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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -38- #ppslgr

「M・K!」
「わかってる!」

敵が行動を起こすよりも速く、こちらが先に動く。
ソロモンという名の奇妙な形状の人型兵器が起こす慣性が、汚れた雨を吹き払いながらタコつぼ型古代兵器へと距離を詰めていく。

一方でダメージがかさんだ結果、全身の赤錆をひびわれさせた古代兵器は不意に真っ二つに分かれる形でその外殻を脱ぎ捨て、覆い隠されていた本来の姿をあらわにしていく。

「なんだよ、これ……」

マイクが、ガアムが思わず漏らした一言を拾う。さもありなん、解放された本体を目撃した俺も全く同様の感想を抱いていた。

解放された古代兵器に詰め込まれていたのは、人型の生物だ。それも一体二体ではなく、透明なガラス玉の水槽めいた入れ物に満員電車もかくやというほどの殺人的密度で押し込まれては爛々と赤く目を光らせ、あの汚泥と同じ色艶の肌で入れ物を圧迫している。

「なるほど、そういう事か」
「どういう事よ!?」
「この古代兵器とやらは先史文明の知性体が、冬眠するための揺り籠だったんだ。汚染している様に見えたのはこいつらのために有利な環境へ作り替えるための行いだろう」

それにしたって他にやりようはなかった物か、蘇るまで殺人満員電車の中で待ち続けるなど俺からしたらいさぎよく末法を受け入れるという物だが……あるいは、もっと早く目的を達成できる腹つもりだったか。

タコつぼ改め最悪の揺り籠はこの状態で未だ戦闘力を保持しているのか、その金魚鉢めいた保護殻を赤く脈打たせると、中心部に光を集約させる。

「フォローを頼む!」
「ああ、もちろんだとも」

言うが早いか、透明な揺り籠は赤錆の殻をかぶっていた頃とは比較にならない赤色の輝きを中央に束ねるとその直径を上回るサイズのレーザーをバルダン兵達へ放つ。だが全く同じタイミングで、ソロモンは優雅にその指先を打ち鳴らした。

「……!!!!」

既に揺り籠の先史文明生命体は知性を取り戻しているのか、身動き取れないガラス玉の中で激しくもがき脈動して見せる。彼らにとっても、目の前で起きた莫大なエネルギー量のレーザーが跡形もなく消失するというのは前代未聞の体験なのだろう。

事実として、彼らが必殺を期して放った光はソロモンの指パッチン一回でキャンセルされ虚空へと消え去ってしまった。だが奴らが動揺する隙を見逃す俺達ではない。

「総員!標的に対し全火力を集中せよ!」

ドゥマの号令と共にバルダン兵達は気勢をあげ咆哮と共に残存武装の全てを駆使して攻撃を行う。バラまかれる鉛玉、噴煙伴い殺到する円筒、大質量の砲弾、そのすべてが不気味な金魚鉢のその壁面へと突き刺さる。

「ハァッ!!!」
「オオ!!!」

ドゥマと俺の裂帛の吼え声と共に、俺達は最悪の揺り籠上部へとりつくとそれぞれの得物を振り上げる!

「悪いな!蘇るのは諦めてここで成仏しろ!」
「長きに渡る宿痾よ、引導をくれてやろう!」

両者渾身の力で振り下ろされた一撃は細かいひびに覆われていた揺り籠にねじ込まれ、さらにそのひび割れを拡大していく……!

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -38-:終わり:その-39-へ続く

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