見出し画像

#10 「二名一室での泊まり方講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第10話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

猿飛冬美(50) キャピュレット高校の校長。

ダムス(18)ザンビア出身の留学生。中華料理店でアルバイトをしている。

マサコ(57)安ホテルの受付。

女性店員A
女性店員B

〈本編〉

T「二名一室での泊まり方講座」

◯キャピュレット高校・外観 
学校銘板「キャピュレット高校」

◯同・職員室 
中華料理店の制服姿のダムス、出前が入った袋を和希に渡す。
和希、出前の代金をダムスに渡す。
出前が入った袋を、祐菜も持っている。
祐菜「来週の金曜日に、シンデレラの舞台を見に行くんだ」
ダムス「へえ、シンデレラの舞台ですかぁ。いいですね」
和希「俺、映画のシンデレラは好きなんだよな。主演のリリー・ジェームズはイギリスが生んだ女神だ」
祐菜「実は、良太を舞台に誘おうと思ってるの」
ダムス「森波先生と二人っきりで行くんですか?」
和希「良太がOKするとは思えないが」
そこへ、猿飛がやって来る。
猿飛「(祐菜に)水富先生、あなたにちょっと話があるの」
祐菜「私、水梨です」
猿飛「あなたの名前、なかなか覚えられないのよね」
和希「校長、俺の名前は分かります?」
猿飛「…。えっと…」
和希「(祐菜に)校長は、みんなの名前を覚えてない」
祐菜「それで、猿飛校長。お話って?」
猿飛「例の出張の件だけど…」
祐菜「私が再来週に行くやつですか?」
猿飛「それが実は、来週の土曜日に行ってもらうことになったの」
祐菜「ら、来週の土曜日ですか?」
猿飛「何か、問題でもある?」
祐菜「…いえ、問題ないです」
猿飛、去っていく。
猿飛がいなくなった瞬間に
祐菜「問題、大アリよ!」
和希「出張が、来週の土曜になったからか?」
祐菜「舞台を見に行けないわ」
ダムス「でも、舞台は前日の金曜日なんですよね?」
祐菜「今回の出張は、前乗りしないといけないの」
和希「どこに出張行くんだっけ?」
祐菜「わくわく研修センターよ」
ダムス「…わくわく研修センター?」
祐菜「ちっとも、わくわくしない」
ダムス「そういえば、森波先生も出張に行くって言ってましたよ。わくわく研修センターに」
祐菜「えっ…良太も?」
ダムス「はい。水梨先生と同じで、来週の土曜日に行くみたいです」
祐菜、ニヤニヤする。
和希「どうやら、わくわくしてきたみたいだな」

◯祐菜の住むアパート・廊下(夕方)
501号室から、祐菜が出てくる。
そのまま、502号室へ行き、ドアをノックする。
502号室から、良太が出てくる。
祐菜「来週の土曜日、出張に行くんでしょ? その…わくわく研修センターに」
良太「そうだけど…」
祐菜「私も来週の土曜日、出張に行くの。わくわく研修センターに」
良太「…そうなんだ」
祐菜「それで、どうかな? 今回の出張さ、一緒に行かない?」
良太「君と僕、二人っきりで?」
祐菜「二人っきりで」
反応に困る良太。
祐菜「ダメ?」
良太「今回の出張では、前乗りして、ホテルに泊まるんだよ」
祐菜「だから?」
良太「なんかデートみたいじゃない?」
祐菜「(とぼける)…そうかなぁ」
良太「君も分かってると思うけど、僕と君で、その…恋愛するのは、ルールで禁止されてるから、二人っきりで行くのはルール的に良くないと思う」
祐菜「二人っきりで出張に行くのは、デートでもないし、恋愛でもないわ」
良太「…そうなのかなぁ」
祐菜「一緒に行きましょ」
良太「…分かったよ」
祐菜「ホント? 良かった」
そこへ、ダムスがやって来る。
ダムス「水梨先生」
祐菜「ああ! 例のチケットね。ちょっと待ってて」
と、501号室に戻って行く。
良太「チケット?」
ダムス「水梨先生が俺にあげるって」
良太「何のチケット?」
ダムス「舞台です。シンデレラの」

