見出し画像

#8 「パーティーの彩り方講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第8話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

犬養春代(50) モンタギュー高校の校長。

猿飛冬美(50) キャピュレット高校の校長。

五十嵐(40)玲香の夫。

玲香(37)

山口勉(70)教育委員長

清掃員

〈本編〉


T「パーティーの彩り方講座」

◯日神の部屋・リビング(夕方)
日神、ソファにて、ポットの紅茶をティーカップに注ぎ、一口。
テレビ画面は、ニュース番組。
アナウンサーA「続いては、双子のジャイアントパンダに関するニュースです」
日神「(呆れ)また双子パンダのニュースか。最近ずっと、こればかりだ」
テレビ画面は、双子パンダの映像に。
アナウンサーAの声「およそ3ヶ月前に誕生した双子パンダは、すくすく元気に育っているとのことです」
日神「パンダのどこが良いんだ? 黒の体毛か? 白の体毛か?」
アナウンサーAの声「なお、パンダの名前は今週末に決定される予定とのことです」
日神「だいたい、パンダのニュースに興味ある人間なんて世の中にいるのか」

◯和希の家・リビング(夕方)
ソファでテレビを見ている祐菜と和希。
祐菜「見て! 双子パンダのニュースよ!」
和希「最近ずっと、このニュースばかりだな」
祐菜「今週末に名前が決まるんだって」
和希「その話、5万回聞いた」
外から、良太と正範がやって来る。
良太「何見てるの?」
和希「双子パンダのニュース」
正範「ああ、またそのニュースか」
良太「確か、今週末にパンダの名前が決まるらしいよ」
和希「その話、5万1回目だ」
祐菜「(良太と正範に)ところでさ、今週の土曜日に、夜、パーティーへ行くんだけど、二人もどう?」
正範「パーティー?」
祐菜「教育委員長が主催するパーティーで、ウチの校長が招待されたの」
和希「そしたら校長は、俺と祐菜に、こう命令した。一緒に来いって」
祐菜「二人も来ない?」
正範「土曜の夜は、良太と映画に行く予定なんだ」
良太「悪いけど、行けそうにない」
和希「噂によると、そのパーティーで、マカロニチーズが出るらしいぞ」
良太「…ホント?」
和希「しかも、無料で食い放題」
良太「…。(正範に)映画、来週でいい?」

◯C高校・校門(日替わり)
学校銘板「キャピュレット高校」

◯同・校長室 
猿飛、黒のドレスと赤のドレスをそれぞれ見比べている。
すると、ドアのノック音。
猿飛「どうぞ」
祐菜、入室。
猿飛「水林先生、あなたに聞きたい事があるの」
祐菜「私、水林じゃなくて、水梨です」
猿飛「(気まずそうに)ああ、そう…」
祐菜「それで、聞きたい事って?」
猿飛「今夜、教育委員長のパーティーがあるでしょ? それに着ていくドレスなんだけど…黒と赤、どっちが男受けすると思う?」
祐菜「男受け、ですか?」
猿飛「私ね、今、彼氏募集中なの。今夜のパーティーで、素敵な男性をゲットしようと思うの」
祐菜「てっきり、校長はご結婚されてるのかと思ってました」
猿飛「実は、7年前に離婚したわ。ぶっちゃけ言うと、私の元夫、ほんと最低な野郎よ。私に隠れて、他の女のおっぱい揉んでたの」
祐菜「少々、ぶっちゃけ過ぎかと…」
猿飛「それで、黒と赤、どっちのドレスが良いと思う?」
祐菜「そうですね…私は赤が良いと思います」
猿飛「そう。なら、黒にするわ」

