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#3 「孤独の楽しみ方講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第3話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

沙友理(22)

店員
店長

ウェイトレス

〈本編〉

T「孤独の楽しみ方講座」

◯和希の家・リビング(夜)
和希、階段を下りて、リビングにやって来る。
祐菜、良太、正範、リビングで寛いでいる。
和希「なあ、今からショッピングモールのゲーセンに行かないか?」
良太「ゲーセン? 何で?」
和希の手にはスマートフォン。
和希「Twitterの情報によると、そのゲーセンに、めちゃくちゃ可愛い女の子が働いてるらしいぞ。名前は…“沙友理”っていうらしい」
祐菜「顔写真が載ってるの?」
和希「そこまでは載ってない。でも、よく考えてみろ。超美人なのは分かってるけど、どんな顔かは分からないんだぞ。どんな子か会いたくなるだろ?」
正範「まさか、その沙友理って子をナンパしに行くのか?」
和希「誰か一緒に行こうぜ!」
正範「パス」
祐菜「パス」
良太「パス」
和希「何だよ? 俺を一人にしないでくれよ。俺は日神じゃないんだぞ」
祐菜「…どういうこと?」
良太「日神のことは知ってるよね? 僕とマサの同僚の」
祐菜「ええ、会ったことあるわ」
良太「日神には、友達がいないんだ」
正範「みんな、なるべく関わらないようにしてる」
祐菜「そんなの酷いわ。彼を除け者扱いしてるってこと?」
和希「それをアイツは望んでいるんだ」
良太「誰かと一緒に遊ぶくらいなら、一人で過ごすほうが良いみたい」
祐菜「そういう人に限って、口ではそう言うのよ」
正範「本音は違うと?」
祐菜「そうだ! 今から彼に会いに行こうよ」
和希「もう、ほっといてやれよ」
祐菜「誰だって孤独は辛いはずよ」
正範「和希」
和希「ん?」
正範「ナンパしに行こう」
祐菜「良太は?」
良太「え?」
祐菜「一緒に会いに行きましょ。彼、今ごろ寂しい思いをしてる」

◯日神の部屋・リビング(夜)7
日神、ノリノリな曲をカラオケで歌っている。
ノリノリで歌っており、寂しさの欠片もない様子。
曲が終わり、玄関チャイムが鳴る。

◯日神の住むアパート・廊下(夜)
ドアの前に、祐菜と良太が立っている。
ドアを開ける日神。
祐菜「すごく盛り上がってたみたいね」
日神「何の用だ?」
祐菜「私たちと一緒に何処か遊びに行かない?」
日神、フリーズ。
祐菜「?」
日神「…なぜ?」
祐菜「理由なんている?」
日神「私と君は敵同士だぞ!」
祐菜「そんな堅いこと言わずに」
日神「それに、君と良太も敵同士だろ。なぜ二人で出掛けてる? 恋愛関係になるのはルール違反だぞ!」
祐菜「恋愛関係はダメでも、友達の関係までならセーフなんでしょ」
日神「二人で出掛けるのは、友達付き合いの範囲内だと言いたいのか?」
祐菜「当然よ。ねぇ、良太?」
祐菜と日神、良太にジャッジを委ねる。
板挟みの良太。
良太「…ノーコメントで」
日神「(祐菜に)とにかく、もう帰ってくれ」
祐菜「なんで?」
日神「理由なら沢山ある。理由1、君は私の敵だから。理由2、君のことが嫌いだから。理由3…」
祐菜「(遮って)分かった。もういい」

◯ショッピングモール・ゲームセンター(夜)
和希と正範、入店する。
和希「さあ、例の沙友理ちゃんは何処かな」
正範「早速ナンパするのか? 多分、勤務中だろ」
和希「少し話をするだけだよ」
と、近くにいる店員Aに近寄り
和希「すいません、ここで沙友理っていう女の子が働いてると思うんだけど、何処にいるかな?」
店員A、辺りを見渡し
店員A「そこです」 
店員Aが指差す方向に、沙友理(22)。マリオカートのアーケードゲームを掃除している。
和希「おい、マジか…」
正範「あれって確か、お前の元カノだよな」
和希「ちょっと話かけてくる」
正範「気まずくならないか?」
和希「大丈夫だよ。円満な別れだったし」
和希と正範、沙友理のもとへ行く。
和希「やあ」
沙友理「あ、どうも。何でここに?」
和希「まあ、なんていうか…」
和希「マリオカートをやりに来た」
正範「相変わらず、嘘が下手だろ?」
そこへ、店長がやって来る。
店長「沙友理、どうした?」
沙友理「いや、何でもないの」
和希「こちらは?」
沙友理「うちの店長よ」
店長「彼女の彼氏でもある」
和希「うわお、そうなんだ。実は、俺も半年ほど彼女と付き合ってたんだ。一年前に別れたけど」
店長「一年前に別れた? こっちは三年前から付き合ってるけど」
和希「ちょっと待って。(沙友理に)君は彼と付き合ってる。なのに、俺とも付き合ったってこと?」
店長「お前、二股かけてたのか?」
間。
正範「ほーら、気まずくなってきた」
沙友理「(店長に)彼とは半年後にちゃんと別れたわ」
店長「でも、その半年間は、あの人(和希)と付き合ってた訳だろ! 俺を裏切ったことに変わりない!」
沙友理「ゴメン、ほんと」
店長「…信じられない」
その場を去っていく店長。
沙友理「(和希に)あなたも怒ってるよね?」
和希「別に怒ってない。ただショックなだけ」
気まずい雰囲気。
正範「(和希に)マリオカートやる?」

