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ある鬱病患者の手記

何年か経ってもし寛解した時に、あの時あんな思いしてたなと振り返ることができるようにこの記事を書く。

わたしはうつ病である。最初は適応障害と診断を受けていたが、なんだかうつ病にジョブチェンジしていた。うつ病が適応障害の上位互換というわけではないのだが、適応障害とうつ病は本当に似ている。自分でも変化に気づかなかった。適応障害の診断基準は、簡単に言ってしまえば「ストレス源から離れると半年以内に症状が緩和する」というものなのだが、わたしは休職しても(ストレス源は新卒で入った仕事だった)半年どころか1年以上経っても治る兆しがなく、ふと主治医に上記のことを尋ねてみたところ「今は適応障害というよりうつ病に近い」とコメントを頂いたわけだ。原因はきっと休職中の人間関係(書くと長くなるので割愛)なのだが、今はただ、他人を適応障害やうつ病に追いやれるのもある意味才能なのかもしれないと思うばかり。最近はある芸能人が適応障害で休業したり、それに反応して適応障害は怠けでも甘えでもないみたいなコメントがSNSで散見されたりするのだが、当事者からしてみれば「適応障害のうちはまだストレス源から離れることで社会に戻れるビジョンが見えていたが、これが鬱になってみると本当に迷宮入りしてしまう」というのが正直なところ。わたしは薬さえあれば普通に外も出歩けるし手帳も持っていないが、それでもつらいものはつらい。だってうつ病だもの。

現在進行形で苦しんでいる症状あれこれ

うつ病には単極型と双極型があって、後者はものすごく気分が落ち込む鬱状態と、ハイになって浪費癖が出たりいろいろ奔放になったりする躁状態を繰り返す。わたしはこちらではなく、鬱状態のみが発現する単極型のうつ病である。ここからは、リアルタイムに悩んでいる症状について書き記していく。鬱は甘えじゃないと自分に言い聞かせたいがためかもしれないし、身内に鬱の人がいる方の参考になればと思ってかもしれないが、何より数年後、過去の自分の苦しみを振り返られるように。

①特につらい出来事はないけどつらい

ネットで見かけて首がもげるほど頷くくらいあるあるの症状。健康な人は何か日常で嫌な出来事に遭遇して初めて悲しい気持ちになったり落ち込んだりするのが一般的だと思うが、鬱の人間は日がな落ち込んでいる。何も嫌な出来事なんて起こらずとも、過去のトラウマや悲しい出来事をほじくり返してつらい気持ちに浸るのだ。それはここ一年以内の出来事もあるし、古いものだと10年以上前のことも思い出す。根に持つタイプなのかもしれない。例えばこれは12年前の話なのだが、地元のいろいろな地区の中学生が集まってスポーツを競い合う体育大会があった。当時1年生だったわたしは文化部だったので応援担当であり、声を張ってそんなに強くない母校のバスケ部やテニス部なんかを応援していた。全ての日程が終わり、日が暮れて解散となった後、わたしが店でアイスを買い食いしたのがバレて大事になって、あわや部活停止というところまで追い詰めてしまったことがある。もちろん悪意などなくて、試合中ならともかく、試合が全部終わったんだから大丈夫だろうと思って買ったわけだが、そうは問屋が卸さなかった。家に帰るまでが遠足的なルールがあったのかもしれない。今思うと、「運動部でもないのに試合後にアイス食ったから部停」というのも納得できるかといえば微妙なのだが。とにかくわたしは当時30人近い先輩方や同級生の前で頭を下げさせられて、顧問に「お前はこの部活の恥晒しだ」とどやされたことをはっきりと覚えている。12歳の子供に組織の恥晒しという言葉はあまりにショッキングで、その後も誰かに怒られる気がしてしばらくアイスが食べられなくなった。20代になった今も人前でアイスを食えと言われたら躊躇ってしまうかもしれない。一人でこっそり買って食うのは大丈夫なのだが。先日、かじるバターアイスを食べながらふとそのことを思い出した。ちなみにアイスはジャイアントコーンが好きです。話を本筋に戻すと、まあそんな子供時代のトラウマから受けたいじめや仕打ちの苦しみと脳が同居していて、ふと気を抜くとその時の苦しみが襲ってくる。薬を飲めば多少はマシになるがやはり気は抜けない。