◯ホテル・宴会場(夜)
教育委員長主催のパーティー。
祐菜、良太、和希、正範、外からやって来る。
和希「可愛い女の子、探してくる」
と、どこかへ去っていく。
祐菜のもとへ、猿飛がやって来る。
猿飛「ちょっと! 来るのが遅いわ! パーティー、もう始まってるのよ!」
祐菜「パーティーって、開始時間に来ておく必要、あります?」
猿飛「これは教育委員長のパーティーなのよ。遅刻しちゃ失礼でしょ」
祐菜「そうですよね。教育委員長のパーティーですもんね」
猿飛「せめて御行儀よくしてなさいよ」
正範「(猿飛に)あの、どうも。はじめまして」
猿飛「? えっと…どちら様?」
正範「モンタギュー高校の有明正範です」
猿飛「モンタギュー高校⁉︎」
良太「同じく、モンタギュー高校の森波良太です」
猿飛「⁉︎ あなたが…森波良太?」
良太「はい、はじめまして」
猿飛「…水木先生、ちょっとコッチに来てもらっていい?」
祐菜「水木じゃなくて、水梨です」
猿飛「いいから来て!」
と、少し離れた所へ祐菜を連れていく。
猿飛「モンタギュー高校の人間を連れてきたの?」
祐菜「あの二人は友達なんです」
猿飛「特に問題なのは、あの森波良太って男よ。彼はどうなの?」
祐菜「だから、友達なんですって」
猿飛「でも彼のこと、好きなんでしょ?」
祐菜「…友達です」
猿飛「前にも言ったけど、モンタギュー高校の人間と恋愛関係になるのは禁止ですからね」
祐菜「分かってます」

◯同・同(夜)
豪華な料理が並んでいるビュッフェ。
そこを通りかかる良太と正範。
良太「マサ! マカロニチーズだ!」
と、マカロニチーズを皿に盛る。
正範「確かお前、2日前から断食してたよな」
良太、マカロニチーズを一口。
良太「う〜ん、天国の味だ」
良太の隣に、山口勉(70)。
山口「君たち、もしかして、モンタギュー高校の教師?」
良太「そうですけど…」
正範「どうして分かるんですか?」
山口「君(良太)がマカロニチーズが好きなことも分かる」
良太「あなたも教師の方ですか?」
山口「20年前までわな。今は、教育委員長をやってる」
正範「すいません、まさか教育委員長だとは…」
良太「ほんと、素敵なパーティーですね」
山口「最初は、このパーティーにピエロを呼ぶつもりだったんだが、娘に却下された。ピエロはお父さんだけで十分でしょって」

◯同・同(夜)
テーブル席に、良太と正範。
良太、大盛りのマカロニチーズを食べている。
良太「これ、いくら食べても飽きないよ」
正範「だろうな」
と、シャンパンを一口。
そこへ、和希と美月(24)、イチャイチャしながらやって来る。
和希「(良太に)美味そうなマカロニチーズだな。ウチのパンケーキちゃん(美月)には、敵わないけど」
美月「蜂蜜かけて、召し上がれ」
和希と美月、笑い合う。
正範「どうやら、女の子を見つけたみたいだな」
美月「彼(和希)、すごくホットな人ね。私まで熱くなってきちゃった」
和希「というわけで、俺たち、この辺で失礼するよ。これから二人で夜の街に繰り出すんだ」
良太「そう。楽しんで」
和希「(美月に)では、参ろうか」
美月、和希の腕を抱く。
和希「(良太と正範に)あばよ」
去っていく和希と美月。
美月「最初はどこ行く?」
和希「まずはバーに行って、シラフとは完全におさらばする」
美月「私をこれ以上、熱くしないで」