◯カフェ・中(夜)
祐菜と良太、テーブル席で、向かい合って座っている。
そこへ、ウェイトレスがやって来る。
良太「アップルパイ一つ」
ウェイトレス「ご用意まで45分ほど掛かりますが、よろしいですか?」
良太「そんなに掛かるの?」
ウェイトレス「当店のアップルパイは焼き立てのをご提供しています。メニュー名が“焼き立てアップルパイ”なので」
良太「なら、注文は無しで」
ウェイトレス、去っていく。
祐菜「私さ、なんか可哀想だと思うんだよね」
良太「確かに、アップルパイ食べるのに45分待った客がいるってことだよね」
祐菜「そうじゃなくて、日神の事よ。一緒に遊ぶ人が一人もいないんでしょ?」
良太「ああ、そのことね」
祐菜「彼、絶対、孤独に感じてるわ。だから、彼と友達になるべきだと思うの」
良太「仮にそうだとしても、日神は凄くガードが堅いよ。簡単に心を開かない」
祐菜「私、こう見えても、人と仲良くなるのは得意なほうなの」
良太「じゃあ、どうやって日神と友達になるの?」
祐菜「それは…あれよ…」
良太「?」
祐菜、考え中。
良太「アップルパイ頼もうかな」

◯大通り(夜)
店が立ち並ぶ歩道を歩く日神。
カフェから出てくる祐菜と良太。
ちょうど、日神と出くわす。
日神「おいおい、嘘だろ!」
と、カフェの中を窓から覗き込む。
日神「カフェにいたのか? 二人っきりで?」
良太「まずい」
日神「二人っきりでカフェに行くなんて、完全に恋人のデートだろ!」
祐菜「そんなことないわよ。二人っきりでカフェに行く男女友達もいるわ。ねえ、良太?」
良太「…ノーコメントで」
祐菜「(日神に)そっちこそ何してるの?」
日神「用事があって出掛けてるだけだ」
祐菜「どんな用事?」
日神「教えない」
祐菜「いいじゃん、教えてよ」
日神「ダメだ」
祐菜「教えるくらい良いでしょ」
日神「ダメだ」
祐菜「なんで?」
日神「理由1、君は私の敵だから。理由2、君のことが嫌いだから、理由3…」
祐菜「(遮って)分かった、分かった」
日神「いいか、絶対に付いてくるなよ」
と、去っていく。
良太「僕たちは帰ろう」
祐菜、良太に不敵な笑みを見せる。
良太「(察して)嘘でしょ…」

◯ショッピングモール・フロアの廊下(夜)
日神、フロアの廊下を歩いている。
日神を尾行している祐菜と良太。
良太「確認のため言っておくけど、僕は反対したからね」

◯同・洋服店(夜)
日神、洋服を物色している。
その様子を、祐菜と良太、離れた所から、こっそり見ている。
二人とも、店の売り物のサングラスや帽子を身につけ、変装している。
良太「僕たち、日神を尾行しているんだよね?」
祐菜「尾行には変装が付き物かなって」
良太「これで良いのかな?」
祐菜「確かに、初心者丸出しね」
日神「(大声で)おーい! ちょっと、そこのアンタ! そうだ、アンタのことだ。アンタ、店員だろ? 試着室はどこにある?」
良太「今、試着室って言った?」
祐菜と良太の頭上に「試着室」という看板。
祐菜と良太、後ろを振り返る。
二人の背後は、試着室コーナー
良太「まずい! こっちに来るよ!」
祐菜「私たちも試着室に隠れましょ」
祐菜と良太、同じ試着室に入る。

