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『RISC-V原典』レビュー

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『RISC-V原典 オープンアーキテクチャのススメ』

デイビッド・パターソン (著), アンドリュー・ウォーターマン (著), 成田 光彰 (翻訳)

RISC-V(リスク・ファイブ)ってご存知ですか?
なんとかファイブってなんだか戦隊ものみたいな名前ですが、これはコンピューターのCPUとかが使う命令セット・アーキテクチャ(ISA)の名前です。

それも、最新で最高で最速で最小で(おそらくは)最適の。そしてなんとオープンソースです。

普通の伝統的なCPUの命令セットはCPUのハードメーカー(インテルとかとか)が知的所有権を持っていて、そのまま別の会社が使ってCPUを作るわけにはいきません。つかうとしてもものすごくお高いライセンス料がかかってしまうので、CPUを作れるぐらいのメーカーがあったとしても、別の命令セットを新たにつくる必要がありました。

この、CPU(プロセッサ)に実装された命令(つまり機械語ですね)のセットがコンピュータに命令するすべてのソフトウェアの基本になります。その機械語を組み合わせていって、いろいろな機能を実現して、ソフトウェアやアプリケーションが作られて、私たちがその機能を利用するわけです。

その基本の基本の大本が命令セットアーキテクチャ=ISA(Instruction Set Architecture)なわけですね。

そして、今までのISAの多くは1970~80年代に策定された基本命令に、拡張に拡張を重ね、膨張に膨張を重ねてお化け👻のように巨大化してしまい、複雑怪奇になってしまっています。例えばインテルさんのx86系の場合は、1978年に登場した当時はたった80個の命令セットだったものが、2015年には1338個(インテル自称では3600個だそうです。まじ!?)にまで拡張されています。もう時代遅れで使わない盲腸のような命令ももちろんあるのでしょうが、それもごっそり内臓していなくてはいけない歴史的な事情もひきずっているのでしょうね。

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そんなにたくさん命令があったら、とても覚えておくなんてことできそうにありませんし、実際学習コストは年々多くなってしまい、もはや人間が機械語を直接書くなんてことはできずにもっぱら機械に翻訳してもらうばかりだそうです。(それによって効率がまた犠牲になったりとかとか…)

で、RISC-Vです。

こちらは、こうした巨大企業の過去からのしがらみを一切捨て、新たに設計されたクリーンなISAで、小さなCPUから大きなCPUにまで対応していて、とてもシンプルで綺麗な設計になっています。

実際、命令セットはこれだけ。

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たった2ページのリファレンスカードに納まってしまいます。

シンプルで、小さいこと。これはコンピュータの世界ではとても大事。それだけ実行速度も速くなります。最初に書いた、「最新で最高で最速で最小」というのはそうしたわけですね。(そして、おそらく「最適」なのです)

ちょっと余談になりますが、オープンソースで、便利で軽くて速いISA。これに飛びついたのが中国・深圳あたりのハードウェアスタートアップさんたちです。今まで高~いライセンス料を払わなくては独自にCPUを作れなかったのが、オープンソースのRISC-Vのおかげで、ばりばり独自のCPUを作れるようになりました。ここ数年で爆発的に進歩した小型で安いデジタル機器の心臓部分には、たいていRISC-Vが採用されています。興味がある方はしらべてみてください♪

さてさて、ガガガとRISC-Vのすごさを(これでも一部だけですが)書いてみましたが、そうした内容はこの本の冒頭、第一章にがっつり書かれています。(他のCPUの歴史なんかも書いてあっていろいろ興味ぶかいです)

その後、機械語の基本からアセンブリ言語、さらに拡張命令等々まで詳細の説明がてんこもりに入っていて、『原典』とされる内容はばっちり。

この本を読めばRISC-Vを使いこなすのは十分でしょう。下の賛辞にあるとおり、「学生にとっても実務家にとっても完璧なリファレンス・ガイド」だと思います。

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RISC-Vを使うなら、持っていてソンはないというか持ってなきゃダメでしょこれ。というバイブルと言える本ですね。当然ですが超おススメ!!

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その他、この本に興味がある方はこんなのも興味ありそうとおもう私的レコメンド本をぺたぺたしておきます

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順不同、どれもコンピュータやハードに興味あるかたにおすすめです♪

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