◯和希の家・ダイニング(日替わり)
和希、コーヒーを作っている。
玄関チャイムが鳴る。
和希、ドアを開ける。訪問者は正範。
家の中に正範を入れる和希。
和希「祐菜と良太はまだ来ないのか?」
正範「二人は今、出張に行ってる」
和希「ああ、そういえば今日だっけ」
と、コーヒーを淹れる。
正範「今日は、俺とお前の二人だけだ」
すると、冷蔵庫から「コーーー」という妙な音が聞こえてくる。
正範だけ、その音に反応を示している。
再び、同じ音が聞こえてくる。
正範「なあ、冷蔵庫の中にダースベーダー入ってる?」
和希「最近、冷蔵庫の調子が悪いんだ。きっと、そろそろ寿命だろうな」
正範「買い替えないのか?」
和希「明日、買いに行くよ。今日の内はまだ壊れないだろ」
すると、冷蔵庫から煙が上がり始める。
和希「上着取ってくる」

◯バス・車内(夕方)
祐菜と良太、隣同士の座席に座っている。
良太、腕時計を見て
良太「あと30分くらいで、ホテルに着きそう」
祐菜「ホテルといえばさ、今夜、部屋はどうする?」
良太「部屋?」
祐菜「せっかくだからさ、私たち、同じ部屋に泊まらない?」
良太「…え? 同じ部屋?」
祐菜「もちろん、あなたが先に、シャワー浴びていいわよ」
良太「この間も言ったけど、僕と君で恋愛するのは、禁止っていうルールがあるからさ…。その…僕たち、別々の部屋に泊まるべきだ」
祐菜「男女が同じ部屋に泊まるのって、別に普通のことよ」
良太「恋愛カップルの場合はね」
祐菜「…分かったわ。部屋は別々ね」
間。
祐菜「でも一応、部屋の鍵は開けとく」

◯日神の部屋・リビング(夕方)
日神、浴室のほうから、リビングにやって来る。バスローブを着ており、頭にはシャンプーハットを被っている。
日神、冷蔵庫を開け、飲み切りサイズの紙パックジュースを取り出す。
それにストローを刺し、一口飲んで
日神「ぷはー。やっぱ風呂上がりは、パイナップルジュースが一番だ」
すると、玄関チャイムが鳴る。
日神「(ドアに向かって)誰だ?」
ダムスの声「ダムスです」
日神「(ドアに向かって)開いてるぞ」
ドアが開く。訪問者は中華料理店の制服姿のダムス。
ダムス「出前です」
日神、ダムスに代金を渡し
日神「最近、良太に会ったか?」
ダムス「今日、会いましたよ」
日神「何でか知らないが、今日の職員会議に、良太が来なかった」
ダムス「ああ。今、森波先生、出張に行ってるんですよ」
日神「出張は明日のはずだろ」
ダムス「前乗りして、今夜はホテルに泊まるらしいです」
日神「一人で行くのか?」
と、ジュースを飲む。
ダムス「いいえ、水梨先生と一緒に」
ジュースを吹き出す日神。
日神「何だと⁉︎」
ダムス「何か問題ですか?」
日神「二人でホテルに泊まるなんて、そんなのデートだろ!」
ダムス「デート?」
日神「デートはルール違反だ! くそ! 何とかしなければ…」

◯安ホテル・受付(夕方)
受付カウンターには、マサコ(57)がいる。
祐菜と良太、受付カウンターの前にやって来る。
祐菜「どうも、こんばんは」
マサコ「何か用?」
祐菜「こちらって、ホテルですよね?」
良太「僕たち、何に見えます?」
マサコ「不倫カップルとか?」
祐菜「普通の客です」
マサコ「不倫カップルも、普通の客よ」
良太「僕たち、別々の部屋に泊まりたいんですけど」
マサコ「それは無理ね。あと一部屋しか空いてないから」
祐菜・良太「…え?」
良太「ひ、一部屋?」
祐菜「(マサコに)空いてる部屋が、一部屋だけなんですか?」
マサコ「今そう言ったでしょ」
間。
良太「マズイマズイ。それはマズイよ」
祐菜「(マサコに)つまり私たちは、同じ部屋に泊まることになるんですか?」
マサコ「不倫するなら、そのほうが良いんじゃない?」
祐菜、目をキラキラ輝かせる。
良太「(マサコに)この近くに、他のホテルはあります?」
マサコ「あるわよ。10時間歩けば」
良太「ちなみに、あなたのおウチって、この辺りにあるんですか?」
マサコ「だったら何?」
良太「変なお願いかもしれないですけど、僕だけ泊めてもらえます?」

