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新年早々、荻窪警察署刑事課へ出向く

宅配便が届くのを待っていたところへ、絶妙なタイミングで「お届けに来ましたがお留守なので持ち帰りました。再配達はここをクリック」みたいなメッセージが届いて、ついうっかりクリックしてしまったのが、正月早々運の尽きだった。

すぐにApple IDにサインインしろというメッセージが出たがパスワードが入れられない。「パスワードを忘れた場合はこちら」と言われて新しいパスワードを登録しようとすると、下2桁が「51」の電話番号を入れろという。私の電話番号の下2桁は「51」じゃないので、既に私のApple IDのアカウントが乗っ取られて、電話番号が変えられていることがわかった。

メールでは度々、誰かがあなたのApple IDを使ってアクセスしようとしているから心当たりがある場合はパスワードを変えろという警告が送られてくるが、既に乗っ取られているのでパスワードの変更なんてできない。これはすごく問題だ。フィッシングは手を変え品を変えていろんな手口で他人の個人情報を盗もうとする。普段注意していても、「ついうっかり」は誰の身にも起こりうる。なのに、「うっかりワンクリック」で何者かにIDが盗まれ、クラウドにあった自分の情報が盗まれて、しかも本人はもうクラウドにアクセスできなくなるのだ。クラウドを過信するのは考えものだと、今痛感している。

Apple IDを変更するためにアップルストアの予約をしようにも、アップルのサイトにApple IDでサインインできないからオンラインで予約もできず、後日、わざわざ新宿店に行って諸々の問題解決のための予約をすることになる。後でまた電話サポートが必要になって調べてみたら、Apple IDがなくても早く対応してもらえることがわかったが、こういう場合の連絡先ってものすごく分かりづらい。

さて、話を元に戻すと、こういう時って、あまりにパニックで一番最初に何をすべきか分からなくなる。いや、本当は、まず銀行などのパスワードを変更すべきなのだが、どこか頭の奥の方で、「私の銀行口座がハッキングされて、お金が盗まれるなんてことはない」と思っていたようだ。お金関係はたいてい2段階認証になっていて、私のスマホや他のメールアドレスにパスコードが送られるようになっているから、私のスマホが盗まれない限り、銀行やPayPalなどのアカウントに侵入されることはないだろう。

そこで、つんのめりそうになりながら、すぐ近くの交番に行ってこう言った。

私:ハッキングされましたぁ。

すると、交番勤務のお巡りさんは

交番では対処できないので、荻窪警察の刑事課に行ってください。電話しておきますから。

という。そして、さらにこう言った。

お巡りさん:ちょっと行き方面倒なんですけど、西武線で上井草駅で降りてください。近くにまいばすけっとがあるので、その前からバスに乗って荻窪警察署前で降りてください。

ええっ、そんな悠長なことしてる間に私の個人情報盗まれるやん、と思ったが、そういうこと言っても埒が明かない気がしたので、アパートにパソコンを取りに戻り、すぐに荻窪警察署に向かった。行き先は「刑事課」。これまでけっこう長いこと生きてきたけど大して悪いことしてないから、警察署、まして刑事課なんて行ったことない。ちょっと興奮。

もう午後7時を回っていたので警察署に人は少なく、入り口付近にいた人に用件を告げると、私の話を聞いてくれるはずだった刑事課のネット犯罪などの知能犯担当らしい刑事さんは留守で、あと1時間は戻らないという。他の刑事さんが話を聞いてくれることになった。その刑事さんは「私はあまり詳しくないんですが」と言いながら、私を”別室”に通した。嫌な予感。。。

まず、ことの発端となったテキストメールを刑事さんに見せて、

私:これをうっかりクリックしたらApple IDが使えなくなったんです。サイトが出てきて個人情報を入力したとか、そういうことはありません。このURLをクリックしただけです。このメッセージにある電話番号は犯人のですよね。電話したけど出ませんでした。腹が立ったから、脅してやりました。

刑事さんに「警察に通報します」と返信したメッセージを見せる。

刑事さん:こういうのは”飛ばし”って言って、不正入手した電話番号をいくつも経ているので追跡しようがないんです。このメッセージも相手は読んでないと思いますよ。

私:(まあ、そうでしょうね。そこまで馬鹿ではないでしょうね。。。)

ことの顛末を話している間にも、メールには「不審なアクセスがあったから、心当たりがなければすぐにパスワードを変更しろ」という警告が送られてくる。さらには「iphone7からアクセスがあった。心当たりがなければパスワードを変えろ」という警告も送られてきた。それらを刑事さんに見せて、

私:ほらほら。私のスマホはiphone7なんて新しい機種じゃないので、これは不正アクセスですよ。

刑事さん:この時間ごろに何かダウンロードしたりしてませんか。そういう時にこうした警告が出ることもあります。

言われてみれば、交番に行く前に仕事関係から送られてきたリンクをダウンロードしていた。じゃあ、不正アクセスじゃないのか?

