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タスク管理の目指すもの/コマンドラインの静かなる執筆/断片的な思いつきの扱い方

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/07/22 第458号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。 毎度おなじみの方、ありがとうございます。

7月18日に起きた京都アニメーションの放火事件は、ほんとうに痛ましいものでした。私自身、京都に住んでいるということもありますが、それ以上に京アニの作品に何度も感動してきたので、痛ましさはいっそう強まります。事件で亡くなられた方に、哀悼します。

募金の動きも始まっているようです。

おそらくこれからもこういう動きは少しずつ出てくるでしょう。微力ながら、できることをやりたいと思います。

〜〜〜企画案が振ってくる〜〜〜

私にとって「企画案」は仕事における大切な種です。なんといっても、それがなければ本は作れません。しかし、あまりありがたみを感じないくらいには、ポンポン思いつきます。むしろ、多すぎて困るくらいです。

で、その思いつき方なのですが、たとえば言葉遊び的に思いつくことがあります。すでに発売されている本のタイトルやテーマを一部改変することで、新しいタイトルやテーマを作り、そこから中身を考えていく。そういう流れです。

あるいは、唐突に本の中身が、というよりもその本の冒頭にあたる部分が、まるで自動的なモノローグのように浮かんでくることもあります。もちろん、それは「私」が考えているのですが、意識的な感覚としてはむしろ語りを聞いているような気分になります。それくらい一方的に思いつくのです。

残念ながら、その速度があまりに速すぎて、モノローグのすべてをメモすることはできません。せいぜい最初のフレーズを書き留めるか、論旨をまとめる程度です。で、そうしたメモを後から見返して、中身を拡充していく。そういう流れを取ります。

日常生活をしていると、上のようなパターンや、おそらくそれ以外のパターンからも、ぱたぱたと企画案を思いつきます。街中でティッシュ配りをしている人に遭遇するよりも高い確率かもしれません。

しかし、いくら企画案を思いつくからといって──そして、思いついた瞬間はすごく面白そうに感じるからといって──、そのすべてに着手するわけではありません。

そんなことをしていたらいくら時間があっても足りませんし、そもそも二週間くらい経つと、「これの何が面白かったんだろう?」と疑問を持つことも珍しくないからです。

執筆作業は数ヶ月にわたるのですから、その期間中「面白い」と感じ続けていられるようなものを、種の中から選別したいものです。むしろ、だからこと、私は企画案をたくさんメモしているのでしょう。

〜〜〜ややこしい機能〜〜〜

R-styleの過去記事まとめを作っていて、そういえばScrivenerに関してはver.2の記事ばかりで、ver.3についてはほとんど書いていないな、と気がつきました。

ver.3は、ver.2と共通する部分があるものの、けっこう変わっている点もあります。特に、compile周りがかなり変わっています。

これは一度しっかり記事を書いておいた方がいいなと思いつつ、そうやって書くためには、まず自分がcompileの全容を押さえる必要があるのですが、これがなかなかしんどいのです。

特にver.3になってから、自作の電子書籍をScrivenerで作っていないので、なんとなくはわかっていても、なんとなくしかわかっていない部分が多々あります。

というわけで、記事を書くことを視野に入れつつも、まずは自分の本の原稿を完成させるところからですね……。

〜〜〜うれしいレビュー〜〜〜

先日、『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』に、新しいカスタマーレビューを頂いていることを発見しました。6件目のカスタマーレビューです。

この本は3年前の2016年に出版されています。本が古くなるほど新しいカスタマーレビューがつきにくい傾向を考えれば、こうして新しいレビューをつけていただけるのは本当に嬉しいものですし、ありがたいものです。

やっぱり、時間が経っても読めて、しかも何かしらの価値がある本を書いていきたいところです。

〜〜〜飲酒と執筆〜〜〜

たまたまTwitterで話題を見かけたので、アンケート機能を使ってみました。

という選択肢で合計28票が集まり、その分布は以上の通りとなりました。

私に関して言えば、「書こうと思えば、いくらでも文字は湧いてくるが、プロダクトとしてはろくなものにならなのでやらない」くらいでしょうか。選ぶとしたら「できない」になるでしょう。

さて、皆さんはいかがでしょうか。

〜〜〜ほっといて〜〜〜

どの分野なのかは知りませんが、「ラテマネー」という言葉があります。自動販売機とかスターバックスとかでコーヒーを飲むお金は、一回あたりは少額とは言え、それが積み重なるとけっこうな金額になる。だからそれを止めれば、ぐんと節約になります、みたいな概念だと思います。別にコーヒーに限らず、こういう出費ってありますね。

で、もちろんこれは合理的な話ですし、各々が自分の判断で「ラテマネー」を削減するのは結構ですが、あたかもスタバでコーヒーを飲んでいる人間が情報弱者であり、合理的思考を欠いた愚かな人間であるかのような文脈で話をされると、さすがに「ほっとけよ」という気がしてきます。