◯家電量販店・冷蔵庫コーナー(夜)
和希と正範、冷蔵庫を物色している。
正範「どの冷蔵庫がオススメか、店員に聞いたら?」
和希「いや、ダメだ。どれを買うかは自分で決める。絶対に店員には頼らない」
そこへ、女性店員Aが通りかかる。
女性店員A「冷蔵庫をお探しですか?」
女性店員A、すごく美人でセクシー。
和希「実はそうなんだよ」
女性店員A「でしたら、こちらの冷蔵庫なんかオススメですよ」
と、オススメの冷蔵庫を紹介する。
和希「なら、それ買うよ」
正範「ちょっと待って」
正範、和希を連れて少し離れた所へ。
正範「あの冷蔵庫、値段見たか?」
和希「値札より、あの子に目がいく」
正範「もう少し慎重に検討しろ」
そこへ、女性店員Bがやって来る。
女性店員B「何かお探しですか?」
女性店員Bも、すごく美人でセクシー。
和希「ここは美女の楽園か?」
正範「(女性店員Bに)今、冷蔵庫を探してて」
女性店員B「それでしたら、こちらの冷蔵庫がオススメですよ」
と、オススメの冷蔵庫を紹介する。
女性店員A「ちょっと! 今、私が接客してるのよ! 首突っ込まないで!」
女性店員B「あなたは引っ込んでて。私が接客するから」
女性店員A「接客? 手術でデカくした胸を見せびらかしたいだけでしょ?」
女性店員B「何ですって⁉︎ そっちこそ、整形してないとか言ってるけど、顎の骨ガリガリ削ってるらしいじゃない」
女性店員A「とにかく、オススメの冷蔵庫を紹介するのは、この私だから」
女性店員B「いいえ、この私よ」
女性店員A「私だってば」
正範「どっちが良いと思う?」
和希「悩むな。どっちも美人だから」
正範「違う。冷蔵庫の話だ」
すると、正範の携帯から着信音が鳴る。
携帯を取り出し、画面を確認する正範。
正範「良太から電話だ」
と、電話に出る。
正範「よお、良太。出張は順調か?」

◯安ホテル・客室(夜)
良太、正範と通話している。
良太「全然順調じゃないよ! 緊急事態だ!」
正範の声「何だ、緊急事態って?」
良太「ホテルの部屋が、一部屋しか空いてなかったんだ!」
正範の声「祐菜も同じ部屋に泊まるってことか?」
良太「しかもベッドが一つしかない!」
正範の声「確かに、ルール的にマズイのは分かるが、もう寝るしかないだろ」
良太「その“寝る”っていうのは、セックス無しで普通に寝るって意味だよね?」
正範の声「今、部屋にいるのか?」
良太「僕は部屋にいるけど、祐菜は用事があるとか言って、さっき出て行った」
すると、外から、ドアのノック音。
良太「誰か来たみたいだから、切るよ」
と、電話を切る。
そして、ドアを開ける。訪問者は、祐菜。全身が隠れるコートを着ている。
良太「何でそんなコート着てるの?」
祐菜「それはね…バッバーン!」
と、コートの下の服装を露わにさせる。その服装とは、セクシーな下着姿。
良太「…もしかして、その下着を買いに行ってたの?」
祐菜「だって、せっかく二人っきりの夜なのよ。とことん盛り上がらなくちゃ」
と、ゆっくり部屋に入りながら、コートを脱ぎ捨てる。良太は後退りする。
良太「わざわざ言わなくても分かってるだろうけど、そういうのは完全にルール違反だよ。超えちゃいけない線を余裕で超えちゃうことになる」
祐菜「ここなら、バレることないわ」
良太「バレなきゃ、何してもいいの?」
祐菜「今夜を思い出の夜にするだけ」
良太「何度も言ってるけど、僕はルールを守りたいから、君とは友達の関係でいたいんだ」
祐菜「…じゃあさ、こうするのはどう? 同じベッドで、寝るだけにするの」
良太「その“寝る”っていうのは、セックスは無しって意味だよね?」

