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デジタルノートの振り返りについて/メルマガ自動化話(5)/The PARA Method その3

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2020/10/12 第522号

○「はじめに」

以前紹介したポッドキャスト番組『オーディオブックびっぐばん!』の第一回をチェックしました。

『Dr.Hack』の第一章冒頭が朗読されていて、嬉しいやら気恥ずかしいやら、すごく複雑な気分になりました。自分の小説を読み返しても、そういう気分は起きないので、声の力ってすごいな〜と思います。

そういえば、このメルマガでずいぶん前に連載していた、ライフハック・ライトノベルの第二弾が電子書籍化作業を待ったまま、ずっと引き出しの奥にしまわれているのでした。

いくつかのプロジェクトが一段落したら、書籍化作業に取り掛かってみようと思います。

〜〜〜新しいカーステ〜〜〜

11年乗っていた車(軽自動車)のエンジンが、いよいよダメになり、先月新車(軽自動車)を購入しました。で、納車まで一ヶ月くらいかかり、つい先日新しい車に移行した次第です。

私は、車にはいっさいのこだわりがないので、妻の希望に沿う形で車を選びましたが、唯一カーステだけは、標準のものではなく、ケンウッドのちょっといいヤツをチョイスしました。音楽環境は、私にとって重要ごとです。

で、その新しいカーステなのですが、Bluetoothに対応しており、iPhoneと無線でつながります。しかも、ハンドルの近くにマイクがついており、そのまま通話までできちゃいます。近未来!(なにせ11年間車を買い替えていなかったので、技術知識的に遅れているのです)。

しかし、そんなことはまだ序の口です。

iPhoneと接続しており、ハンドルにマイクがついているので、車内で「Hey! Siri」と声を上げれば、見事に反応してくれます。

これが何を意味するのかと言えば、車の運転中に、電子機器を一切触ることなくメモが取れるのです。アンビリーバボ!

とまあ、現代を生きる人ならすでに当たり前の話かもしれませんが、個人的にはすごく感動しました。

〜〜〜Amazon Echoの置き場所〜〜〜

これまで、我が家のAmazon Echoは作業デスクの隅に鎮座していたのですが、その置き場所を台所に変更しました。

第一に、そもそも作業中はイヤフォンで耳を塞いでいるのでAmazon Echoの出番がほとんどないこと。第二に、妻が休みのときは、たいてい彼女が映像作品を見ているので、やっぱり出番がほとんどないことです。

一方で、台所では活躍の機会があります。まず、音声でタイマーをセットできるのが強みですし、片づけをしているときに、音楽やらポッドキャストを流せるのもメリットです。手が濡れていても、曲の早送りなどの操作が自由自在にできます。まさにこの場所のためにある装置といっても過言ではありません(たぶん過言)。

考えてみると、「AIアシスタント端末を自宅のどこに設置するのか」問題は、これまでの人類が直面したことがない問題であり、適切な解を導くためのフレームワークもまだ十分には整っていません(おおげさ)。

今後、あと2、3年くらいかけて、そのような知見が集まってゆくのでしょう。そういうコンテンツを、先取りしてまとめておくと良いかもしれませんね。

〜〜〜20を超える通知のオーバーフロー〜〜〜

Twitterを開いたとき、通知欄にバッチがついているとついついチェックしたくなります。で、チェックしたらしたで面白いリプライがついていたりして、それに返信している間に何をしようとしていたのかすっかり忘れてしまう、なんてことはよくあります。

フォロワーが1万人とか10万人の人たちは、さぞかしこの通知欄に悩まされているのだろうなと思っていたのですが、つい最近、少し通知欄が騒がしくなることがあったので、しばらく通知欄を開かないでいたところ(多少の我慢が必要だったことは告白しておきましょう)、20を超えたところで、20+と表示され、以降は新しい通知があっても表示が変わらなくなりました。

ということは、フォロワーが10万人くらいの人は、通知欄が常に20を超えていて、いっこうに表示が変わらないのではないでしょうか。でもって、人間は表示が変わらないものは変化を感じず、そのまま日常の風景と化していくことは十分に考えられます。

