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イドラデモン・アニヒレイト -17- #ppslgr

ビルの影から、普段俺達が見慣れた……しかして見たこともない異形の怪物がついぞ顔を出した。J・Qにとっては幸いな事にサメではなかったが、異常さでいえばこちらの方が遥かに上だろう。

そいつはのっぺりとした凹凸のない白い鳥の顔を頭部に据え、頭部の鳥の羽をまるで上衣の様にその屈強な肉体に羽織った上で下半身には一糸まとわぬぜい肉のない太い脚を披露している。各地の伝承でありがちな被り物の怪異のそれと相通ずる特徴があった。

だがコイツの不快感は見た目が問題ではない、もっと根源的な、かかわりを断ちたくなるおぞましさだ。

「いま、どうしてる?」

俺の予想通りに、目の前の白い鳥人は定型的な文言をその正面から見たイルカの様な恐怖感をあおるクチバシから吐き出す。思わず条件反射で叩き切ってしまいたくなる衝動を抑えて、大剣を青眼に構える。

「今つぶやく事など何もない」
「カッカ!コイツはまた随分とおぞましいもんじゃ!オヌシも苦手じゃったがサメ程じゃあないわい!」
「こ、こういうのもありなの?ドン引いちゃう……」

サメではないとわかった途端、J・Qは戦意を取り戻し双手に美麗に蒼紅に輝く斧を構え、O・Mはちょっと引き気味の笑顔で後衛に回った。

「こちらはあなたのフォロワーがイイネしたつぶやきです」

機械的な言い回しと共に、ぶわりと白鳥人の羽毛が立ち上がれば一斉に平面的なディテールのない小鳥の群れが飛び出て俺達の周囲を旋回する!

「その機能はいらないってしょっちゅう言ってるだろうが!」

フィクションのキャラに対するずらずらと綴られた偏愛呟きをのたまいながら殺到する小鳥を、ぶっきらぼうに振るった剣圧でもって次々と爆散させれば、高速回転空調扇風機に巻き込まれたニワトリめいて白い羽毛が舞い上がる!そこに続いて白鳥人は手品の様に羽毛の奥底から引き出した看板を両手で構え突進!

「プロモーションのつぶやき」

暴走サイ乱獲列車の如く突っ込んで来る巨体が持つ看板には、全くどの様なゲーム作品なのかわからない美少女を前面に押し出したプロモーションが描かれている。俺個人としては全く興味がそそられない宣伝突進を、寸前でもって三者三様に飛びのき回避すれば先ほどまで座っていたベンチを粉砕し公園を粉微塵に破砕していく!

「しっかしどういう因果で出てきたんじゃ、あれは?」
「今時の創作ってSNSときっても切れない関係だから、かしら」
「実際問題、時間が経つにつれて初めの小鳥からはかけ離れた怪物になっちまったもんだ」

身近なサービスの異形怪物化した存在を前に、俺達は顔を突き合わせてからそれぞれ武器を構える。一方でこちらに向き直った白鳥人は、然したるダメージを受けた様子もなく今度は頭部を二つ三つ増やしまるで多頭竜の様に呟くクチバシを増やし一斉にしっちゃかめっちゃかなキーワードを乱用!

「関東のトレンドです」
「コスモ局部サンスクリット美老婆」
「限定復刻」
「あなたとわたし、お食事券」
「娯楽規制」
「笑ってはいけないスペースオスモウ24時間」

聞いているだけで気が滅入る胡乱トレンドにめげず、目の前の多頭鳥怪人に斬ってかかる!

【イドラデモン・アニヒレイト -17-:終わり:その-18-に続く

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