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#5 「幽霊の退治法講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第5話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

ダムス(18)ザンビア出身の留学生。中華料理店でアルバイトをしている。

桃池香里(26)モンタギュー高校の医務室の先生。

〈本編〉

T「幽霊の退治法講座」

◯モンタギュー高校・校門(朝)
学校銘板「モンタギュー高校」

◯同・廊下(朝)
良太、廊下を歩いている。
廊下には、良太のみ。
廊下の照明が不自然に点滅し始める。
立ち止まる良太、照明を警戒する。
次は、そばにあるゴミ箱がガタガタと左右に激しく揺れ始める。
良太「こ、こんなの平気さ…。僕は男だ。こんな事でビビったりしない」
背後から物音。
「ひいっ!」とビビる良太。
良太「落ち着け、これはきっと悪い夢だ。現実じゃない」
廊下の照明が消え、廊下は真っ暗に。
良太「うわあぁ! 何何何何何?」
廊下の照明がつく。
そばの壁に、沢山の血の手形。
良太「(恐怖)うわあああぁぁ!」
と、どこかへ走っていく。

◯同・教室(朝)
正範、化学の授業をしている。
黒板には、周期表が貼られている。
正範「これは元素の周期表だ。元素が原子番号順に並んでいる。原子番号が1つ大きくなるにつれて、陽子の数も1つ増える」
正範、ふと廊下のほうを見る。
廊下で、良太、正範に「こっち来て!」と合図している。
正範「(無視して)この表を考案したのは、メンデレーエフというロシアの科学者だ。彼は元素の並び方を夢の中で思いついたと言われている」
廊下で、良太、正範に必死に合図している。
生徒たちも、良太のほうを見る。
お構いなしに授業を続ける正範。
正範「でも、なぜ夢の中か? 単なる偶然か、それとも…」
廊下の良太、教室のドアをノックする。
正範「(無視して)起きている間、仕事に集中できなかった理由があったのかもしれない。例えば…」
廊下の良太、必死に合図している。
正範「同僚に仕事を邪魔されたとか」
溜息をつく正範。
正範「ちょっと失礼」
そう言って、ドアを開け、廊下の良太と話す。
良太「マサ、大変だ! ヤバイものを見てしまった! 僕の人生終わりだ!」
正範「いいから落ち着け。何を見た?」
良太「幽霊だよ」
正範「…幽霊?」
良太「おっかないでしょ? 実際に姿を見た訳じゃないけど、ゴミ箱が勝手に動いたり、壁に血の手形が現れたり…」
正範「良太、聞いてくれ。今、授業中なんだ。お前を構ってやれない」
良太「…そうだね。ゴメン。僕、パニックになって」
正範「授業が終わるまで待っててくれ」
良太「ここで待ってていい?」
正範「生徒たちが気になっちゃう」
良太「教室の中は?」
正範「もっと気になる」
良太「どうすればいい?」
正範「職員室で待っててくれ」
良太「僕一人で行くの? 途中で幽霊に遭遇したら?」
正範「丁度いい。ソイツと一緒に行け」

◯同・廊下(朝)
良太が怪奇現象を目撃した現場。
に、正範がいる。
正範「本当にここなのか?」
良太の声「幽霊いない?」
正範「いないぞ」
良太、廊下の奥の曲がり角から、ひょっこり顔を出す。
良太「壁に血の手形は?」
正範、廊下の壁を確認。
正範「何にも無い」
良太「そんなはずない」
正範のもとへ駆け寄る良太。
確かに、壁に手形はない。
良太「ホントだ。手形が消えてる」
正範「幻覚だったんじゃないか?」
良太「ハッキリこの目で見たんだ。ここに血の手形がバァーっとあるの」
正範「でも、そんなの、すぐ綺麗さっぱり消すなんて不可能だろ」
良太「幽霊なら朝飯前だよ」
正範「お前の話を信じてやりたいが、今の状況じゃ無理だ」
良太「マサは化学教師でしょ。科学の力で幽霊の謎を解き明かしてよ」
正範「科学は関係ない。もし幽霊が襲ってきたら、ブン殴ればいい話だ」
良太「そんなこと言ったって…」
正範「良太、悪いが、次も授業があるんだ」
良太「また僕一人?」
正範、「頑張れ」と、良太の肩を叩き、去っていく。

