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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -37- #ppslgr

スクリューめいて高速回転を始めたタコつぼ古代兵器は、見る間にその身を竜巻と変えて大地に蓄積していた危険極まりない汚泥を空中へと巻き上げていく。

「どうかしてるな、コイツを作ったヤツは!」

その一見奇妙な行為が何を意味するか察知すれば、俺はイクサを介して渓谷に散開するバルダン兵各部隊を覆う様に光波障壁をドーム状展開。各員の保護を行う。

「ドゥマ殿!兵達に一歩も其処から出ないように指示してくれ!」
「委細承知!各員、密集隊形を取り今張られた結界の内にとどまるのだ!」
『了解!』

間一髪こちらの対策と連携が間に合ったか、赤錆の淀んだ色からどす黒い廃棄物に変わった雨は、光波障壁に衝突しては異臭を伴う煙を上げていく。

それどころか、この地帯一体に降り続いていた雨は視界の届く限り全て黒い汚泥の雨へと変わり果てて紅い大地を黒く塗りつぶしていく。これでは陸海空全て汚染されつくすのは時間の問題だろう。そりゃ監視付きで封印もされようという物だ。

バルダン兵達も諦めずに障壁の内より攻撃を続けるが、汚れたラセンと化した古代兵器にはその巻き上げた汚泥に銃撃が阻まれ思うようなダメージを与えられていない。

「M・K!ヤツにこの形態を長時間続けさせるのは不味い!」
「ああ、わかってる。でも焦らないで、一瞬だけならあの竜巻は消す事が出来る。タイミングを見計らって合図するよ」
「了解!」

黒い雨がイクサの見えざる慣性制御装甲に弾かれては宙に四散する中、大太刀を青眼に構える。出力の大部分を友軍の保護に回している以上、物理的に切り裂くのが現状で出来る最善策だ。

「待たれよ」

俺の次の一手を見抜いたドゥマが、イクサの隣へと並ぶ。彼の全身は当然の事ながら俺の制御している防壁に守られていた。

「一人よりは二人の方がより早く止められるという物」
「確かに、であれば共に」

共に頷いては、ドゥマは各部より噴射煙を伴って、こちらは推進器より蒼い粒子を放って天地を結ぶ黒いラセンの柱へと疾駆する。黒い嵐の中、赤と蒼の軌跡がねじれた線を描いては脅威へと迫る。

「今だ!」

M・Kの声と共に一瞬にして黒い竜巻の柱が忽然と消失し、滑稽なほど速く回転する古代兵器の姿があらわとなった。その僅かな隙を逃さず奴のくびれへと食らいつく。

「ううううおおおおおおおおおお!!!!!!」

機体の出力を引き上げ、込められた力にたわむ前腕に大太刀をしかと握りしめて高速回転する扇風部へと刃を突き立てる。不快は破断音が連続して鳴り響きながら奴の羽根が次々斬り飛ばされて宙を舞う。

「ヌウウウウウウウウ!!!!!」

俺から古代兵器を挟んで反対側では、ドゥマもまたその堅強なる戦斧を古代兵器へと渾身の力で撃ち込み回転部の羽根を粉々に粉砕していく。スクリュー部の回転数、その高さがあだとなったかM・Kの御業が解けるよりもなお早く扇風部はそのことごとくを破壊されて動きを止めた。

続いて供給が止まった事で、辺りに災禍となって降り注いだ黒い雨もまた元の錆色の淀んだ雨へと変わる。

だが、古代兵器は未だ停止せず不気味に鳴動してはさらにその姿を変えていった。

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -37-:終わり:その-38-へ続く

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