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「ア、アメリカン」

午前11時40分。サラリーマンの溢れる商店街の喫茶店に入った。一人で。

一人で喫茶店に入ることができた。待ち合わせ以外でそんなことしたことない。なぜならこれまでコーヒーを飲めなかったから。
そんな話はこちらに。

ちなみにきょう行ったのは老舗純喫茶「コーヒーサロン皇帝」。名前もいいでしょ。
家族でもたまに使ってたけど、喫煙オッケーなので数年前から子供の入店がダメになってしまった。時代やなぁ。

薄暗い店内にちょっぴりスモーキーな香り。ほのかに聞こえるクラシック。昭和の喫茶店。そうだ、マツコの知らない世界にも出てた。電話ボックスが残ってるって話だったかな。

奥の席に案内され、タイムランチの生姜焼き弁当を注文した。同時に飲み物を聞かれた。ついにきた。

「ア、アメリカン」

人生初のアメリカンコール。アメリカンコールって言い回しも初めて使った。常用語ではない。アタック25のラストコールみたいや。橋幸夫の「メキシカンロック」にも少し似ている。

店員さんは何百回と聞いてるであろうこのセリフだけど、自分にしては貴重な第一声。アナウンサーなら「初鳴き」ってやつ。どこまで箔をつけるやら。

注文した後も何だかちょっとそわそわ。食後のコーヒーを頼んでるなんて。この歳にしてなかなかのレベルアップ。そんな高揚感を知る由もなく、お店の中は普段通りまわっている。

きょうは生姜焼き弁当にした。これに食後のコーヒーがくる(しつこい)。

四角いお弁当箱がよい

あと二口くらいで食べ終わるってタイミングで、アメリカンが運ばれてきた。すばらしい。どこで見てくれていたのか。

砂糖とクリームを入れて、初めて頼んだアメリカンをゴクリ。ああ、これが食後の一杯なんだな。どんなペースで飲んでいったらいいのかまだ分からない。グビグビではないのは確かだろう。夏場ならアイスコーヒーにするんだろうな。

さて12時を過ぎて、ひっきりなしにお客さんが訪れる。でも、今はメガネを外しているのでぼやーっとしかわからん。サラリーマン、サラリーマン、ご婦人方に現場のにーちゃんたち、若い女子2人も来た。みんなコーヒー飲めるんかな。知らんわな。

12時半。コーヒーカップがあれば、どれくらいの時間のんびりしてもいいのだろう。それが分からん。コーヒー一杯で粘る客ってなるのも本意ではないし、でも全く我が道をいく感じでずーっと居座っている人もいるはず。まだ自分はそこまで場慣れしていない。ので、コーヒーも水もなくなった時点で退出しよう。スマホの充電も20パー切った。新聞や雑誌もあったけど、昼のひなかは長居するのも悪いか。

いろいろ考えながらお会計。PayPayもいけるようだけど、ここは何となく現金で払おう。純喫茶やし。何となく。

ほんのちょっとの達成感を味わいながら店を出ると、そこは平日昼間、いつもの商店街だった。

帰り道、危うく「メキシカンロック」が頭の中で流れまくるところだった。

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