◯キャピュレット高校・校門 
学校銘板「キャピュレット高校」

◯同・理科室 
和希、カエルを飼育用ケースに入れる。
ケース内のカエルの数を数えるが
和希「あれ? 一匹いない」

◯同・職員室 
中華料理店の制服を着たダムス、入ってくる。出前配達用のリュックを背負い、チャイナハットを被っている。
ダムスに気づく祐菜。
祐菜「あ、ダムス」
ダムス「出前です」
祐菜、ダムスのもとへ来る。
ダムス、床に下ろし、リュックの中身を探る。
そこへ、和希、室内に入ってくる。
和希「お、出前が来たか」
ダムスは和希に注文品を、和希はダムスに代金を渡す。
祐菜「あ、私、財布取ってくる」
と、カバンが置いてある自分のデスクへ行く。
すると、祐菜、デスク上の「何か」を目撃し、「ぎゃあああー!」と驚き叫ぶ。
和希「どうした?」
デスクから目を逸らし、ひどく怯えている。
祐菜「カ、カエル…」
和希「カエル?」
祐菜「デスクの上にカエルがいるの!」
和希「あ、そう言えば…理科室から実験用のカエルが一匹逃げ出したんだ。きっとソイツかもな」
祐菜「なに呑気なこと言ってるの! 早く捕まえて!」
和希、「はいはい」とカエルを捕まえにデスクへ行く。
和希「ん? カエルなんていないぞ」
祐菜「もう、そんな冗談いいから」
和希、デスクの周辺も隈なく探す。
和希「本当にいないんだって」
祐菜、恐る恐る目を開ける。
和希「大きな声出すから逃げたんじゃないか」
向こうのほうで、一人取り残されているダムス。
ダムス「あの、代金、まだですか?」
そんな彼のリュックの中に、例のカエルが、ピョンと侵入。

◯モンタギュー高校・校庭 
良太、正範を校庭に連行してくる。
正範「今度は何だよ」
良太「さっき、この辺を歩いていたら、女性の不気味な笑い声が聞こえてきたんだ。きっと幽霊だよ」
正範「良太、ここには女性の先生や女子生徒がいる。多分その声だ」
良太「そんなんじゃない。この世のものとは思えないくらい悍ましい声だった」
すると、良太の肩を誰かが叩く。
良太「うわっ!」
正体はダムス。
良太「なんだ、ダムスか。驚かすなよ」
ダムス「日神先生に呼ばれて来たんですけど、どこにいるか知らないですか?」
正範「職員室にいると思うけど、その格好どうしたんだ?」
良太「中華料理屋でバイトを始めたらしい」
正範「へえ、いい帽子だな」
ダムス「実は、この帽子も販売しているんすよ」
と、リュックを下に置き、中から帽子を取り出す。
ダムス「良かったら、どうです?」
正範「…いやぁ。それを被りこなせる自信がない」
ダムス、帽子をリュックに仕舞う。
すると、中から例のカエルが飛び出す。
ダムス「(驚き)Wow!」
良太「カエル?」
正範「お前のとこの店、カエルのデリバリーもやってるのか?」
ダムス「あ、もしかしたら、キャピュレット高校のカエルかも」
日神の声「キャピュレット高校⁉︎」
日神が駆け寄って来る。
日神「いま確かに聞いたぞ、キャピュレット高校と」
ダムス「さっきキャピュレット高校へ行ったとき、聞きました。理科室から実験用のカエルが逃げ出したと」
良太「さっきのが、そのカエル?」
ダムス「なんか、連れてきちゃったみたいですね」
日神「何だと⁉︎ そのカエルはどこだ?」
ダムス、「そこです」と、指差す。
が、カエルの姿はない。
日神「いないじゃないか」
ダムス「あれ? さっき、そこに居たんですけど」
日神「まだ敷地内にいるはずだ。指名手配するぞ」
ダムス「指名手配? カエルを?」
良太「ウチは、キャピュレット高校の人間は立ち入り禁止なんだ」
ダムス「でも、カエルは人間じゃない」
日神「キャピュレット高校に縁やゆかりがあるなら、人間だろうとカエルだろうと立ち入り禁止だ。一刻も早く捕まえて、追い出す!」