◯家電量販店・冷蔵庫コーナー(夜)
女性店員AとB、まだ口喧嘩している。そのそばで、気まずそうに突っ立っている和希と正範。
女性店員A「最初に、私が接客してたのよ!」
女性店員B「だってあなた、このフロア担当じゃないでしょ!」
女性店員A「だからって、私の邪魔しなくていいじゃない!」
女性店員B「よほど自分の胸をお客様に見せびらかしたいようね! 中身、ほとんどシリコンなのに!」
和希「(正範に)彼女たち、もう30分も喧嘩してる」
女性店員A「(女性店員Bに)そっちこそ、ノーブラで接客するなんて、どんな神経してるの!」
女性店員B「これはノーブラじゃない! ノーブラ風に見えるだけ!」
女性店員A「どっちにせよ、そんな格好で接客したいなら、水商売に行けば?」
和希「まあまあ、お二人さん。もう落ち着いて」
と、女性店員同士の喧嘩に割って入る。
女性店員B「あっ、申し訳ありません。冷蔵庫をお探しでしたよね」
女性店員A「(和希に)あちらの冷蔵庫がオススメですよ」
女性店員B「(和希に)いいえ、こちらの冷蔵庫のほうがオススメですよ」
板挟みの和希。
正範「どの冷蔵庫にするんだ?」
女性店員A「私のオススメですよね?」
女性店員B「私のオススメですよね?」
和希「…もう少し、喧嘩してていいよ」

◯安ホテル・客室(夜)
真っ暗の部屋の中、祐菜と良太、同じベッドで寝ている。
眠れずにいる良太、祐菜を見る。祐菜は眠っている。
良太、天井のほうを向き、溜息をつく。
すると、外から、ドアのノック音。
良太、ベッドから起き上がり、ドアアイを覗いて、訪問者を確認する。
そして、ドアを開ける。訪問者は日神。
良太「日神。ここへ何しに来たんだ?」
日神「君はここへ、出張で来たそうだな。それも、水梨祐菜と二人っきりで」
良太「知ってるの?」
日神「知らなかったら、タクシー代に7万も払ってない」
良太、廊下に出る。

◯同・廊下(夜)
良太「聞いて。なんか祐菜は、この出張をデートにしようとしてる気がする」
日神「具体的に何をした?」
良太「今は僕と、同じベッドで寝てる」
日神「何だと⁉︎」
良太「もちろん、セックスはしてない」
日神「あとは、別々の部屋で寝るだけだろ!」
良太「他の客室は空いてないんだ。それに、部屋にベッドが一つしかない」
日神「だが、君がキャピュレット高校の人間と恋愛をするのはルール違反だぞ! セックス無しとはいえ、あの女と二人っきりで同じ部屋で寝たり、同じベッドで寝るのは、ルール的に問題あるだろ!」
良太「僕もそう思ってるけど、別々の部屋では泊まれないし、部屋にベッドが一つしかない。だから、祐菜と二人で、同じベッドで寝るしかないんだ」
日神「…私に考えがある」
良太「野宿しろなんて言わないでね」
日神「いいか。問題は、君たちが“二人っきり”で寝てることだ」
良太「…つまり、どういうこと?」

◯同・客室(翌日の朝)
祐菜、ベッドで眠っている。
そして、ゆっくり目を覚ます。
祐菜の隣で、日神と良太が眠っている。
祐菜「キャーー!!」
と、飛び起きる。
その声で、日神と良太が目を覚ます。
祐菜「何で日神がここで寝てるの?」
起き上がる日神と良太。
良太「(日神に)君が説明して」
日神「(祐菜に)3Pはしてない」

◯和希の家・外(日替わり)
和希の家の前に、一台のトラックが止まっており、その近くに、和希がいる。
正範、トラックを見ながら和希のもとへやって来る。
正範「この間買った冷蔵庫が、届いたのか?」
和希「今から、家の中に運んでもらうところだ」
すると、トラックの荷台から、二人組の配達員が冷蔵庫を抱えながら出てくる。
それに続いて、もう二人組の配達員が冷蔵庫を抱えながら出てくる。
2台の冷蔵庫が家の中に運ばれていく。
正範「やっぱりさ、冷蔵庫2台も買わなくて良かったんじゃないか?」
和希「俺には無理だ、1台を選ぶなんて」

#11に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?