②常にピリピリして、何かに焦っている

気が張ってるのが起きてる間はずっと続いている。焦っているというのは、過ぎていく時間に対してなのか、病気に抗えない自分に対してなのか、上手くいかない現状なのか、はたまた焦るというよりイライラしているのか一言で表すのは非常に難しいのだが、とにかく気が休まらない。周囲に対して常にアンテナを張り巡らせている。気が休まらないということは、自律神経が乱れているということの表れでもあって、交感神経が優位になっている、つまり脳のアクセルがかかりっぱなしの状態なのだ。ちょっとメンタルヘルスかじっている人ならここで分かると思うが、自律神経が乱れていると体に様々な不調がやってくる。偏頭痛とか疲労感とか倦怠感とかそれはもう多岐に渡るがそんな感じだ。これを書いている今も座ってるのに動悸がすごい。ウマ娘で例えるなら、やる気が常に不調か絶不調で、オプションとして偏頭痛とか夜更かし気味とかいうデバフスキルが延々と付けられているような感じ。1ターン保健室で休めば治るような安直なものでもないのが悲しいところだ。神社に行こうが神は何も答えてくれない。ここでものを言うのはやはり向精神薬で、薬の力で強制的に脳をシャットダウンするしか交感神経を休ませる方法はない。サンキューデパス。サンキュートレドミン。

③朝は死んでいる

日内変動という言葉をご存知だろうか。うつ病は一般的に気分障害と言われていて、つまり気分に大きな不調が起こっている状態なのだが、それも時間帯によって波がある。うつ病は朝が最も不調で、昼にかけて良くなっていくケースが多いらしく、わたしもそれに漏れず朝は死んでいる。12時過ぎないとベッドから出られない。知識としては分かっていても、一般的な社会人がしっかり出勤してバリバリ働いてる時間に寝てるのもなんだか怠けてるみたいで自分が嫌になる。毎日そんな感じだから昼12時からの通院もいつもギリギリになってしまう。逆に昼間や夕方は普通の状態で過ごせる。一時期流行った「新型うつ病」「非定型うつ病」は結局なんなのか分からんが、夕方や夜が鬱状態のピークらしい。知らんけど。その「死んでいる」がどのような状態かと説明すれば、まず体が重い。あと薬が抜けきれていないのかすっごく眠い。そして疲れている。起きたばかりなのに。ここまでが体の症状。精神的な症状は人によってバラつきがあるだろうが、わたしの場合はこの世全てが憎くなる。それが昼になってシャワー浴びてると別にいいか〜となってくるから不思議だ。余談だが、休職前は6時半に起き、シャワーを浴びて支度をして満員電車に詰め込まれて出勤していた。今同じことをしろと言われたら絶対にできない。つまり、朝しっかり起きて働いている人は全員偉いのだ。

④集中力が散漫になる

鬱になってみて、一日一日が死ぬほど長く感じるようになった。体感は4時間くらいなのに、時計を見ると1時間しか経っていないというようなこともしばしば。時間を短く感じられる方法は一つで、物を作るとか、仕事に邁進するとか、とにかく何かに没頭することだ。没頭するには物凄い集中力が必要になるわけだが、これができなくなる。テレビも5分くらいしか続けて見られなくなってしまったのでほぼつけておらず、最近流行りの芸能人の話をされてもチンプンカンプンだ。ドラマやアニメも上手く内容に没入できない。前は夜のニュース番組が好きだったのだが、なんかもうここ数年コロナのことしかやらないから気が滅入る。コロナ死ね。それか早いとこコロナにかかってさっさと重症化して死にたい。でも人には絶対にうつしたくない。死ぬ時まで他人に迷惑かけたくないから……とにかく集中力がなくなると体感時間が死ぬほど長くなる。懲役30日というドラマが昔あったがあんな感じだ。5分間で30日分の労働をさせられているようなイメージ。

