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「女人訓戒士O.D」の冒険

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文豪太宰治が自身の体験から書いたと、勝手に設定した小説「女人訓戒」 文豪を半ば引退したと投げやりな彼は、今日も通いのオバチャン「竹子さん」と幸せに暮らしている 彼は今や不埒な婦女…
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#ミナレヌモノ再び

「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D

「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D

『待ちぼうけー兎の女』⑧

俺は頭だけ出るくらいの戸を開け、外を窺った

ガアガア・・ギイギイ・・

騒ぐ鳥ども

俺は透明に澄んでくる藍色の空気の中に

木という木

屋根の煤払い口にまで群がる鳥の

赤く光る目を見た

何が起きたと言うのだろう

俺が鳥を怒らせるような、何かをしたのだろうか

威嚇されている

怒りで我を忘れている臭いを放っている

山を下りて里に行けない

これではいわれな

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「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D

「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D

「待ちぼうけー兎の女」⑥

明日の朝は「ゆう」を背負って山を下りるという、大事な夜

俺はなかなか寝付かれず、うとうとと夢を見ていた

はっとして飛び起きると

周りの風景がぼんやりしていた

そこは山なのか

雪の中なのか

よくよく思い出せない

猫がいた

白い猫は赤い血の涙を流し

目が開かないので厳しい貌をしていた

兎ではなく猫の夢を見るとはな、と、うとうと思っていたら

ふっと目が覚

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「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D~

「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D~

『待ちぼうけー兎の女』③

俺は山の住人

片目の鉄砲撃ちだ

百匹目の獣を撃ってから

間もなく右の目も悪くなりだし

そろそろ土でも耕して暮らそうかと思っていた

ある日茸の出る山で、根っこにつまずいたのか、切り株に当たって首を折っ切った女が死んでいた

その傍らにはほんの小さな女の子が、あどけなく座り込んでおり、俺を見てうれしそうに両手をぱたぱたさせた

俺は拾い上げてあやしたが、なにぶん小

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