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コラボしようぜで始まったけどまだ中身も決まっていない本の連載

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突然の「コラボしようぜ」というツイートから、いきなり始まってしまった本の企画を連載していくマガジンです。 https://scrapbox.io/kuratakabooks/ もっと読む
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#出版

第二十五回:バーベル戦略で行こう!

第二十五回:バーベル戦略で行こう!

では、どうやって話題を作ればいいのか? —— セール以外で。

前回は、463のゲッツーくらい綺麗な流れで話を振っていただきました。セールもなし。炎上もなし。それで話題を作る方法?

いいでしょう。本来は3万6800円の限定セミナーだけで教えている内容ですが、今回はこっそりその方法をお教えします。本当に貴重な内容なので、心の石板に刻んでおいてください。

○○を、話題になるまで続けること。

○○

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第二十一回:新しい値付けへ向けて

第二十一回:新しい値付けへ向けて

前々回で「セルパブではほとんど参考になりません」とばっさりと書いたのには、もちろん理由があります。セルフパブリッシャーに勇気を持ってもらいたかったのです。

◇ ◇ ◇

前回鷹野さんは、以下のように書かれました。

小説ならどうか? こちらももちろん、同ジャンルの商業出版の値付けを意識せざるを得ません。たとえばライトノベルなら、商業出版で一定以上の品質である(はず)の文庫本が、600円~700円

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第二十回:定価? そんなものはない

第二十回:定価? そんなものはない

前々回、原稿を書きながら「ここから先を説明すると、ちょっと長くなりすぎるな……」と思った私は、そこでぶった切って倉下さんへぶん投げるという荒技を仕掛けました。往復書簡的連載ならではの強引さ。今回ばかりは、素直に打ち返していただきました。ふふふ。

とはいうものの、冒頭のこの一節で、私は盛大に笑ってしまいました。

まず、前回鷹野さんが丁寧に解説してくださった商業出版での本の値付けは、セルパブではほ

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第十八回:商業出版ではどうやって価格を決めているのか?

第十八回:商業出版ではどうやって価格を決めているのか?

私は前回、マーケティング・フレームワーク4Pのうち「Promotion(販売促進)」と「Product(製品)」の2つに関することを書いた時点で、倉下さんへバトンを渡しました。普通の天邪鬼なら、残り2つを放置して別のことを書くでしょう。その場合、次の私のターンで残り2つを書けばいいだけの話です。

「あ、やはりそう来たか」と思った私は、思わずこれに反応してしまいました。あとから考えてみたら、こんな

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第十七回:人の居る場所に、無料で読めるものを展開する

第十七回:人の居る場所に、無料で読めるものを展開する

皆さん、ご存じでしたか。真なる天の邪鬼というのは、「あっ、こいつ天の邪鬼だから、予想とは違う行動をするな」と思われたときは、むしろ素直な行動を取って、さらに予想を裏切るものです。

というわけで、前回の鷹野さんの話を受けて、マーケティングの残りのP二つについて書いてみましょう。

◇ ◇ ◇

まず4Pの全体像を覗いておきます。

箇条書きではなく、円の上に並べたのには実は理由があります。

この

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第十六回:認知がまったくない段階でもできる施策とは?

第十六回:認知がまったくない段階でもできる施策とは?

「コンテンツの無料と有料をどのようにコントロールしたらいいのか?」という倉下さんの問いに対する私の答えは、書き手の「認知度」と、コンテンツを伝播するメディアの「固さ」に依って異なる、というものでした。それに対し倉下さんからはさらに、以下のような問いが返ってきました。

では、書き手の「認知度」がまったくないか、あるにしてもごくわずかだとして、その人が「電子書籍」を売っていきたいとしたら、どんな施策

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第十五回:経験財のバイパスルート

第十五回:経験財のバイパスルート

前回では、鷹野さんが「経験財」「探索財」「信頼財」の三つを提示してくださりました。ここでポイントとなるのは「財」というキーワードです。

「財」とは経済学において、何らかの効用を持つものを差す言葉ですが、そのうち需要に対する供給にギャップがあり、価格が形成されるものを「経済財」、供給が無限にあり価格が形成されないものを「自由財」と呼びます。