何に価値を見出すのかは、人それぞれですし、もっと言えば人は「無駄遣いする」自由を持ちます。自分の物差しで、人のお金の使い方を「下に見る」のは、お節介を通り越した別の何かでしかありません。

〜〜〜新しいことを「とりあえず」始める〜〜〜

R-styleの過去記事活用と共に、このメルマガの過去記事も再利用というか、再活用しようと目論んでいます。

昔のメルマガから何か原稿を選び出し、それを整えたり膨らませたりして、noteに投稿する。でもって、値段をつけて売る。そのような「ラインナップ増加」作戦です。

もともと素材というかストックがあるので、完全な書き下ろしに比べれば苦労は小さいですし、時間が経っても読まれ得る価値を持つ文章を掘り起こすことには、それなりに意義がありそうです。

で、前々からそういうことをしようかという思いはあったものの、結局一度も着手しないままでした。もちろん、他にやることがあったからですが、理由はそれだけでなさそうです。

その理由を、自分なりに分析してみると、「手順」がはっきり定まっていないからではないか、という仮説が出てきました。

つまり、漠然とやりたいことは見えている。Evernoteには過去のメルマガ原稿がすべてあるし、アウトプット先のnoteにはアカウントが作ってある。この二つをつなげばいいだけだ。しかし、具体的にそれをどう進めていけばいいのかは見えてない。決まっていない。だから、取りかかろうという気持ちが芽生えにくい。そういう構図です。

ここでGTD的な考え方であれば、達成したい状況をプロジェクトとして捉え、そのために必要な行動を列挙する、というアプローチになるでしょう。これはこれで合理的なやり方だと思います。

しかし、私の目の前には選択肢が多すぎました。プロジェクトを達成するために取り得る行動の幅が広すぎたのです。正直、それを絞り込んで、一つひとつ検討していくだけで日が暮れそうです。

そこで、いったん難しいことは考えずに、「メルマガ切り出し用リスト」を作るところから始めました。困難は分割せよ、の教えです。

しかし実際は、この段階でも「そのリストをどこに作るか」「書き留め方はどうするのか」という選択が発生します。

・Evernoteに作る
・Evernoteにノートリンクの形で作る
・Dynalsitに項目名で作る
・Dynalistに項目名+原稿で作る
・Ulyssesに原稿を集める
・Scrivenerに原稿を集める

当然のように、作業工程全体のデザインはこの段階の決定によって変わってきます。すさまじい数の組み合わせです。それらをすべて見通すことなど、人の力では到底不可能でしょう。これがナチュラル・プランニングが持つ限界です。

だから、「とりあえず」どこかのツールを選択し、使い勝手を見極めながら、徐々に適切なツールを見出していく、というアプローチが有効となります。

使っているうちに問題も見えてくるでしょうし、それに合わせて使い方を変えていけば最適化が進みます。インクリメンタルに環境を改善していくことを前提に、「とりあえず」始めてみる。

そういうやり方で取り組もうかと思います。

〜〜〜書店のランキング〜〜〜

ひさびさに大きな書店にいくと、「実用書ランキング」コーナーがありました。そこで堂々の一位を飾っていたのが、「すごく効率的に勉強できる方法」を解説した本です。

おそらく、勉強をしたいという気持ちはあるのでしょう。あるいは、勉強しなければならないという切迫感があるのかもしれません。だから、やるにしても、効率的に済ませたい。そんな気持ちが想像できます。

もちろん、通過すればそれでOKな資格試験の勉強なら効率性の確保は重要課題かもしれませんが、何かを学ぶというのは、基本的に非効率さを含むものなので、私としては(ほとんど逆張り的に)「時間のかかる勉強法」というのを書いてみたいものです。

という風に、企画案はポツポツ生まれてきます。

〜〜〜アレクサの天気予報〜〜〜

Alexaに今日の天気を尋ねると、「○○市の今日の天気は、雷雨です」と答えてくれました。その答え方が妙におかしかったのです。

おそらく人間の天気予報士なら、その「雷雨」には独特の感情が込められていたはずです。なにせ、あまり起きない現象ですし、日常生活にも支障が生まれます。注意を喚起する必要すらあるでしょう。

でも、Alexaは、「今日の天気は、晴れです」とまったく同じテンションで、雷雨を告げてくれました。なるほど、こういうとき人は、「機械的」だと感じるんだなと、我ながら関心した次第です。

〜〜〜見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

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書物の変遷と読書の変容。さらに両者の織りなす記憶という人間精神の多様ないとなみを、東西の知の歴史に重ね合わせた綺想の文化史。
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 分析思考の限界を超える「本質直観」とは何か。世界的経営学者と現象学の泰斗が教える、本物の教養。
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 五感の新たな活用を通して世界をとらえなおし、社会の改革をめざした人々。盲学校の誕生、おならを芳香にする薬、18世紀式“アロマテラピー”、ゾウ肉やネズミ肉など珍奇な肉料理が流行したわけ…。さまざまな試みや社会現象と、その背後にある思想を見る。
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〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. はじめて取りかかる物事があるとき、どのようなステップを取られますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2019/07/22 第458号の目次
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○「タスク管理の目指すもの」 #BizArts3rd
 タスク管理とその基準について。

