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『ゲームウォーズ』レビュー

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『ゲームウォーズ』(上)/(下)

アーネスト・クライン (著), 池田 真紀子 (翻訳)

山本弘さんのBISビブリオバトル部シリーズ④『君の知らない方程式』で紹介されていて気になった本です。

主人公は今より少し文明が進んだけれどエネルギー危機を上手く克服できなかったディストピアな未来に住む、社会の最下層の少年ウェイド。石油が枯渇しかけているこの世界では、ほぼすべての娯楽がOASYS(オアシス)というネットゲーム、バーチャルリアリティ世界で行われていました。(リアルじゃ移動するのにもエネルギー要りますからね。)過去のバーチャルじゃないゲームのすべてが仮想世界でもできるように移植され、仕事や教育などもオアシスのVR環境で出来る、究極のテレワークが実現できている、そんな未来です。

主人公のウェイドは何しろ最下層の住人ですからとてつもなく貧乏です。早くに両親を亡くし、がめつい叔母さんとトレーラーハウスで生活しています。日々の生活は生活保護の食糧チケットだより。(それも叔母さんに奪われています)ゴミ捨て場から拾ってきた旧式のパソコンを修理して日銭をかせぐ、そんな生活で、彼の現実には夢も希望もありません。

ただし、オンラインで受講するオアシス内の学校でだけは違います。バーチャルな世界のアバターなら、どんなに貧乏でも他の生徒と特に差があるわけではないので、平等に勉強もできるし、無料で遊べる範囲ならばVRのゲームをすることもできます。オアシスはそもそもゲーム環境ですから世界のすべてがゲームなのです。学校もそのゲーム世界宇宙の中のいち惑星にあります。ほかの惑星に宇宙船やテレポートで移動することもできるのですが、それは移動料金が必要なので、友達が宇宙を飛び越えて冒険旅行をしているのをウェイドは羨望の目でみているしかありません。

そんな時、オアシスの開発者であり億万長者のハリデーという人物が亡くなります。その遺言が、秘密の卵をオアシスの中に隠した。いちばんにその秘密を解き明かしたものに自分の財産すべてを譲る。というもの。あっという間に世界中がハリデーの遺した、ゲーム開発者がゲームの中に仕込んだ秘密要素=イースターエッグ探しに取りつかれます。もちろんウェイドも。です。

このハリデーは1980年代に青春を過ごした根っからのギーク。8ビット時代のパソコンやファミコンなどのゲーム機、ゲームソフト、テーブルトークRPG、特撮、アニメなどの超がつくオタクだったようで、彼の隠したイースターエッグ探索はそうしたオタク知識の総動員が必要なのでした。

いやはやもうその内容がスゴイのですw

古い80年代のゲームが完全再現されているゲーム内のゲームを完璧にクリア(ノーミスとかいうレベルではなく、スコアがオーバーフローしてバグるところまで)するだとか、某オタク映画のセリフをパーフェクトに演技付きでやらないといけなかったりだとか、もう実技付きのカルトクイズというかんじです。

とんでもない大金のかかった宝さがしに、悪の組織も、賞金をもとにオアシス運営会社を買収して世界全体をのっとろうとたくらむ企業も登場します。そんな組織の幹部がVRヘッドセットをつけてカルトゲームをしている姿を想像するとなんだかちょっと笑えますが、みなさん真剣です。人殺しも辞さないほどに。

主人公のウェイド少年はひょんなことから第一の鍵を手に入れ、この世界を巻き込んだ争奪戦のトップに躍り出て一躍超有名人になってしまいます。作中でも何度も出てきますが、某チョコレート工場の主人公並みの大躍進です。もちろん、彼の場合は運ではなくとてつもない努力(彼が生まれる前の時代の知識をひたすら勉強するとか、ゲームをしまくるとか)の結果ではあるのですが。

ゲームをめぐる冒険、謎解き、友情、恋愛、そして命を狙われる危機の連続、最期までぐいぐい読ませます。

特にオタク知識の洪水がものすごいw

この作者さんもそうとう好きなんでしょうね、ゲームの裏技やマニアックな情報は当たり前のように乱舞してますし、マグマ大使やらキカイダーやら、ガンダムにウルトラマンにメカゴジラなど、日本の特撮・アニメがわんさかでてきてめちゃくちゃにぎやかですw ゲーム内でキャラが巨大ロボに乗り込んでバトルできちゃうんですよw そういうVRゲームあったらやりたいひと多いんじゃないかしらん?
お金持ちになったウェイドが宇宙を旅するのにつかうのはカウボーイビバップのやつだし、日本版スパイダーマンの巨大ロボット・レオパルドンがこれまた重要な役ででてくるのには私もVRゲーミングチェアから転げ落ちそうになりましたw
ほんっと、好きなんですねぇw
こんな話をアメリカ人の著者が書いているってのにもうびっくりですw

あの輝かしい時代を懐かしいと思う年配のオタクさんも、逆に新鮮で新しいと思う若いオタクさんも、PCやゲーム機大好きなギークさんもみんな絶対楽しめる、大コーフンできる話だとおもいます。

ただひとつ難点があるとしたら、邦題の『ゲームウォーズ』ですかねぇ。このダサさは80年代を狙ったものなのでしょうか?w
原題の ”READY PLAYER ONE” のほうがカッコいいと思うなあ。さもなくば「コイン イッコ イレル」とかねw

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