つまり、通知欄に悩まされてしまうのは、ちょこちょこチェックしてしまう小市民だからということなのでしょう。悲しいながら。

〜〜〜New Evernote〜〜〜

Evernote for Macと for Windowsがメジャーアップデートしました。

劇的に変わったと言ってよいでしょう。

今後のさらなるバージョンアップに期待します。

〜〜〜アップデートの悲劇〜〜〜

と喜んでいたら、なぜか自分が作ったスクリプトが動かず……。あれ、昨日まできちんと動いていたのに。

もしかして、アップデートしたからAppleScriptの挙動が変わったのかな〜と思い、「ライブラリ」(ドキュメントのようなもの)を確認しようとしたらなぜか開かない。あれ? と思って一度登録を消して、ふたたびEvernoteのライブラリを登録しようとしたら、「このアプリはAppleScriptに対応していないため、登録できません」との表示が。

え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ですよ。ほんとに。今年一番びっくりしました。ほんとに。

少し前からEvernoteの作業記録ノートをnoteのサークルで共有し、その中身を、アイデア・プロジェクト・ミニ文章・URLリストに分割して再利用できるスクリプトを書いて、やっとこさ安定してきた、さあ、これからバシバシノートを書いていくぞと思っていた矢先の出来事です。

一応Evernoteを前バージョンに戻せばAppleScriptを使えるようになりますが、結局どこかの時点で新しいバージョンに移行する必要が出てくるでしょうから、そこに甘えているわけにはいきません。

幸い、つい先日AppleScriptでやっていた処理の8割くらいをPythonに移行したところだったので、新しい体制への移行それほどの大手術にはならなそうです。あと、Evernoteの共有ノートはiPhoneから若干閲覧しにくい状態だったので、なんとかしようとは思っていたのでした。

一応、Evernote社の発表によるとAppleScriptへの対応ものちのち予定されているようですが、以上のもろもろがあって、作業記録ノートはEvernoteからテキストファイルに移すことになりました。

そこでもいろいろな環境改善とコード書きが発生したのですが、それはまた改めて紹介するとしましょう。やっぱり、ツールに依存しすぎると、こういうときに反動がきついですね。

〜〜〜努力ではなく〜〜〜

前々から「努力する」という言葉が好きではありません。

努力的行為が嫌いというよりも、「頑張れば、なんとかなる」的な価値観を感じさせるのがイヤなのです。根性論的ニュアンスとでも言うのでしょうか。

しかし、ある方向性に向かって営為を積み重ねることはやっぱり大切です。そういうとき、つい「努力する」と言ってしまうのですが、最近「骨を折る」という言い方なら根性論的ニュアンスが薄いのではないかと思い至りました。

まあ、「骨を折る」も、よくよく考えたらハードなイベントではあるので、もう少し別の言い換えができるといいのですが。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

『諏訪式。』(小倉美惠子)

長野県諏訪の「地力」を歴史的に掘り起こす一冊です。なんというか、タイトルがいいですね。こういう「hogehoge式」的なものがもっと増えていけばいいなと思います。

『「社会人教授」の大学論』(宮武久佳)

長年勤めた通信社を辞めて、大学教授の公募に応募した著者が遭遇した異文化とも言える大学文化。その異質さを外部から確認した上で、未来への提言を成すという一冊です。民族学者などは、現地に飛び込んで、現地人とは異なる視線で文化を観察するわけですが、大学(ないし学校)という「場」は、これまでそうしたストレンジャーのまなざしにあまりさらされてこなかったのかもしれません。

『地下世界をめぐる冒険——闇に隠された人類史』(ウィル・ハント)

タイトルだけを見ると小説のようですが、バリバリのノンフィクションです。「ニューヨークの地下鉄、パリの地下納骨堂、アボリジニの聖地、カッパドキアの地下都市、マヤ人洞窟」など、人類は光なき場所をデザインし、利用してきました。それらを渡り歩き、人間にとっての闇の意味を考察した一冊です。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. AIアシスタント端末をお持ちですか。それはどこに設置されていますか。

では、メルマガ本編を始めましょう。

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○「デジタルノートの振り返りについて」 #知的生産の技術

デジタルにおけるアイデアノートの扱いについて復習しましょう。

まず、デジタルでは、情報を大量に保存できます。上限は存在するものの、アナログのノートブックとは比較にならない規模の情報が保存できます。

当然、アナログ的な管理方法では歯が立たず、新しいデジタル的な方法が必要となります。

もちろん、デジタルにおいてもアナログ的管理法を用いることはできますが、その場合は、「保存する数を限定しておく」という制約が必要です。そうした制約は、間違いなく役に立つのですが、デジタル的な新しい管理法とはまた違ったアプローチなので、ここでは脇に置いておくことにしましょう。

