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アイデアノートを並べない/メルマガ原稿自動化作戦(4)/The PARA Method その2/似て非なる買い物リスト/

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2020/09/28 第520号

○「はじめに」

うちあわせCast第四十四回が放送されています。

今回は、長年の課題である「知的生産」という言葉を使わずに、しかしそういうことが好きな人たちをグルーピングするための言葉について考えてみました。

かなり厄介な問題ですが、今回の放送で少し手がかりが捉まえられた気がします。

後半は、デジタルにおけるタスク・情報管理の話が出ていますので、そちらもご興味あれば。

〜〜〜discordの招待〜〜〜

上の番組内でも話したのですが、どういう言葉が良いのかは、一人でもんもんと考えるよりも、いろいろな人から意見を募った方が良さそうです。

そこで、意見交換のためのdiscordチャンネルを作ってみました。以下のリンクから参加できます。

https://discord.gg/6Ya7fNh

もし、「こういう言葉はどうですか?」という意見があれば、チャンネル内に書き込んでみてください。お気軽にどうぞ。

あと、今後もポッドキャストで話したテーマで、何か面白そうなものがあればこうしてテーマ別のチャンネルを作り、そこで意見・感想を募っていければなと考えております。

〜〜〜僕エバ電子書籍〜〜〜

すでに遠い過去の話のようですが、2016年に出版された『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』が電子書籍になりました。以下はKindle版です。

その他の電子書籍販売サイトでも発売されていると思います。

もし「電子書籍版を首を長くして待っていたんだよな〜」という方がいらっしゃったら、ぜひどうぞ。長らくお待たせしてすいませんでした。

〜〜〜ポッドキャスト〜〜〜

9月30日から新しく始まるポッドキャスト番組の第一回で拙著が紹介されるというご連絡をいただいております。

「オーディオブックびっぐばん!」という番組で、配信先は audiobook.jp とのことです。

具体的な内容までは私もまだ知らないので、配信されたらさっそく聴いてみようと思います。

〜〜〜仕事した気分〜〜〜

ちょっとした事務関係のメールでも、メールを送ると「ああ、仕事をしたぞ」という気分が強く生まれます。少なくとも、一時間触ってもまったく進まない原稿作業よりは、仕事気分を満喫できます。

精神的には、たぶん良いことなのでしょう。

でもって、おそらくそれが仕事の中で、盛んにメールが送られる理由なのだとも思います。何も進まなかったり、何もすることがなかったりする「手持ちぶさた」な気分を、メールの送信はバッチリ埋めてくれるのです。しかもそれは、Webサイトを読みあさったり、YouTubeにどっぷり浸かるような脱線ではありません。れっきとした「仕事」です。

とは言え、その「仕事」が、本当に生産性向上に役立っているのか、価値を生む助けになっているのかは、ちょっと考えた方が良いのでしょうけれども。

〜〜〜最近観た映画〜〜〜

先日連続で映画を映画館に観に行きました。

・『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
・『TENET』

どちらもそれぞれ面白かったです。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、テレビシリーズを観終えてからの方が楽しめると思います。

『TENET』の方は、ぼんやり観ているとまったくわからなくなるので、「よし、観るぞ」という気合いが必要ですが、それに見合うだけの「ほぉ〜」体験があるかと思います。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

『人はなぜ「自由」から逃走するのか』(仲正昌樹)

エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を解説しながら、現代的な状況を解きほぐしていく、という本です。昨今、さんざんテレビで「強いリーダーシップが必要だ」というメッセージが放たれていて、「なるほど、こうして全体主義は生まれるのか」と何度も頷きました。

『大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起 (集英社新書) 』(吉見俊哉、苅谷剛彦)

トップユニバーシティーってどこだよ、と思ったら、オックスフォード大学と東大をなんとかグルーピングするための言葉のようです(正直ちょっと苦しいと思います)。「なぜ大学改革は失敗し続けるのか――?」と内容紹介にありますが、むしろ今は現場レベルでさまざまな改革が行われつつあるのではないかとも感じます。

『「役に立たない」科学が役に立つ 』(エイブラハム・フレクスナー、ロベルト・ダイクラーフ)

プリンストン高等研究所の創立者と現所長によるエッセイらしいです。原題は『The Usefulness of Useless Knowledge』。nessとlessが韻を踏んでいる感じですね。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。

Q.「知的生産」が示すものを現代で言い換えるなら、どんな言葉が機能するでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

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○「アイデアノートを並べない」 #知的生産の技術

前回は、自作のアイデア環境の実装について検討しました。まずは、カードスタイルで表示をすることを決め、しかし、縦一列に並べるわけではないことを確認したところまでです。

今回はその続きからいきましょう。

パソコンのアプリケーション、特にGUIのアプリケーションでは、「縦一列に並べる」表示が一般的です。ノート系ツールでも、アウトライナーでも、ファイルエクスプローラーですら、要素を縦一列で並べます。

おそらくそれは、パソコンにとってそれが「自然」だからでしょう。ターミナルだって要素は縦一列に並びます。それ以外の表示をしようと思えば、一工夫必要なのがパソコンなのです。

とは言え、パソコンにとって「自然」であっても、その方法が最適な戦略であるとは限りません。

特に、日々増え続けていくアイデアノートの管理としては、縦一列に並べる方法は、ただひたすらにスクロールが長くなっていくので、厄介な代物でしかありません。

とは言え、私には高度なプログラミングスキルがありませんので、目新しい「並べ方」が実装できるわけではありません。

では、どうするか。

そもそも「並べない」のです。

イメージはこうです。

まず、アイデアノートを情報として保存しておく。データベースは使わずに、単なるテキストデータとして保存しておく。そして、そのツールを起動するたびに、それらのテキストデータからランダムにいくつか選んで表示する。「リロード」のボタンをつけておき、それを押すたびに、同様のランダム取り出しを実行する。

こんな感じのツールです。

アナログでたとえれば、情報カードボックスから適当に何枚か抜き出すことを、デジタルツールでやってしまおう、というわけです。

そもそも、情報カードボックスに入っているカードたちは、その状態ではまったく中身は見えません。すべてを取り出して、それを一列に並べて読む、ということもしないでしょう。むしろ、折りに触れて、適当に何枚かを取り出して読む、という使い方が多いのではないでしょうか。

その操作感を、デジタルツールに「翻訳」するわけです。

幸い、ランダムな取り出しはデジタルの得意とするところです。実装自体もそう難しいものではありません。だいたいどんなプログラミング言語でも、乱数を発生させる関数などが備わっていますので、それを使えば一発です。

これで実装のイメージが固まりました。

次にプログラミング言語の選択ですが、これはJavaScriptにしました。理由その1は、今の自分が一番書ける言語がJavaScriptであり、理由その2は、以前カード型で表示させるツールをJavaScriptで作っていたからです。

以前のツールを流用することで、「テキストデータ(json)の内容をカードスタイルで表示する」部分の実装は書かなくても済みました。楽チンです。

あとは、「一列に表示する」部分の実装を「ランダムにn個取り出す」に書き換えればOKです。こういう風に、以前作ったものを「使い回す」といろいろ楽になるので、データを保存しておくことはやっぱり有効です。

というわけで、このツールはあっという間に作れました。nは、1,3,5あたりを試してみましたが、どれも良さそうです。どの数を選んでも、このツールにアクセスするたびに、違った内容のアイデアカードが表示されます。つまり、飽きが来にくく、毎回新鮮な気持ちが味わえるのです。

また、どれだけアイデアカードが増えようとも、スクロールが長くなることはありません。なにせ、そこには「全体」がないのです。縦にずっとスクロールしていくのではなく、何度もリロードボタンを押すことで、カードボックスを「漁っていく」のがこのツールにおける「カードをくること」に相当します。

これが実に軽快です。縦スクロールが長くなればなるほど、ある種の「重さ」が生まれるのですが、ランダム取り出しではそれがありません。保存されたアイデアカードが1万枚になろうとも、UIの表示的には(つまり、読み込み速度以外は)、まったく変わらないように使えるのです。

そうした感覚が、「スケールさせる」ためには必要ではないかと思います。

◇階層整理型WiKiはスケールしない - 橋本商会
https://scrapbox.io/shokai/%E9%9A%8E%E5%B1%A4%E6%95%B4%E7%90%86%E5%9E%8BWiKi%E3%81%AF%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84

これで基本的な実装はできたので、あとは応用的な実装になります。

たとえば、現状はランダムにn個取り出していますが、そうではなくあるキーワードを有するカードだけを表示させたら面白いかもしれません。つまり「フィルター」機能です。Evernoteを含むカード、Scrapboxを含むカード、テキストエディタと含むカード、といったものを抜き出し、一覧できたら、知的生産に活用できるかもしれません。

というように、ツール改造の妄想は膨らみますが、残念ながら、これ以降たいした改造は進んでいません。なんなら現状はn個のランダム表示ではなく、「一覧表示」に戻っているのですが(なんじゃそれ)、もちろん、それにもちゃんと意味はあります。

ただし、その話は作業記録にアイデアメモを書きつける習慣と関わっていますので、そこでまた深堀りできたらと思います。

とりあえず、ここまでで言えることは、ある種の「アイデアノート」(ノードメモ・パーマネントノート・Evergreen notes)は、その数が減ることはなく、時間と共に増えていくので、それが認知的に重くならない実装が重要だ、ということです。

これは、アナログでは問題になりませんでしたが、いくらでも保存がきくデジタルノートでは、確実な問題となって立ち上がってきます。

その際に、消して(減らして・捨てて)対応するのではなく、表示の仕方を変えることで対応できるのが、デジタルツールのメリットでしょう。

デジタルツールの運用では、そうした点を考慮したいところです。

(つづく)

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