○「コマンドラインの静かなる執筆」 #物書きエッセイ
 最近使い始めたSpacemacsと、そこから考えたこと(常体です)。

○「断片的な思いつきの扱い方」 #知的生産の技術
 どこにも所属したい断片的な思いつきはどう扱えばいいのか考えます。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

○「タスク管理の目指すもの」 #BizArts3rd

ブライアン・クリスチャンとトム・グリフィスの『アルゴリズム思考術』は、プログラミングを支えるアルゴリズム的な考え方が、私たちの生活でどのように役立つのかを提示してくれる面白い一冊です。

この『アルゴリズム思考術』では、章一つを使って「スケジューリング」問題が検討されています。最適なスケジュールを組むには、どのような思考法が役立つか。

たとえば、以下のような「戦略」が挙げられています。

・再早納期優先…もっとも納期が近いものから着手する
・ムーアのアルゴリズム…もっとも納期が近いものから着手し、途中予定が間に合いそうにないと思ったら一番処理時間のかかるものを「廃棄」する
・処理時間順…作業時間が短いものから取りかかる

このうちのどれが「最高」の戦略であるのかを議論することに意味はありません。著者らはこう述べています。

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 目標を明確にせよということだ。評価基準がわからなければ、どんなスケジュールがよいのかもわからない。
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たとえば、〈再早納期優先〉は、最大納期遅れ時間を最短にするための「最適」な戦略です。つまり、お客さんを待たせることになるにせよ、その待ち時間が一番短くなるように最適化されたスケジューリングということです。

〈ムーアのアルゴリズム〉は、間に合わない案件の個数を最小化するための戦略で、〈処理時間順〉は、達成した案件を最大化するための戦略です。

もしあなたが、なんでもいいからたくさん作業を終わらせた人が評価される職場で働いているとしたら、取るべき戦略は〈処理時間順〉となるでしょう。

逆に、お客さんからのクレームが少ない人が評価される職場なら、〈処理時間順〉はむしろ悪手で、〈再早納期優先〉が最適となります。

このように、目指すべき地点が違っていれば、「最適」な戦略もまた変わってきます。だからこそ、目標を明確にすることが大切なのです。

でもって、これは「スケジューリング」よりも広い「タスク管理」についても同じです。というよりも、「管理」という行為全般において言えることです。管理には、基準が必要なのです。

■管理と基準

何かしらの「管理」を始める状況を考えてみましょう。世の中には、ノウハウが溢れているので、管理のためのテクニックはいくらでもみつかるはずです。

そのテクニックを一つ実践したとしましょう。はたしてそれで、対象が管理できていると言えるでしょうか。

もちろん、言えるはずがありません。あまりにも情報が不足しています。せいぜい言えるのは、管理できているかもしれないし、できていないかもしれない、ということくらいです。それを判断するためには、やはり「基準」が必要なのです。

つまり、「管理ができているか」を判断するためには、「どういう状態であれば管理できているといえるか」という基準がなければなりません。管理できているかどうかは、管理テクニックが用いられているかどうかではなく、どういう状態になっているのか(どういう状態が維持されているか)によって判断されるのです。

■基準についての裁量

もしこれが、職場内のタスク管理の話ならば、そう難しいことではないでしょう。たいていの企業には、望ましい作業の進め方や、優先すべき事柄が(暗黙的であれ)確立されており、それに合わせて「管理」していけばいいだけです(※)。
※もちろん、そんなものは知ったことか!というワイルドな管理もありえます。

しかしこれが、人生全般に及ぶタスク管理の場合(言い換えれば、セルフマネジメントの場合)、そんな風にはいきません。自分でタスク管理の基準、つまりどういう状態を目指すのかを決定する必要が出てきます。

おそらくですが、長らくタスク管理で試行錯誤している人は、自分なりの目標というか「こういう状況になっていれば、管理できていると言える基準」をお持ちでしょう。しかし、始めたばかりの人がそのような基準をいきなり持つのは難しいかもしれません。かといって、基準なしでは、管理できているかはわからないのです。実に困った話です。

注意したいのは、他の人が「最適」だと言っている(あるいは「最高」だと言っている)方法を実践し、そのままその人の基準(目指したい状態)までも一緒に受け入れてしまうことです。知らない間に、その人の価値観に染まっている状況と言えるかもしれません。

そうなると、がんばって管理的手法は実践しているが、実際自分的な管理はまったくできていない、というなかなか困った状況が訪れます。これは避けたいところです。

■さいごに

どうすれば管理できていると言えるか、どのような目標を持つか、どういう状態を望ましいと考えるか。

こうした基準を持つことは、そのまま「自分の人生をどう生きるか」にも通じます。ぜひともじっくり考えたい事柄です。もちろん、実践しながら考えるのもアリでしょう。

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