で、そのデジタル的な情報管理です。

デジタルツールでは情報を大量に保存できますが、それはアイデアノート的なものとの相性がすこぶるよいものです。アイデア・虎の巻・自分辞書・evergreen notesと、表現はさまざまありますが、自分の経験や思考によって生み出された知識は、経年と共に増え続けます。

もちろん、時間が経つことで役に立たなくなったり、改良が必要な情報も出てくるのですが、それを差し置いても、情報は増え続けていきます。その意味で、デジタルツールとの相性は良いわけです。Evernoteの「毎月保存領域が増えていく」という方式も、この情報の性質と見事に合致しています。

増え続ける情報と、いくらでも保存できるデジタルツール。それを活かしていこうというのが、デジタル的な新しい管理法です。

■一つの課題とその解決

さて、デジタルツールでは情報をノートブック何冊分も保存できるわけですが、そのすべてをケアできるわけではありません。

たとえば、日本の標準的な一戸建てについている庭くらいなら一人でもメンテナンスできますが、東京ドーム一個分くらいの巨大なガーデンは、さすがに一人では管理は無理でしょう。デジタルツールで実現されるアイデアガーデンとは、後者のような(あるいはもっと大きい)ものになるわけです。

保存したとしても、そのすべてを一つひとつ見返して育んでいく、というのは無理です。言い換えれば、「一つひとつ見返していく」というやり方は、アナログ的な管理法だと言えます。

デジタルは、その考え方から脱却しないとやっていけません。

そこで、全体から部分的に取り出してケアする、という方法を採ります。

Scrapboxの場合、全体を一覧する機能がない代わりに、一つのページから別のページがリンクされたり、内部リンクを作るときにサジェストが上がってきます。全体の一部が表示されるのです。

そこで見出されたページが表示され、必要とあれば書き換えられたり、新しいリンクが追加されたりして、メンテナンスが行われます。

Scrapboxのページが100以内なら、こうしたやり方はいかにも迂遠な気がしますし、全体をうまくケアできていないのではないか、という不安も起こります。しかし、ページが5000や1万まで増えたらどうでしょうか。それらの一覧をすべてチェックし、一つひとつのページをメンテナンスしていかなければならないとなったら、はたしてそれは実行できるでしょうか。

もちろん、無理でしょう。

つまり、ページが増えたら、一回にできるメンテナンスは必然的に部分に限られるのです。だから、部分を適切にケアできるシステムの方が、全体のサイズが巨大になったときにうまく機能してくれます。

他にも、全体からランダムでとり出す方法もあり、それを実現するためのミニツールを自分で作った、というところまで前回は書きました。では、そのツールにどうやって情報を保存するのか、というのが次なる話です。

■記録をどう作るのか

かなり前の話になるので、忘れている方も多いでしょうから、私がこのツールを作ろうと思った動機をもう一度書いておくと、「ちょっとした空き時間・待ち時間などに、iPhoneで自分のアイデアを振り返れたらいいな」というのが動機でした。

つまり、そのツールはiPhoneから閲覧できる必要があり、Macで操作することも考えると、Webツールという結論になりました。Webツールなので、データはサーバーに保存することになります。

しかし、日々の着想によって生まれるアイデアを、いちいちサーバーにアップするのはなかなかの手間です。そして「なかなかの手間」は、継続性の敵です。この点をクリアしなければなりません。

そこで私は考えました。日常的に書いている業務日誌から、このツール用のデータを生成すればいいのではないか、と。

細かい話は割愛しますが、業務日誌に特定の記法でアイデアを記述すれば、一日の終わりにその部分だけを抜粋し、アイデア表示用のデータを生成できるようにしたのです。こうしておけば、私はこれまでと同じように業務日誌の中にアイデアを書きつけていくだけで、それらの中からランダムで取り出せるようになります。なかなか良さそうではありませんか。

■意外な発見

認識の変化が生まれたのは、そのためのコードを書いているときでした。

作成したデータがWebツールでうまく表示されているかを確かめるには、いったんランダム表示を切らなければなりません。でないと、その日のアイデアが表示されるまで永遠とリロードを繰り返す必要があります。

