見出し画像

The 男の夢 【ショートショート】

 幼馴染の柚子。隣に住む女子高生、理恵ちゃん。会社の同期、桃子。デキル先輩、麻里さん。優しくて巨乳の上司、珠子さん。

 家に帰れば彼女達はみんな、玄関まで出迎えてくれる。そして我先にと俺を居間に引っ張ってゆく。居間のダイニングテーブルには美味しいご飯が用意されている。

「私と理恵ちゃんと、珠子さんで作ったの。だし巻き卵どう?美味しい?」
 柚子が俺のそばに立ってニコニコと聞いてくる。
「理恵ちゃん腕上げたよね!私も頑張らないとなあ」
 桃子がおかわりのご飯を茶碗によそいながら言う。
「桃子さんの肉じゃがには敵いません」
 理恵ちゃんがにっこりと答える。
「お風呂の支度できてるよ」
 麻里さんが風呂場から居間に入ってきた。
「麻里さん。床に濡れた跡、ついてますよ」
 珠子さんが雑巾を取り出して床を拭く。麻里さんは顔を赤らめた。
「やだあ!ごめんなさい」
 女達は口々にフォローする。
「よくあることだし」「全然、大丈夫っ」
 とても和やかな雰囲気だ。俺は食事を終えると、脱衣所に向かう。
 風呂場に全裸の桃子が入ってきた。目が合うとタオルで胸を隠し、顔を赤らめる。
「今日は私の番。……会社で一緒に頑張った後、二人でお風呂って、まだ慣れない感じ」
 仕事中は見せない表情にグッときて、思わず手を伸ばす。
「あっ!やん、そこ触っちゃ……あっ……ダメえ……」


「田島ぁ!」
 ディレクターの小金井(こがねい)は声を張り上げた。田島が席に近づくと、シナリオの束を突っ返す。
「何これ。ただ女の子とイチャついてるだけじゃん。つまんね」 
 田島は反論を試みる。
「ハーレムですよ。男の夢でしょ」
「女達はみんなゾンビなんだろ?ならそーゆう描写入れろよ」
「床が濡れてるってトコですよ。ゾンビだから、彼女の体液で床が濡れたんです」
「分かるかっ!つか、いくらハーレムが男の夢でも、ゾンビゲームで美女ゾンビとひたすらイチャコラするだけとかねーわ。却下」
 すごすご席に戻っていく田島を見送り、小金井は溜息をつく。こりゃ今日も帰れねーな。ああもう、今すぐ世界が崩壊して世の中ゾンビだらけになんねぇかな。

 突然、ズズン!という地響きと同時に社内が揺れ、色んな物が床に落ちた。
「うわ!」「地震?!」
 小金井は思わず窓から外を見た。

 そして自身の”夢”が叶ったことを知った。


(完)

↑この小説はNNさんのオープン企画に参加したものです!!
1000文字以内で「ゾンビ」をテーマに何か書こう!というもので、他には特に制限はありません。
皆さんもゾンビりましょ〜!(造語)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?