◯同・同(夜)
山口によるマジックショー。
山口、シルクハットを被っており、ステッキを手に持っている。
山口の前には、大勢の招待客たち。その中に、祐菜、良太、正範もいる。
山口「これから、私、山口勉によるマジックショーを行いたいと思います!」
招待客たち、拍手喝采を送る。
山口、シルクハットを手に持って
山口「このシルクハットには、タネも仕掛けもございません」
と、招待客たちに見せる。
山口「この上にスカーフを被せます」
と、ジャケットからスカーフを取り出し、シルクハットに被せる。
山口「そして、1、2の…3!」
と、ステッキでシルクハットに魔法をかける。
山口、スカーフをめくる。すると、シルクハットから一羽の白い鳩が羽ばたく。
山口「(ドヤ顔)イリュージョン!」
招待客たち、シーンとしている。
山口「まだまだショーはこれからですよ。あと50個ものイリュージョンをご覧に入れましょう」
祐菜「(良太と正範に)強めのお酒、調達してくる」
良太「なんで?」
祐菜「脳を麻痺させないと、残り50個も乗り切れない」
と、その場を離れる。
山口「続いてのイリュージョンは…」
祐菜、バーテンダーのもとへ来る。
祐菜「スクリュードライバーを」
そこへ、五十嵐(40)がやって来る。
五十嵐「僕もスクリュードライバーを」
祐菜を見る五十嵐。
五十嵐「(祐菜に)教育委員長の手品、正直言って、イマイチだよね」
祐菜「ええ、本当」
五十嵐「ちょっと、これ見て」
と、手に何も持ってない状態から、一輪の薔薇を出す手品を披露。
祐菜「すごい!」
五十嵐「どうぞ」
と、薔薇を渡す。
祐菜「あ、ありがとう。すごくロマンチックね」
五十嵐、ジャケットから、ホテルの部屋の鍵を出して
五十嵐「良かったら、こちらも受け取ってくれますか?」
と、祐菜に鍵を差し出す。
祐菜「…これは?」
五十嵐「今夜、僕が泊まっているホテルの部屋の鍵です」
祐菜「…私を誘ってるんですか?」
五十嵐「今夜、僕の部屋で、ロマンチックな夜を過ごしませんか?」
祐菜「…えっと…」
良太を見る祐菜。
祐菜「…」

◯同・同(夜)
猿飛、椅子に腰掛け、溜息をつく。
そこへ、祐菜がやって来る。
祐菜「校長」
猿飛、元気なく返事。
祐菜「素敵な男性は見つかりました?」
猿飛「そんな風に見える?」
祐菜「…ですよね」
猿飛「私って、ロマンチックなことやってくれる男がタイプなのよ。でも今の時代、そういう男って少ないのね」
祐菜「そんな校長に朗報です。実は、校長にピッタリな男性を見つけました!」
猿飛「え?」
祐菜「(誰かに)どうぞ」
猿飛の前に、五十嵐が現れる。
五十嵐「(猿飛に)どうも」
猿飛「?」
五十嵐、一輪の薔薇を出す手品を再び披露。
猿飛「わお!」
五十嵐、猿飛の前に跪き、薔薇を差し出す。
五十嵐「こちらの薔薇、受け取ってくれますか?」
祐菜「(猿飛に)ね! すごいロマンチック!」
猿飛「…」

◯日神の部屋・リビング(夜)
日神、ティーセットが載ったトレイを「ラララ〜」と歌いながら、テーブルに運んでくる。
そして、ソファに腰掛け
日神「さあて、今夜はどんな番組がやってるんだ?」
と、リモコンでテレビの電源を入れる。
テレビ画面は、ニュース番組。
アナウンサーB「続いては、皆様お待ちかね、双子のジャイアントパンダに関するニュースです」
日神「(呆れ)また双子パンダのニュースか? もういい加減にしろ!」
アナウンサーB「約3ヶ月前に産まれました、双子のジャイアントパンダ。本日、この二頭のパンダの名前がついに決定したとのことです。メスのパンダの名前は“リンリン”、オスのパンダの名前は“ルンルン”とのことです」
日神、リモコンでテレビのチャンネルを切り替える。
アナウンサーA「それでは、続いてのニュースです。およそ3ヶ月前に誕生した双子のジャイアントパンダの名前がリンリンとルンルンに決定しました」
日神、テレビのチャンネルを切り替える。
アナウンサーC「ここからは、双子パンダのニュースです」
日神、チャンネルを切り替える。
アナウンサーD「双子パンダの名前がリンリンとルンルンに決まりました」
日神、チャンネルを切り替える。
アナウンサーE「双子パンダの名前が…」
日神、即、テレビの電源を消し
日神「クソ!」