そこでいったんランダム表示をやめて、すべてを表示することにしました。あくまで確認のためです。

しかし、意外な感覚に気がつきました。「昨日のアイデアを見返すのもなかなか良いな」という感覚です。

ランダム表示をオフにして、全体表示にしている場合、そのツールを開くと、「昨日までのアイデア」が一覧されます。データ生成のコードは一日の終わりに実行されるので、その日の作業記録に書いたアイデアはまだツールには表示されないのです。そこに一覧されるのは、すべて「昨日以前のアイデア」であり、先頭付近に並ぶのは「昨日のアイデア」です。

で、「昨日のアイデア」という過去粒度性(今適当に作った言葉です)が、実に良い感じだったのです。

完全に忘却したわけでもないが、しかし短期記憶に鮮明に記憶されているわけでもない。読み返せば、「そういえば、昨日こういうこと考えていたな」と思い出せる程度の鮮度の記憶。

手帳を──特にほぼ日手帳を──使っていたころは、そうした鮮度の記憶=記録によく触れていました。アウトライナーを除くデジタルノートの場合、それぞれの日付の情報が独立しているので、そうした鮮度の記憶=記録とは長らく疎遠になっていました。

その感触から、二つの知見が得られました。一つは、「一日前のアイデア」も、全体から部分をとり出す方法であり、その他とは違った面白さがあること。もう一つは、別にすべてが表示されていても構わず、最初に表示されるのが「部分」であれば構わない、ということです。

■あっても無いのと同じ

私が作ったツール(MindGardenという名前です)は、昨日以前のアイデアを表示はしていましたが、トップに表示されるのは直近のものだけです。それ以外は、スクロールしなければ目に入りません。言い換えれば、スクロールしなければ無いのと同じです。

この「スクロールして見なければ、無いのと同じ」は、よく否定的な文脈で用いられますが、実は肯定的な意味もあるのです。たとえば、Scrapboxは、画面を下にスクロールしていくと、新しいページが読み込まれますが、逆に言えば、その操作をしない限り、それらのページは「無いのと同じ」です。メモリ的な負担もありませんが、認知的な負担もないわけです。

MindGardenも同じで、アクセスしたときは昨日付近のアイデアしか私の目には入りません。認知的な圧迫感がないのです。で、別のものを求める場合は、スクロールすればいいのです。

更に私は、そのツールにおいて、カードを縦一列に並べるのではなく、Flexboxを使って、縦と横に配置しました。

この方式だと、新しいカードが増えるたびに、カードの位置(x,y座標)が変わってきます。つまり、適当にスクロールしたときに表示されるカードが変わるのです。

縦一列方式にしてしまうと、目に入るカードがだいたい同じになってしまうのですが、MindGardenではそれが違ってきます。縦や横に2〜3スクロールしたときに、表示されるカードセットが変化するのです。つまり、多少のランダムさがそこにあります。

さらに私は、JavaScriptを使って、トップページにアクセスしたときに、x,y座標をランダムに設定することでランダム表示を実現しようとも考えましたが、それ以上に「昨日のアイデアを振り返る」という感覚が気に入ったので、今のところはそこまでのランダムさは付与していません。

■「一日前」という有限化

「過去のアイデアを見返す」という作業は、時間が経つほどにビッグプロジェクトになっていきます。しかし、どれだけ時間が経とうとも、「一日前の記録を見返す」は一定のサイズ以上に大きくはなりません。つまり、有限化されています。

もちろん、一日前に限定する必要はありません。一週間前でも一ヶ月前でも一年前でもOKです。とにかく「一日分」というのは全体に対する部分であり、そのサイズであれば、どれだけ大容量の記録を持っていても、振り返りは困難さを回避できます。

逆に、どれほど知的生産活動の歴史が短くても、それが二日目以降であるならば、一日前の記録を見返すことはできます。つまり、歴史の長短問わずに実施できるアプローチなのです。

だから私は、まずこのアプローチをお勧めしたいと思います。何も私のように自前のツールを作る必要はありません。一日前に自分が書いたものを見返すこと。それだけでも、ガーデンの土を耕すような効果は得られるでしょう。

もちろん、活動が長くなってくれば、それよりも長いスパンでの見返しも可能です。ただし、「一日分」という有限化を超えないようにはしましょう。それよりも大きいスパンの振り返りは大掃除と同じで、年に何度かやるのが精いっぱいなはずです。

まずは、小さい振り返りからスタートしましょう。

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