私:問題はクラウドにパスワードのコピーを入れて保管していたことなんです。こうしている間にも、銀行口座のパスワードを不正に使って私の銀行口座からお金盗んだりするかもしれませんよね?

刑事さん:最近よくある手口なんですよ。こういうせこい手口で個人情報にアクセスしてくるやつは小額のお金が手に入ればいいんで、そんなに大それたことしませんよ。

私:こそ泥みたいなものですか?

刑事さん:銀行口座に不正に侵入するなんてリスクが大きいから、億単位のお金を盗むならともかく、そんな割りに合わないことしませんよ。

私:ええ〜、私の口座にだって100万くらいのお金入ってますよ。100万円って大金ですよ〜。

刑事さん:それはそうですけどね。やるんだったら億単位のお金を騙し取って国外に高飛びでしょうね。

私:(本物の刑事さんも「国外に高飛び」なんて本当に言うんだ!刑事さん、刑事ドラマ見過ぎじゃね?)私と同じような被害届出されてないんですか。

刑事さん;さあ、聞いたことないなあ。心配だったらパスワード変えるといいですよ。

私:(そんなこた、分かっとるわい)

その間、別室の外を二人の刑事さんらしい人が、チラッとこっちを見ながら通り過ぎた。

私:(今通って行った人たち、刑事ドラマでよく見る、いわゆる私服刑事?私、スーパーで万引きした主婦じゃないですよぉ。取り調べられてるわけじゃないですぅ)

刑事さん:どうしますか。書類作っときますか。

私:はい、被害届出した方がいいですよね?

刑事さん:いや、まだ被害は出てませんから、被害届は出せませんね。。。

と言うことで、わざわざ荻窪警察署刑事課まで足を運んだのに、あんまり意味なかった。荻窪警察署刑事課の社会見学に行ったような感じ。

で、帰りのバスを待っていたら、今度は、「中国本土でiphone7でゲームソフトのようなものをダウンロードした」という通知がきた。私のクラウドに不正アクセスした犯人は中国にいるらしい。これが無料のアプリじゃなかったら、私のクレジットカードが不正使用されている可能性がある。ただ、私が中国に行ったのはもう20年以上も前なので、カード会社からこの大金を請求されることはないと思うが(希望的観測)。

それ以降、私はアップルストアに行ってApple IDを新しく作り直し、iphoneを初期化してもらい、古いAppleアカウントへの不正アクセスができないようにしてもらい、電話サポートを受けながらMacBook Airを初期化してアプリを入れ直し、パスワードを新規作成した。そして、外付けHDDを買ってきてデスクトップパソコンのデータをHDDに引越しさせた。iCloudに保管していたデータはほとんどパソコン本体にも残していたので、iCloudが乗っ取られても大して困らなかったことは不幸中の幸いだった。残る作業は、デスクトップパソコンの脳内を空っぽにして(初期化して)、HDDをつないでデータを元に戻すこと。

Appleアカウントが乗っ取られてデータの復旧作業やら、パスワードの新規作成やらの膨大な作業を自分でやらなければいけないのかと思った時は目の前が真っ暗になった。わからないところはアップルの人に聞くにしても、あとは自分でやらなきゃいけないわけで。もう、ほんっと悪態つきたくなった。

でも、頼る人がいないとなると自分でなんとかするもんですね。HDDの選び方とか、写真や動画、連絡先の引越しの方法とか、ネットで調べながらなんとかやった。これまでシステムのことなんてよくわからずに使っていたけど、泣く泣く勉強しながらやったので、多少は知識も得られた。それに、大切なデータを失くしたとか、パスワードが盗まれてお金が盗られたということはなさそうで、小さな被害に遭って懲りて、これから注意深くなって大きな被害を防げるなら、いい教訓になったと言えるかもしれない。。。とても思わないとハラワタが煮え繰り返る。



らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

らうす・こんぶのnote:

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