括り付けた胡乱な男が歩み寄っては乾燥台の中を覗き込む。
「相変わらず見事なもんだ」
「まだまだだって、それにやり方さえ覚えれば誰でも出来る」
「どーかな、どうも俺はこの手の細かい作業は苦手だ。根が大雑把なせいだろう」
 模型一つとっても塗りムラまみれだ、と肩をすくめる黒い男。そこに、ウエスタンドアを勢いよく開け放って、黄昏色のブディスト・ローブをまとった如何にも僧侶といった趣きの男性が神速でもって踏み込んでくる。パルプスリンガー、S・Gだ。
「皆!B・R!メデタイ知らせだよ!」
「えっ、ナニ?俺またなんかセプク物の失態やらかした?」
「B・Rはたまには切腹から離れたらどうなんじゃ?」
 別のテーブルでCORONAビールを呷っていた、これまた黒のインバネスコートにツバ広帽をかぶったアゴヒゲ持ちの壮年闇医者の男が「治療ナノマシンも無限じゃないんじゃぞい」と突っ込みを入れつつ、それで、とS・Gに続きを促す。続きを促されて彼が取り出したのは自身のスマホ、その画面表示だ。
「B・Rの作品がNoteの公式小説オススメマガジンに載ったんだよ!」
「まことか!?」
「ホントだ、確かにマガジンに収録されている」
「……イヤッタアアアアアア!!ひとが無惨に死ぬパルプばっかだったから諦めてたけどやったぜ!」
「やり遂げたな!おめでとうB・R!しかしちゃんとオススメされた作品読んでたんだな、中の人」
「そんなに動きがないの?」
「ああ、なんたって前のピックアップなんざ一か月前に一作だけだからな。育児マガジンとかは頻繫に取り上げられてるのに、小説マガジンたるや閑古鳥もいい所だ。だがまあ、それだけに動きを見せたのはB・Rのパルプテキストカラテぢからが認められたと言っていいだろう」
「何にせよとにかくめでてぇな!乾杯だ!」
 その場に居合わせた作業服の男性に、モノアイ覆面のプロレスラー、艶やかな黒のロングヘアーに白衣の女性、執事然とした服装の青年に、あれよあれよと来店客がぞろぞろその手にCORONAの瓶を掲げて集まってくる。なにがしかメデタイ事があればとにかく酒の肴にするのがここ、バー・メキシコの連中だった。
 盛り上がりを聞きつければ、芋煮を持ってくる人物、ここぞとばかりに自慢のカレーを振舞うパルプスリンガーに、ポストめいた紅いジャケットをまとった人物やら、白衣に三つ編み丸メガネの中性的人物、灰銀の短髪にグレーのスーツをまとった青年、それからラクーンめいた髪色のミリカジュ服の男性などなど、その場に居た者達はこぞって自慢の一品を取り出し始める。
「じゃあ僕はとっておきの仙禽を開けるよ!」
「なら俺はちょうど時期が来た秘蔵のどぶろくを出そう。こいつは発酵が進んでいないから酸味がなくてまろやかでうまいぞ」
「では私はこんな時の為に持ってきていた赤を」
「皆、みんなありがとう!よっし今日は俺のおごりだ!!!皆バンバン呑んでくれ!」
 B・Rの宣言に、吞兵衛揃いのパルプスリンガー達は一斉に歓声を上げて思い思いの酒を開け始め、順繰りになってまずはB・Rの杯に祝杯をそそぐ。
『メデタイこの日に、カンパイ!』
 なお、当然の事ながら翌日バーから払いだされた請求書を見てB・Rが青くなったのはもはや言うまでもない。
「おおう……しんでおわびを……」
「俺が一部建て替えるから自作の続きを書こう!な!」

という訳で、めでたくNote公式小説マガジンに収録されたのは以下の作品だ!リード!ナウ!

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の二回更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#毎日投稿 #空想日常 #掌小説 #パルプスリンガーズ

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL