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優先順位の問題その2/企画案の整理/家事の価値は見えない/企画案の発想トレーニング1〜言葉遊び〜

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~2020/04/26 第498号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

4月23日に村上春樹さんの新刊が発売されました。新聞やら雑誌などをまったくチェックしておらず、またタイムラインでも発売に関する情報が一切流れていなかったので、わりと唐突感がありました。知ったのは、本を買った人のツイートをタイムラインで見かけたからで、私の情報源が著しくTwitterに偏っていることがよくわかります。

現状Amazonでは、紙版は品切れ中ですが、しっかりKindle版も出ているので外出自粛状態でもばっちり購入できますね。私は買い物ついでに書店に立ち寄って紙版を購入しました。このメルマガの配信作業を終えたら、じっくり読みたいと思います。

それはそれとして、現状Amazonでは必要な物資の物流を優先させているようで、紙の本の在庫が欠品しがちだと聞きました。なかなか気軽に書店に行ける雰囲気でもありませんし、今電子書籍版が出ていない本は相当な機会損失を被っているでしょう。

拙著『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』も、「在庫切れ:入荷未定」になっていて、ランキングもダダ下りになっています。書店の危機・消滅といった悲観論は以前から囁かれていますが、このような形で「書店を経由しない本の売り方」が体験されるとは、誰も想像していなかったでしょう。

ある意味で、本に関わる主体は、このタイミングで一つの試練に晒されているのだと感じます。紙の本がいいのか電子書籍がいいのかという好みの問題を超えて、読み手にどうやってコンテンツを届けるのかを真剣に検討する必要があるのでしょう。

〜〜〜教師のiPad仕事術〜〜〜

新刊話でもう一つ。著者から献本いただいた『仕事がサクサク進む教師のiPad仕事術』が(こういっては失礼ですが)予想外に面白いものでした。当初はテクニック集になると聞いていましたし、教師向けの本ということで、自分は対象読者ではないだろうなとタカを括っていたのですが、実際に読んでみたら大違いでした。

Amazonではまだ発売されていませんが、以下のページから注文すると出版社さんから直に送られてくるみたいです(著者さんによると、「ちょっとだけ良いことがあります」とのこと)。

上の本は商業出版ですが、私としてはセルフパブリッシングで多くの人が「自分の仕事術」(と言いたいこと)を開示する本づくりをしてくれるともっと楽しい世界になるのになと感じております。

〜〜〜自宅作業のいろいろ〜〜〜

家にこもりっきり(+ときどきの散歩と買い出し)の生活を送っているのですが、やはりカフェをめぐる日常とは違いがあります。

まず、昼食が非常に遅くなるか、あるいはほとんど食べないに等しいまま過ごすことが増えました。作業に夢中になるあまり、昼食のことをうっかり忘れてしまうのです。外にいるときは場所の移動があり、移動した先(カフェやフードコート)で何かしらを食べようかという気持ちが湧いてくるのですが、ずっと家にいるとそれがありません。体重的にはよろしいのかもしれませんが、栄養的にはあまりよろしくない状況です。

あと、当然のように、自宅の作業机の椅子に長時間座ることになるのですが、その椅子があまり腰によろしくないことに気がつきました。結構良い椅子を買った記憶があるのですが、腰痛のサポートにはあまりなっていません。

そこで、椅子を新調しました。どうせしばらくは同じような状態が続くので、椅子への投資は費用対効果が高いと言えます。といっても、十万円もするすごい椅子ではなく、ホームセンターで売っているちょっとだけいい感じの椅子(2万円くらい)です。

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プロ仕様の椅子ではないものの(プロってなんだ?)、ある程度座っていても腰の痛みが起こりにくくはなりました。まあ、そもそもとして長時間座っていること自体を避けるべきなのですが。

でもって、最後に音楽です。普段カフェで作業するときは、iPhoneかiPodにイヤフォンをつっこんで、自分で作ったプレイリストを聴いているのですが、自宅で作業するときはアレクサがいます。もっと言えば、Amazon EchoとAmazon Prime musicがあります。

アレクサに「何か適当な音楽をかけて」といったら、popとかライトjazzとか、その辺の音楽を適当にセレクトしてくれます。なんとなく、カフェにいる気分を満喫できます。

カフェにいるときにはカフェの音楽は聴かずに、自宅にいるときにカフェっぽい音楽を聴くのは皮肉なものですが、そういう環境づくりが、自宅で長時間作業を続ける上では大切かなと感じております。

〜〜〜縦書きか横書きか〜〜〜

いよいよ『僕らの生存戦略』の第一章が完成に近づいてきました。原稿は粗々ではあるものの一応書き上がったので、それを一度しっかり読み返す作業が次のステップです。

最終的に、下読みを協力してくれる人を集めて、その人たちにチェックを手伝っていただこうと考えているのですが、そのときにはテキストファイルでもなく、Scrivenerのプロジェクトファイルでもなく、何かしら「読み物」の形になったファイルを渡すことになります。PDFかEpubのどちらかになるでしょう。

でもって、そうしたファイルを作るために、まず決めなければならないのが「縦書きか、横書きか」です。

もしツールの解説など英単語が山盛り出てくる内容の場合、横書きが優先的に選択されるでしょう。一方、小説の場合は、縦書きが選択されやすい傾向にあります。

しかし『僕らの生存戦略』はそのどちらでもありません。英単語がまったく出てこないわけではないものの、たくさん出てくるわけでもありません。もちろん、小説でもありません。言い換えれば、「縦でも横でも別にどっちでもいい」のです。

こういうものほど決めるのが難しくなります。

当初は、縦書き版のファイルと横書き版のファイルを両方作り、それぞれを下読み協力者さんに読んでいただいて、どちらが良いのかについての意見を聞こうかとも考えたのですが、さすがにそれは著者としての仕事を丸投げしすぎだと思い至りました。

よって、とりあえずは両方のバージョンを作り、自分で読んでみてから決断することにしました。読んでみるとあたらめて実感しますが、たかだが字が並ぶ方向が90度異なるだけで、雰囲気というか読書体験は変わってくるものです。

現状は、6:4くらいで縦書きが優勢な状況ですが、最後まで読んでみないことにはなんとも言えません。今週中にはおそらく決着がつくかと思います。

〜〜〜今週の三冊〜〜〜

今週気になった本を三冊紹介します。

『サピエンス全史』では、「農業革命は、史上最大の詐欺だった」と書かれていて、私たちが植物を栽培化したのではなく、植物たちによって私たちが(それを育てるために定住化を余儀なくされたという意味で)家畜化されてしまったと指摘されていますが、おそらく本書も似たような構図で国家の誕生を捉える一冊なのでしょう。

恐ろしいタイトルですが、レヴィ=ストロースの時評集です。表題作でもある「われらみな食人種」は、「親族の遺体を食べることで愛情と敬意を示す」というニューギニア山岳地域の慣習が未開だと感じる私たちだって、科学技術を駆使して似たようなことをやっているのではないかと著者は警告します。〈未開と文明〉についての観念をグラグラと揺らしてくる本書は、たぶん現代においてこそ価値が再発見されるのでしょう。

副題の「わかりあえなさをつなぐために」がとてもいいですね。努力すればいつしか皆が「わかりあえる」という楽観的な希望にすがるのではなく、「わかりあえなさ」があるものとして、何とかそれをつなごうとすること。多様性というのはそういう営為の継続を指すのでしょう。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチがわりにでも考えてみてください。

Q. 最近読んだ文章の縦書きと横書きの比率はどれくらいでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。
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2020/04/26 第498号の目次
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○「優先順位の問題その2」 #タスクリストの作り方

○「企画案の整理」 #知的生産エッセイ

○「家事の価値は見えない」 #エッセイ

○「企画案の発想トレーニング1〜言葉遊び〜」 #セルフパブリッシングの基礎

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「優先順位の問題その2」 #タスクリストの作り方

優先順位をどのようにして決めたらいいのか、について前回の最後では、「自分の直感に任せる」という答えを提示しました。

今回はそれについて考えてみます。

■直感は間違う

タスクリストにタスクが並んでいるとして、どれを優先させるかを直感で決めたとしたらどうなるでしょうか。もちろん、おおいに間違うはずです。人間は、緊急度を重視しすぎるので判断において重要度が無視されます。結果、「急ぎの仕事」だけがチョイスされ、急ぎでないけど重要な作業がスルーされます。

だからこそ、ブライアン・トレーシーの『カエルを食べてしまえ!』では、「カエル」を、つまり重要なだけでなく難しいと感じる仕事を最初にやろうと提案しています。そうした提案がなければ、仕事は先送りされてしまうからです。

ここでのポイントは、その仕事の実際的な難しさではなく「難しいと感じる」という心理的な側面です。自分の役割において大きな意義があると思える仕事は難しいと感じられますし、新しい仕事、つまり慣れていない仕事も難しいと感じられます。直感だけに従うと、そうした仕事は先送りされがちなのです。

■二つの心理が交差する場所

しかし考えてみると、「難しいと感じる」が心理的な要素であるとともに、重要な仕事というのも、実際は自分が「重要であると感じる」仕事であり、これもまた心理的な要素でしかありません。言い換えれば、客観的な物差しによって測定されているわけではないのです。

つまり、「カエル」とは、異なる二つの心理的な綱によって引っ張られている仕事のことです。それた大切だという気持ちと、それは難しいという気持ちがクロスする地点が「カエル」であり、もっとも先送りされやすい仕事なのです。

■正しさと目的

「カエル」が心理的なものならば、そこには客観的正しさなど存在しないことになります。言い換えれば、「正しい」優先順位などありません。優先順位とは所詮心理的なものなのです。

そしてその優先順位は、何かしららの目的に沿って形成されます。家族を大切にしてさっさと帰宅したい人と、できるだけ最短で出世したい人の仕事の優先順位は変わってくるでしょう。つまり、「正しい」優先順位ではなく、「適切な」優先順位があるだけです。

では、「正しい」目的はあるのでしょうか。これは、宗教や倫理や道徳の問題ですが、少なくとも、「正しい」生き方を画一的に定めないのが現代社会です。それぞれの人が、自分が信じる生き方をまっとうできるのが先進国社会でしょう。

となれば、客観的な「正しい」生き方はなく、それぞれの人が自分の責任において定める(ないしは結果を引き受ける)生き方があるだけです。その選択の上に(あるいは下に)「適切な」優先順位が決まってきます。

繰り返せば、家族を大切にする生き方と、大きな責任ある仕事を目指す生き方のどちらが「正しい」わけではありません。そして、それぞれの行き方において、適切な優先順位の決め方は決まってきます。

■合理的ではたどり着けない

では、どうすれば自分の生き方を決めることができるでしょうか。

合理的計算の上、でないことはたしかでしょう。なんといっても、自分の人生を生きた人は自分以外誰もいないのです。真の意味で合理的なデータなど揃うはずがありません。

となれば、その選択は、真に感情的なものによって、感覚的なものによって、心理的なものによって、決められることになります。人はそれを価値観と呼んだりもします。

結局ここでは、直感が出てくるしかありません。経験によって育まれた直感によって、自分の生き方を決めるのです。そしてその決定には正解も間違いもありません。ただその結果を自分で引き受けることのみが、私たちにできることです。

■さいごに

というわけで、タスクリストの中から直感でタスクを選ぶことには失敗が含まれますが、しかし直感をすべて排除したら最終的には何も決められなくなってしまいます。直感は必要なのです。ただ、その使い方には気をつける必要があります。

なんにせよ、タスクリストを作る上でこの「優先順位問題」は避けては通れません。とりあえず、「正しい」優先順位などないのだ、と理解しておけば今のところは十分でしょう。

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