◯ホテル・宴会場(夜)
招待客たち、社交ダンスしている。
猿飛と五十嵐、幸せそうに踊っている。
それを、少し離れた所で見ている祐菜、良太、正範。
良太「あれ、君んとこの校長先生だよね?」
正範「一緒に踊ってる男性は誰?」
祐菜「彼ね、校長の彼氏になるかも」
犬養、猿飛のそばを通りかかる。
そして、猿飛がいることに気づく。
犬養「あら、これはこれは猿飛校長」
猿飛、五十嵐とのダンスをやめる。
犬養「あなたも教育委員長のパーティーに来てたのね」
猿飛「犬養校長、あなたこそ、いつからパーティーに来てたの」
犬養「今来たばかりよ。でも、もう帰ろうかしら。あなたの顔を見たら、なんだか吐き気がしてきた」
猿飛「自分の顔も見ない方がいいわよ。もっと吐いちゃうと思う」
祐菜「(良太と正範に)あれって、あなたたちのとこの校長先生よね? 何話してるの?」
正範「さあ…」
五十嵐「(猿飛に)えっと…こちらの方(犬養)は知り合い?」
猿飛「ええ、残念ながら」
犬養「(五十嵐に)この女と付き合うのは、やめたほうがいいわよ。泥水に顔を突っ込んでるほうがマシ」
猿飛「! この女は泥水以下」
犬養「!」
犬養、ウェイターが運んでいるシャンパンを取り、猿飛に浴びせる。
祐菜・良太・正範「!」
猿飛「…」
犬養と猿飛、取っ組み合いになる。
正範「あれはマズイな」
祐菜、良太、正範、犬養と猿飛のもとへ向かう。
犬養と猿飛、激しく取っ組み合っている。
その流れで、犬養と猿飛、ビュッフェに倒れ込み、料理がひっくり返る。
そこへ駆けつける祐菜、良太、正範。
正範「犬養校長」
祐菜「猿飛校長、大丈夫ですか?」
正範は犬養を、祐菜は猿飛を立ち上がらせる。
犬養「…今日のところは、これくらいにしといてあげる」
と、去っていく。
場が気まずい雰囲気に包まれる。
その場に、山口もいる。
山口「…さっき、ネットニュースを見て知ったんだが、双子パンダの名前はリンリンとルンルンらしい」

◯同・外(夜)
猿飛、出入口の前に立っている。
そこへ、五十嵐、中からやって来る。
五十嵐「大丈夫?」
猿飛「風に当たって、頭を冷やしてるだけ」
五十嵐「もう30分経つよ。ちょっと、冷やし過ぎじゃない?」
猿飛「さっきは、見苦しいところを見せてしまって、ごめんなさい」
五十嵐「僕は全然気にしてないよ」
猿飛「優しいのね」
猿飛と五十嵐、キスの態勢に入る。
そして、唇を近づけ合い、キスする。
そこへ、玲香(37)が現れる。
玲香「ちょっと! 何してるの!」
五十嵐「れ、玲香…何でここに?」
玲香、五十嵐にビンタする。
玲香「なかなか家に帰って来ないと思ったら、女とベロチューしてたんだ」
猿飛「(五十嵐に)こちらの方は?」
玲香「私たち、もう離婚よ。さよなら」
と、去っていく。
五十嵐「玲香」
猿飛「あなた、結婚してたの?」
五十嵐「ほんとゴメン」
玲香を追いかける五十嵐。
五十嵐「玲香、ちょっと待ってくれ」
一人取り残される猿飛。
手持ちのバッグから、一輪の薔薇を取り出す。
清掃員、猿飛のそばを通りかかる。
猿飛「ねえ、ちょっと」
と、清掃員を呼び止める。
猿飛「これ、捨てておいてくれる?」
と、薔薇を清掃員に手渡す。

#9に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?