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『地獄の楽しみ方』レビュー

文庫版 表紙

『地獄の楽しみ方』 / 京極夏彦

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小説家・京極夏彦さんが、17歳の高校生たちへ語った、『地獄のようなこの世を楽しく生きていくための「言葉」徹底講座』です。

2019年に出版された黄色い表紙のソフトカバー版『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』が文庫になって再登場。電書版もでてますね、これはほんと、多くの人に読んでほしい本なので、文庫大歓迎! なのです。

こちらはソフトカバー版 表紙


さて、その内容は……。

さすがは「言葉」のプロなのです。
最初に、『僕がこれから話すことは、役に立つことではありません』などと言いながら、めちゃくちゃ役に立つ深い内容ばかりじゃないですかw
それもとても面白い語りのまま、ごっそりと詰まっています。

まず、「言葉」というものは、そもそもが「欠けている」ものである。という大事な本質を解説してくれます。

曰く

『言葉は、この世にあるものの何万分の一、いや、何百万分の一ぐらいしか表現できないものなんです』

京極夏彦先生のありがたいお言葉

十分の一でも百分の一でもなく、いきなり万以上分の一というオーダーの低解像度スペックな表現ツールであるという「言葉」。

あらゆる事象や人の内面など、カオスでアナログな世界をデジタルな言葉に符号化しようとしても無理な話で、カオス情報を100%完璧な言葉に変換することなど、たとえ何万言ついやしたとしてもできっこない。
言葉で伝えるにしても、「欠けている」内容の言葉を受け取った側が、欠落部分を勝手に想像して補完してしまうものである。と。

そもそもが大部分欠落してしまっている情報を想像で補完しているのだから誤解が発生しないはずもなく、不幸な行き違いや誤解の積み重ねによって、喧嘩やら、はては戦争までが発生してしまう……。

特に、わずかな文字数で情報を伝えようなんていうSNSの言葉が誤解されないわけがない。炎上しないはずがない。というわけです。

かつて『話せばわかる』と言ったのに、わからずやに問答無用と殺されちゃった総理大臣さんの例もありました。
たとえひざを交えてゆっくり話をしたところで、理解してもらえるかどうかは受け取り手しだいなのが、言葉であり、この世界(の人間たち)である。と。

言われてみればその通りです、ワタクシもかつて、うっかり言葉の力を過信したあげく、言葉を尽くして相互理解に挑戦して消耗したり、炎上に巻き込まれ、つらい、それこそ地獄のような日々をすごしたことがありました。

今後、SNSや情報ツールもさらに進化していくはずで、うっかり不用意な「言葉」が拡散されてしまえば、欠けた情報が勝手に悪意に補完されてしまうことだってあるでしょう。受け手の勝手な理解(誤解)にたいして、『そんなこと言ってない』なんて言っても遅いわけです。

まあ、そんな、『地獄のようなこの世』なわけですが、言葉にはもちろんそうした欠点だけではなく大きな利点もあり、この人類の文明を作り上げてきたとても優秀なツールでもあるわけです。(良い点もいっぱい本書にかかれてますよ!)

その使い方を言葉遣いのプロフェッショナル、京極夏彦先生から教えていただける、『地獄のようなこの世を楽しく生きていくための「言葉」徹底講座』が、役に立たないわけがないと思うのですw

地獄をどうやって楽しく生き抜くか、は、やっぱり不完全である『言葉』をどう使いこなしていくかにかかってくるわけです。まあ、そのあたりはぜひ本書を読んでみて下さい。

講演の対象は17歳の高校生たちですが、SNSを使いこなす小中学生から、やっぱり言葉からは逃げられない(?)大人たちにまで、言葉を使う人間みなさんに絶対おすすめの本です。必読ですよー☆

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ソフトカバー版:

文庫(電子書籍)版:

#京極夏彦 #らせんの本棚 #言葉 #おすすめ本

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