◯同・職員室 
日神によるダムスへの取り調べ。
日神「その侵入犯の特徴を教えてくれ」
ダムス「えっと…体が緑色で…」
日神「(遮って)待て。どんな緑だ?」
ダムス「シュレックみたいな緑。いや、スーパーマリオのヨッシーかな?」
日神「そこんところハッキリしろ。違うカエルを捕まえたらどうする? 冤罪は避けたい」
ダムス「シュレックです」
日神「よし。他に特徴は?」
ダムス「純粋な目でした」
日神「どういうことだ?」
ダムス「目が輝いてました。オタマジャクシからカエルになれて、陸上の生活に胸を躍らせているような目でした」
日神「いいぞ、その調子だ」

◯キャピュレット高校・職員室 
祐菜と和希、向かい合わせのデスクでランチ中。
祐菜、デスクの周辺を異様に警戒している。
その様子を見つめる和希。
祐菜「どうしたの?」
和希「それは、こっちのセリフだ」
祐菜「まだ近くにカエルがいるかも」
和希「そんなにカエルが苦手なのか?」
祐菜「当然よ。いい? 女っていうのはね、みんなカエルが苦手なのよ」
和希「みんなってことはないだろ。カエルが平気な女もいるはずだ」
祐菜「そんなことないわ!」
と、席から立ち上がる。
祐菜「バイオハザードのアリス・アバーナシーとか、マッドマックスのフュリオサとか、ターミネーターのT-Xだって、きっとカエルが苦手なはず」
和希「それはあくまで君の推測だろ?」
祐菜「いいわ! なら、私が証明してあげる。女はみーんな、カエルが苦手だってこと。今に見てなさい」
と、去っていく。
和希「(祐菜に)ちなみに、T-Xは女ではない。ロボットだ」

◯モンタギュー高校・廊下 
日神、廊下の壁に指名手配のポスターを貼っている。
指名手配犯は、もちろん例のカエル。
同じポスターが壁にズラリと並んでいる。
そこへ、良太が通り掛かり、思わず立ち止まる。
良太「何やってるの?」
日神「この顔にピンと来たら、知らせてくれ」

◯同・男子トイレ 
トイレにやって来る良太。
個室トイレのドアをノックする。
正範の声「入ってます」
良太「良かった、マサ。ここにいたんだ」
正範の声「何だ?」
良太「マサ、ちょっと来て! 今度こそ絶対、幽霊だよ!」
正範の声「幽霊よりお前のほうが怖い」
良太「冗談言ってる場合じゃない」
正範の声「今度は何だ? 火の玉を見たとか?」
良太「もっとヤバイ。実際に幽霊の姿を見たんだ。女性の幽霊だ。スラーっと長い黒髪に、血しぶきが付いた白いワンピースを着て、遠くから僕のことを見つめてたんだ」

◯同・廊下 
良太と正範、人通りがない廊下にやって来る。
良太「ここだ。ここで幽霊を見たんだ」
正範「でも、変じゃないか? 学校にはたくさん人がいるのに、騒いでいるのはお前だけだ」
良太「そんなこと知らないよ」
すると、廊下の向こうから女性の呻き声聞こえる。
見つめ合う2人。
正範「俺が様子を見てくるから、お前はここにいろ」
良太「分かった」
正範が様子を見に行く。
一人残された良太、とてもソワソワしている。
良太のすぐ後ろに、ガラス付きのドアがある。
良太、そのガラスから何気なく部屋の中を見る。
その時、ガラスの向こうに女性の幽霊が現れる。
良太「うわあああああ!!!」
良太、気を失い、バタリと床に倒れる。

