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夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -44- #ppslgr

塔外縁上のラセンスロープを抜けて登り切った先は、白亜に彩られたドーム状の広場だ。塔の外観からすると矛盾した構造だが、恐らくは件の技術を応用して塔の先端と連結しているのだろう。

「R・V、あれは……」
「まだ抵抗する気概のある奴が居るって事だな」

俺達が居るのが広場の外縁部、そして反対側の別エリアへの門を遮るように中央部にまた奇妙な外観の兵器がいた。

それは軽トラによく似た胴体に無理矢理足と兵器を盛った腕を接ぎ木したようなでたらめな形状で、運転席には先ほど通路で叩き伏せた歩兵の一人が鬼気迫る表情で搭乗している事がフロントガラス越しに見て取れた。

冗談の様な形状だが、今いる広場は20m前後の機動兵器はとてもじゃないが入れられる高さはない。対して、軽トラ戦車の方は5Mほどで充分この広場内で暴れ回れるサイズだ。つまり地の利は相手にある。

「お前は……お前たちは何もわかっちゃいない」

関節部の駆動モーターを唸らせ、軽トラ戦車が身じろぎ威圧的に迫る。地獄の奥底から絞り出すような搭乗者の声。

「俺の、俺の居場所なんてあの世界にはないんだ!」
「お前の居場所など、三千世界の何処にもない。居場所ってのは自分で作るもんだからな」

即座に泣き言を斬って捨てた俺に向かって、軽トラ戦車は吼え声と共に右腕ガトリング砲と左腕ロケットランチャーをぶっ放す。仁王立ちする俺を置いて左右に散開するシャンティカとM・K。

「無視して前に進むのは!?」
「後ろから撃たせるのは危険だ!面倒だが潰して押しとおる!」

横っ飛びに跳躍しながら銃弾にも劣らない威力の矢を立て続けに放つシャンティカに対し、ガトリング銃撃掃射を大剣ヌンチャクワークで弾きながら、続くロケット弾の連射を剣のみねで明後日の方向へ叩きはじきつつも答えを返す。俺の後方で弾いたロケットが爆風を起こした。

「仕方ないけど面倒ね!」

現実世界の世知辛いしがらみとは無縁な彼女が放った矢は、軽トラ戦車の装甲部に突き立つものの中々有効なダメージを与えるに至らない。重々しく歩を進めて押しつぶさんとする敵。

「シャンティカ君!チャンスを見てこっちに来て欲しい!」
「わかったわ!」

広場円周上を駆けて合流しようとする二人をかばうべく、俺は握る大剣一振りで眼前の軽トラ戦車へと突貫する。訓練が甘いのか、的が三つに分かれてどれを狙うべきか迷う敵に、隙が生まれた。

「斬ッ!」

裂帛の気合と共に振り下ろした斬撃は紙でも裂くような手ごたえで易々と厄介な右腕ガトリング砲を斬り飛ばし、返す一太刀で軽トラ戦車の搭乗席を支える腰部を薙ぐがこちらは浅い。

「こんな、こんな強かったら苦労なんてしてないだろ!?」
「見くびってもらっちゃ困る!こっちだってそれなりに苦労して生きてるもんさ!親父には遠く及ばないしな!」

俺が飛びのくより一手早く繰り出された軽トラ戦車による蹴撃を大剣の刀身でもって受け止めると、甘んじて衝撃を受け止め後方へと飛ぶ。

度重なる俺の挑発を受けて、こちらしか目に入らない軽トラ戦車の向こうでシャンティカが新たな矢筒を受け取る。M・Kがわざわざ取り出したとっておきだ。

【夢に舞うは胡蝶、現に横たわるは蚕蛾 -44-:終わり:その-45-へ続く

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