82歳のおばあさんが・・・
YouTubeのCMでこんなフレーズを聞いたことはありませんか。
82歳のおばあさんが英語をペラペラ喋り出した。。。
YouTubeを利用した英会話レッスンサービスのCMで、この学校の創設者と思われる男性が、こういうのです。
私は毎回これを聞くたび、とても不愉快になります。「82歳の」と言っているなら「82歳の女性」と言えばいいでしょう。「おばあさん」という必要がありますか??年齢がわからなくて、でも高齢であることを言いたいのなら、私なら「年配の女性」、または「高齢の女性」と表現するでしょう。
他人に対して他の呼び方があるのに、何も考えずに、おばさん、おじさん、おばあさん、おじいさんと安易にいう人は他人に対する配慮がない人だなあといつも思います。もちろん、私も使うことがありますが、他の言い方ができるなら他の言い方をします。ただし、気のおけない友人同士で、「おじさん」、「おっさん」、「おばさん」、「おばはん」なんて言い合うことはよくありますが。
でも、たいていの人は、これらの呼称で呼ばれたくないと思っていますよね。そんなことには達観している人も多いし、私も若いときはともかく、今はなんと言われようとなんとも思いませんが。
ずっと以前、サザエさんのアニメを見ていたとき、ワカメちゃんが自分の母親、舟さんを他人から「おばあちゃん」と呼ばれてショックを受けるシーンがありました。おかあさんにはそんなこと言えないから、多分、サザエさんにその悩みを打ち明けていたような気がします。サザエさんとは歳の離れた妹なので、舟さんはワカメちゃんの同級生のおかあさんたちより年齢が10〜15歳くらい上だったかもしれません。
「おばあさん」は自分が言われて嫌なだけじゃなくて、周りの人たちが嫌な思いをすることだってあるんです。ワカメちゃんの気持ちがよくわかったから、このシーンは今でも覚えています。
ひとつひとつの言葉はただ意味を持つだけではなく、それを使う人の人柄や感情、考え方、経験、価値観などのニュアンスを纏っています。同じ言葉を使っても、それが優しく響く場合もあれば、いやみにしか聞こえない場合もあります。相手に対して気遣いがあるかどうかもわかります。言葉の選び方や使い方次第で、その人がどんなコミュニケーションを取ろうとしているかがわかります。
YouTubeで英語(言葉)を学ぶサービスを宣伝しているこの男性にとって言葉とは何なのでしょうか。私が感じたのは、この人は何よりもまず、「言葉は金儲けの道具」と考えているということでした。だから、「82歳の」と年齢を強調し、「おばあさん」と畳みかけたのです。
私は言葉とこんな付き合い方をしている人から外国語なんて学びたくありません。
アメリカでは比較広告はよくあるし、大統領選などになるとネガティブキャンペーンも盛んに行われます。アメリカではあれが効果があるのでしょう。でも、私は下品で嫌いです。
商品やサービスのメリットをこれでもかとゴリゴリに言い立てるCMって、日本人にはあまり受けないような気がしますが、どうでしょうか。日本のCMって商品やサービスの良さを訴求しつつも、押し付けがましさはなく、ユーモアで上手に覆っているものも多いと思います。これは、私がアメリカに行く前の1990年代までの私の印象で、最近は違うかもしれませんが。
何が言いたいかというと、
自分の中に「言葉とはどういうものか」という本質的な問いがなく、商売道具としか思っていないような人から外国語を学ぶのはお薦めできない、ということです。あくまでも個人的な見解です。
あ、これもネガティブキャンペーンですね。
らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。
らうす・こんぶのnote:
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「ことば」、「農業」、「これからの生き方」をテーマとしたカジュアルに考えを交換し合うためのプラットフォームです。
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