◯同・医務室(夕方)
ベッドの上で気絶している良太。
その様子を見る正範と香里。
香里「それにしても、この学校に幽霊なんているの?」
正範「俺は見てないから、分からない」
香里「ま、とにかく、森波先生が早く目覚めるといいわね」
正範「実はさ、良太のやつ、幽霊の声を聞いたとか、幽霊を見たとか、いちいち俺に報告してくるんだ」
香里「それだけあなたのことを頼りにしてるってことよ」
正範「どうせ目が覚めても、幽霊を怖がるのは変わりないだろ? そしたら、また俺は良太に振り回される」
香里「なるほどね」
すると、良太が目を覚まし、ベッドから起き上がる。
良太「ここ、医務室?」
正範「大丈夫か?」
良太「あ、そう言えば、幽霊は? 幽霊はどうなったの?」
正範「(早速かよ…)」
良太「僕、間近で幽霊を見たんだ。間違いなく幽霊はいるよ」
香里「きっと、夢だったんじゃない?」
良太「え、夢?」
香里「だって、幽霊って何? いきなりどうしたの?」
香里、正範にウインクする。
正範「(良太に)そうだよ! 幽霊って何の話だ?」
良太「え…どうなってるの? マサに何度も話したじゃん、幽霊のこと」
正範「おい、幽霊なんて初耳だぞ」
良太「じゃあ、なんで僕は医務室で寝てたの?」
正範「えっと、それは…」
香里「廊下の柱に頭をぶつけて気絶したのよ」
正範「そうだ」
良太「そうだっけ? それじゃあ、幽霊は全部、夢だった?」
香里「きっとそうよ」
良太「なんだ、そうだったのか。助かったぁ」
正範「そろそろ帰ろう。お前の好きなマカロニチーズを作ってやるよ」
良太「丁度お腹が減ってたんだよ」
と、ベッドから降りる。
医務室から出ていく良太と正範。
正範、その去り際に
正範「(香里に小声で)助かった」

◯キャピュレット高校・職員室(夕方)
和希、入室する。
祐菜、分厚い紙の束を抱えている。
和希「何持ってるんだ?」
祐菜「ああ、これ? アンケートよ」
和希「アンケート? 何の?」
祐菜「読んでみて」
と、和希に紙を一枚渡す。
和希「(紙を読む)質問です。あなたはカエルが苦手ですか? イエスかノーかで答えてください」
祐菜「今から、女性たちに、このアンケートを配ろうと思って。女はみんなカエルが苦手ってことを証明するために」
和希「この星に、女は38億人いるぞ」
祐菜「分かったわ。38億の女に、このアンケートを配るわ。そして全員、さっきの質問にイエスと答えるはずよ。なぜなら、女はみんなカエルが苦手だから」
和希「みんな苦手なわけないだろ。中には、カエル好きの女がいてもおかしくない。なぜ、それを認めない?」
祐菜「な、なぜって…」
だんまりする祐菜。
和希「何かあるなら、聞くぞ」
祐菜「…恥ずかしいのよ、カエルが苦手なことが」
和希「そんなの気にするなよ。何も恥ずかしいことじゃない」
祐菜「…そう?」
和希「誰にだって弱点はある」
祐菜「あなたの弱点は何?」
和希「…姉貴だ」
祐菜「お姉さんいたの?」
和希「子どもの頃、よく姉貴に乳首つねられてた」

◯モンタギュー高校・校庭(夜)
辺りは薄暗い。
日神、茂みを掻き分けて、例のカエルを探している。
日神「(独り言)ったく、あのカエルどこ行った?」

◯同・廊下(夜)
真っ暗の廊下。誰もいない。
突然、照明の明かりが薄暗く点く。
すると、女性の幽霊が現れる。
女性の幽霊、ふと足元を見る。
例のカエルが、ちょこんと座っている。
幽霊「(恐怖)キャアアアー!」
幽霊、煙のように消えていく。

#6に続く

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