◯同・同・試着室(夜)
祐菜と良太、狭い試着室の中で、近距離で向かい合っている。
良太「同じ試着室に入らなくても」
祐菜、「静かに!」という仕草。
隣の試着室からゴソゴソと音がしている。
見つめ合う祐菜と良太。
隣の試着室から日神の声。
日神の声「ほら見ろ! こんなの派手過ぎるだろ! これで外に出てみろ、歩くクリスマスツリーだ! やっぱり、店員のオススメは当てにならないな」

◯同・フードコート(夜)
イートスペースのテーブル席。
和希と正範、向かい合って座っている。
和希の携帯の着信音。
和希、携帯をズボンのポケットから取り出し、画面を確認。
正範「誰から?」
和希「例の元カノだ」
と、電話に出る。
和希「こちら、元二股相手です。……うん、分かった。じゃあ」
通話を切る。
和希「彼氏と別れたって。それと、ホントごめん、だって」
そこへ、日神がやって来る。
正範「日神」
日神「君たち、ここはフードコートだぞ」
正範「わざわざ教えてくれてありがとう。心配しないでくれ、そんなこと分かってる」
日神「君たちは、このフードコートから立ち去るべきだ」
正範「うん、それは分からない」
日神「いいか、ここは飲み食いするための場所だぞ。見たところ、君たちは何も飲み食いしていないようだが」
正範「混んでないんだし、問題ない」
日神「フードコートを飲食以外で利用してはいけないと、あちこちに貼り紙がしてあるだろ。ルールには従え」
和希「分かったよ。立ち去ればいいんだろ。(立ち上がって)行こう、マサ」
和希と正範、フードコートを後にしようと歩いていく。
その途中、
正範「景気付けに、お前の好きなクラブへ行くか?」
和希「今、女の子を見ても、アソコは勃たない」
正範「でも、何かでストレス発散しろ」
和希「“何か”って何? 面白そうなことなんて、どうせ見つからないよ。世の中そんなもんだ」
すると、出入口付近で、和希と正範、祐菜と良太にバッタリ出会う。
祐菜「あなたたちも来てたの?」
正範「なんでお前らもここに?」
祐菜「日神はフードコートに入った?」
正範「ああ。さっき、中で話をした」
祐菜「実は私たち、日神を尾行してるの」
和希「尾行?」
良太「僕は反対した」
祐菜「私たち、もう行かなくちゃ」
祐菜と良太、和希と正範を置いて、フードコートの中に入っていく。
正範「尾行されてること、日神が知ったら大変だぞ」
和希「(不敵な笑み)ああ、きっと怒りで頭が噴火する」
正範「なんだ、その顔?」
和希「(不敵な笑み)面白そうなこと、見つけたよ」

◯同・同(夜)
イートスペースのテーブル席。
日神、クレープを食べている。
一方、少し離れた席から
祐菜と良太、カップアイスを食べながら日神を監視中。
祐菜「彼、クレープ食べてるの?」
良太「やっぱり、もう帰らない? バレたらマズイよ」
祐菜「もう少しだけ待って」
すると、館内アナウンスのチャイム音。
館内アナウンス「ご来店中のお客様に迷子のご案内をいたします。20代半ばの水梨祐菜様、森波良太様…」
祐菜・良太「⁉︎」
館内アナウンス「お連れ様である日神準一様が2階サービスカウンターにてお待ちです…」
日神「⁉︎」
館内アナウンス「ちょ、ちょっと、か、勝手に入ってこないで下さい!」
和希のアナウンス「おい、日神! 聞いてるか?」
良太「和希の声だ」
和希のアナウンス「日神、実は祐菜と良太がお前のことをずっと尾行してるぞ」
日神「何だと⁉︎」
和希のアナウンス「周りをよく見てみろ」
日神、辺りを隈なく見ると、祐菜たちと視線が合う。
目線を大きく逸らす祐菜たちを目撃。
日神「(怒り)あの女〜」
良太「マズイ、バレた」
和希のアナウンス「以上、迷子のご案内でした」

◯日神の部屋・外(夜)
祐菜と良太、扉の前にやって来る。
祐菜、扉をノックする。
扉を開ける日神。
祐菜「どっか遊びに行かない?」
日神、扉を閉めようとする。
祐菜、「ちょっと待って!」と阻止。
祐菜「冗談よ。あなたに謝りたくて。ごめんなさい、尾行しちゃって」
日神「用はそれだけか?」
祐菜「許してくれる?」
日神「謝罪は受け入れよう」
祐菜「それは、“許す”って意味?」
良太「祐菜、もう帰ろう」
祐菜「最後に一つだけ」
日神「何だ?」
祐菜「仲直りのハグしよ」
と、両手を広げる。
日神「…」
日神、扉を閉める。
間。
良太「彼と友達になれて良かったね」

#4に続く

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