これはうつ病を苦しめる!当事者が考える「うつ病の人間がされたら嫌なこと」

こんな状態になってから、誰かに言われて嫌なことが増えた。逆に言われて嬉しいことはあまりない。言われた瞬間は嬉しいが、時間と共に少しずつ忘れてしまうのだ。でもだからといって、褒めてくれたり優しい言葉をくれたりするのを無駄だとやめないでほしい。そうは言ってもやはり、されて嬉しいことよりも、されて嫌なことしか今はここに書けない。逆にうつ病の人間を確実に殺したい人はこれを逆手にとって実践すべし。

①正論で殴らないでほしい

はっきりと言ってしまうが正論は凶器である。そもそも、病気の有無問わず正論でタコ殴りにされることが好きな人なんかこの世にいるのだろうか?わたしは所謂「秩序・善」という概念を極限まで凝縮して出来上がるのが正論だと思っているところがあって、正論愛好家、もとい正論で人を鬱になるまでボッコボコにするのが好きな人が一概に秩序・善なんて言われたりするからわたしは秩序・善の人間が嫌いだ。先日のアライメント診断で中立・悪と言われた身としてはそう思う。

うつ病と正論になんの関係があるの?という話だが、良かれと思って言ったとしても、正論は確実に言われた人の精神を蝕む。正論で人を傷つける「ロジハラ」なんて言葉もあるらしい。わたしの場合、うつ病そのものよりも休職していることに対して言われることが多いのだが、「休んでるんだから時間有り余ってるでしょ?」とか「ニートのくせに随分偉そうだな」とかいった具合だ。有識者に問いかけたいのだが、うつ病以外にもなんらかの病気で休職している人間はニートに定義してよいものなのだろうか?前者に関しては、確かに働いている人間に比べたら時間はある。ただその有り余っている時間の中で、わたしは上記の症状と常に脳内バトルを繰り広げているから、時間があっても暇だと思ったことはほとんどない。むしろ仕事で時間がなくてもその少ない余暇をしっかり楽しめる人の方が幸せだと思う。冗談だとしても正論はグレネードランチャーと大差ないレベルの武装だ。しかも免許も資格もいらず無知な子供でも持てるから恐ろしい。正論死ね。

②「元気そうだね」「元気になってきたね」と言わないでほしい

悪意ない人が大半だと思うから申し訳ない。こちとら元気じゃねえんだ。薬の力でなんとか周りから元気に見える状態まで持ってきてるだけなんだ。少しでも気を抜くと鬱に襲われてしまうんだ。元気とか病気とか言わず、ただ普通に接してほしい。逆に言えば、メンヘラと揶揄されることはこれの対極に位置するのかもしれない。幸いわたしは経験がないが(ないのか?)、メンヘラはともかく、わたしは幼少時より悪意と悪口の大博覧会みたいな環境で伸び伸び育ってきているから自己肯定感がマントルくらい低い。自己肯定感が低いからうつ病になるのか、うつ病の症状として自己肯定感が下がるのか、もう卵が先か鶏が先か的な議論になりそうだ。

最後の方はもう愚痴みたいになってしまった。それでもわたしなりに気をつけてることは何個かあって、それはリスカ・過食・ODはしないということと、死ぬ死ぬ詐欺をしないこと。それこそ「みんなに疎まれる典型的なかまってちゃん系メンヘラ」になってしまいそうだから。痛みは心で充分だ。傷痕が残れば今後の社会活動に支障が出る。やりたい仕事ができた時に困るかもしれない。過食は単純にお金がもったいないし太りたくないからしない。ODもたぶんしないはず……胃洗浄が苦しいらしいから……たぶん……

そんなわたし、手首がグチャグチャになるまでリスカしまくって救急搬送される女の子にもラブラブな彼氏がいるのをSNSで見てうーんとなった今日この頃。やはり若さか?若さなのか?まあ、この混沌とした世の中でただひとつ言えることは、自分を救い出せるのは自分しかいないということだけだ。頑張るぞい!また何かあれば記事にします。お目汚し失礼しました。


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