現代のネット状況を眺めてみると、時間つぶしのためのコン

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第十四回:中身を読んでみないと価値が判断できないのに

第十四回:中身を読んでみないと価値が判断できないのに

前回の締めで、倉下さんの悪そうな笑顔が脳裏に浮かんで離れなくなってしまった鷹野です。なんというバトンの渡し方をしやがりますか。天の邪鬼属性Sの倉下さん、ちーっす。

往復書簡的に進んでいる当連載ですが、倉下さんの投げ返しがあまりに速く鋭いため、受け取りまた投げ返すのが大変です。まあ、私はM属性なので、これはこれで楽しいのですが。引き続きのんびり、マイペースにいきたいと思います。

◇ ◇ ◇

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第十一回:広く伝播しただけでは稼げない問題

第十一回:広く伝播しただけでは稼げない問題

前回は、鷹野さんが重要な指摘をしてくれました。簡単に言えば、「無料かつ柔らかいコンテンツの方が広く伝播する」ということです。これは広くインターネットの世界に見られるたしかな現象でしょう。

しかし、広く伝播しただけでは書き手や出版社は食っていけません。何かしらの手段を用いて稼ぐ必要があります。でもってこのことは、「コンテンツの価値とは何か?」という別の、それでいて関係する根深い問題をも提起します。

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第十回:無料かつ柔らかいほうが広く伝播する

第十回:無料かつ柔らかいほうが広く伝播する

いろいろあって更新が遅くなりました。すいません。

さて私は前回、出版メディアを「お金」と「固さ」に分類したわけですが、「固さ」という軸に倉下さんが驚いてくれたのが嬉しかったです。やった!

問題は、「だからどうだっていうんだ?」という話になるでしょう。英語で言えば ”So what?” です。さきに結論を言うと、これは「コンテンツの流通しやすさ」に強く関わってくる話であると、私は思っています。

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第八回:出版ってなんだろう?

第八回:出版ってなんだろう?

デジタル出版を視野に入れることで、近代で固まりつつあった「出版」のイメージをいったんリセットして、再出発する。
第七回:古くて新しい出版|倉下忠憲|note

近代になって高度に発達した産業としての出版は、本来「出版」という言葉が指し示す範囲の一部でしかない、と言い換えることもできるでしょう。事業として行うことだけが「出版」ではありません。誰かに読んでもらうことを目的として書(描)かれているなら、

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第七回:古くて新しい出版

第七回:古くて新しい出版

解体を続けましょう。今回解体するのは、「マスメディアの絶対性」です。

まずは、時計の針を戻します。パピルスの巻物に、葦のペンで文字を書く。っと、戻しすぎました。さすがにこれは出版ではありませんね。もう少し調整して、グーテンベルクが革命を起こした1600年代のヨーロッパあたりとしましょう。

アレッサンドロ・マルツォ・マーニョの『そのとき本が生まれた』は非常に面白い本で、グーテンベルクその人ではな

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第六回:だんだんふえてくなかまたち

第六回:だんだんふえてくなかまたち

「ドラゴンクエスト(以下DQⅠ)」というゲームをご存知でしょうか。まあ、ほとんどの人にとっては愚問でしょう。家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」に登場した、初のオリジナル・ロールプレイングゲーム。発売は1986年。30年以上経ったいまなお続編が作られ続け、スマートフォンでもリメイク版が遊べるという、日本のゲーム史上に燦然と輝くシリーズです。

ただ、私にとって一番思い出深いのは、2作目の「

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第五回:「これより、オペを開始する」

第五回:「これより、オペを開始する」

二つの神話を解体していきましょう。

「天才の個人性」と、「マスメディアの絶対性」です。

ジョシュア・ウルフ・シェンクの『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』は、面白い事実を突き止めています。その事実とは、私たちが認識する「天才」は、絶対孤高の存在などではなく、むしろペアとなる存在との相互作用でその力を発揮している、というものです。

どちらか1人がいつも岸に立っていれば、もう1人が水

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