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『魔女の子供はやってこない』レビュー

『魔女の子供はやってこない』表紙

『魔女の子供はやってこない』

矢部嵩(著) / 小島アジコ(イラスト)

💀

ホラー、苦手なんです。いや、まじで。ちょー怖いじゃん。
わざわざ怖いものお金払って読んだり観たりするのってどうなの? マゾなの??

なんて、思っていた時期がワタシニモアリマシタ。
けれど、前回紹介した京極夏彦先生の『地獄の楽しみ方』で、楽しくないと思うのは読み手が楽しいと思う能力がたりないから。苦手な本も楽しめる能力があれば、その分世界が広がる。『読まず嫌いはもったいない』ということを教わったもので、自己の可能性を広げるべく、恐る恐る手に取ったのがこの本なのです。

ま、表紙可愛いし、魔法少女ものっぽいし、だいじょぶよね。
……なんて、思っていた時期が(以下略)

いんやあ、コワイ。というか恐ろしい、というか、なんだろう、もっと言うと、気持ち悪い……。そう、めっちゃ気持ち悪い><
でも、これ、決して楽しくないわけじゃないんですね。気持ち悪いのが突き抜けると楽しくて面白いなんて……、今までにない新鮮な感覚です。あたらしい世界のとびら開けちゃいそう。ドキドキw

お話は、小学三年生の気弱な女の子、夏子が偶然ゴミ捨て場で拾った、どうやら魔法のステッキらしい棒状の物体を、棒に書かれた住所(げろ色のマンション六〇六号室)に、友人たちと届けに行くところから始まります。
その訪問に驚いた魔女は、夏子の腕の骨を折り、さらに友人を射殺(!)
そして他の友人までもうっかり毒殺(!?)
さすがに魔女も悪いと思ったのか、生き返らせてほしいと願えば、生き返らせてくれると言います。
そこから……(いえ、その前からもだいぶ書かれてはいたんですが……)吐き気を催す血みどろの大混乱がはじまり、さらにバイオレンスはどんどん加速度を増していっていやはやうえっぷ(吐き気)
読んでいてほんとに気持ち悪くなってきます。でも、これ、褒め言葉です。気持ち悪いけど面白い、やばい。こんな感覚初めて。ドキドキw

とまあ、そういった感じのお話です。
この後も予想を斜め上に裏切る展開と、グロい描写と、小学生女子らしい狂気とみずみずしい感性の視点・表現がごった煮されて、えもいわれぬ腐臭が漂いまくります><
いやほんと、褒めてるんですよこれw

ホラーに慣れていないから新鮮なのかも。と、最初は思ってました。でも、通して読んでみると、やっぱりグロイだけでなくスゴイ作品だということがわかります。グロキモい要素に対する嫌悪感をあえて味付けにつかっている(そんな味イヤだけど><)、悪酔いしそうな読みにくさが狂気じみた世界観をうまく表現しているし、唐突なセリフ回しも夏子視点と思えば納得(誰のセリフだかしょっちゅうわかんなくなりますw)。発想や描写が異次元すぎて面食らうけれど、実は物語構成は王道を踏み外していません。リリカルな部分もしっかり読ませます。

コワイ、キモイ。けれど、なぜか面白い。
自分の中にもある残虐性や狂気を容赦なく引きずり出されて、実はこんな恐ろしいものを面白がれるなんて。読んでいて自己認識が変容していく、ワタシの新たな可能性が感じられる、やっぱりなんともスゴイ作品です。
こういうのはホラーでないと表現できないはず。なるほど、ためになりました。
というわけで、これを傑作と呼んでよいのか、他をあまり知らないものでよくわかりませんがw ホラーとしては最高に狙いばっちりな作品ではないでしょうか。

グロ耐性のある魔法少女好き(そんな人いるの?w)の方に特におすすめですw
ただ、あんまりお子様にはおすすめできないかも?w
表紙のかわいいイラストに騙されないよう、くれぐれもご注意ください><

💀💀💀

#矢部嵩 #小島アジコ #ホラー #らせんの本棚

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