【小さな行動が大きな変化に。】〜やりたい仕事病にみるキャリア・カオス理論〜
こんにちはryoです。
試験勉強していると、よく目にする資料があります。
労働政策研究・研修機構が提供する「労働に関する総合調査資料」、通称JIL(ジル)資料です。
その資料シリーズNo.165に『職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査』があります。
キャリア理論とその応用についての資料です。教科書にあまり出ない学者先生の理論などもまとまっていて、とても勉強になりました。
その中でもとても面白かったのが、プライアとブライトの「キャリア・カオス理論」。クルンボルツの「計画された偶然理論」と繋がるところもあり、今まさに必要な考え方だと思いましたので、ご紹介いたします。
「やりたい仕事」ってなに?
ちょっと話は逸れますが、20代で転職について悩んでいた際に、榎本博明氏著『「やりたい仕事」病』を読みました。2012年初版の本なので、8年くらい前になりますね。キャリア・カオス理論を学んだ時、この本を思い出して、もう一度読んでみました。
簡単に言えば、10年先どうなっているか分からない時代に、「自分がやりたいこと」という観点でキャリアを考えるのはいかがなものか、という内容の本です。
JIL資料の中にも、「やりたいこと志向」という章があります。これは、もともとフリーターの就業意識として見出された傾向だったそうです。やりたいことがあったり、やりたいことを探すために、一旦フリーターとして働くという就業意識です。夢を追ったり、やりたいことを探すのはいいことですが、その結果、非現実的な考え方に囚われてしまい、生活に支障が出るのは問題です。
この場合、相談や内省する上で大切なことは、
①やりたいことをを追求するあまり、非現実的になっていないか
②やりたいことの根底にある本質的な欲求を明確にすること
③クライエント自身に現実的な選択を検討させること
という3つの観点です。
特に②やりたいことの根底にある本質的な欲求を明確にすること、これが大切なんじゃないかなと思っています。10年前に就活していた自分に今一番伝えたいです。
私は、小さい頃から本が好きだったので、「本を作る仕事、本に関わる仕事」をしたいと思って、大学生の時に就活をし、出版社へ入職しました。今は、出版社を離れて、このような人材系の仕事をしているのですが、今になって考えれば、「本を作る仕事」に就きたかったのは「自分の考えを表現して、それを発信したいという欲求」があったからなのだと思います。本が好きなのは変わらないのですが、発信する方法は本だけではなかったはずでした。そのことが分かったら、もう少し選択肢は広がっていたかもしれません。
ただ、やっぱり働いてみないと分からないし、社会人として経験を積んだからこそ気がつけた、ということなんだと思います。
榎本氏も『やりたい仕事病』の中で「目の前の仕事にまず全力を尽くす」ことを推奨しています。まずやってみるという行動の積み重ねが、今の自分を形作っていくのだと思います。
キャリア・カオス理論とは?
先が予測できない複雑な時代だからこそ、「目の前のことに全力を尽くすこと」「まずやってみるという日々の積み重ね」がキャリアの成功に繋がってくると思います。
キャリア・カオス理論は、数学のカオス理論を応用したもので、プライアとブライトが提唱しました。
「人は不確実な世界に存在しているという事実を受け止め、キャリアが偶然によって不規則に変化するという視点を持って、一人ひとりがそれぞれのキャリアを発展させていくことを推奨する」理論です。
キャリア・カオス理論では、人は複雑で予測が難しい世界に生きており、さまざまな制約を受けていると考えます。
この理論におけるキャリアの成功は、行動の制約に気付き、制約を適切にマネジメントして、偶然をチャンスとして活用することです。
キャリア・カオス理論を活用する上で、重要な視点は6つです。
①複雑性
キャリアは複雑で予測不可能であるという視点
②創発性
過去の経験は意味を作り出すという視点
③非線形性
小さな変化や影響が劇的な変化を生み出しうるという視点
④非予測性
偶然の出来事はキャリアに影響を与えるという視点
⑤フェイズ・シフト
キャリアの方向性については、外・内的な急激な変化を経験し得る
⑥アトラクタ
キャリア上、行動の制約を受けていると自覚する
理論の活用
この理論は、「キャリアにおける正解は1つ」という考え方に捉われているクライアントへ有効です。「やりたい仕事」に固執してしまってキャリアに支障が出ていると感じている方にまさにぴったりだと思います。
6つの視点で、まず自分のキャリアについて見直してみます。その上で、キャリアに制約を与えているアトラクタはないか探し出し、それを解消して、偶然を活用していくことが重要です。
アトラクタは、キャリアに関する誤ったこだわり、過去の経験から生じる不安や恐怖などが考えられます。これは、以前に紹介した論理療法の「イラショナルビリーフ(非合理思考)」を探し出すという過程に似ているかもしれません。
キャリアにおける正解は1つ、やりたい仕事は1つという考えは、アトラクタからきている可能性があります。なぜ思考が制限されているか、行動に制約を与えているものは何かをしっかり確認し、対処していきます。
私は、この6つの視点を意識する、6つの視点があるということを理解するだけでも、かなり有用だと思いました。
プライアとブライトは、「偶然や小さな変化が、大きな出来事を招き、それを俯瞰すると蝶の羽のようなパターンが見えてくる」というバタフライ・モデルで紹介しています。
バタフライ・エフェクトという言葉もありますが、小さな何気ない行動が、将来のキャリアに大きな影響を及ぼしうる、ということは個人的にも実感しています。
私は、キャリアコンサルタントの資格をとるために、資料を取り寄せたという小さな行動が結果的に、大きな変化に結びつきました。
みなさんもそんな経験ありませんか?
まとめ
私は、ドラマSPECがすごい好きなのですが、外出期間中、時間もあったので、久しぶりにもう一度見てみました。主演の戸田恵梨香はドラマの中でガラケーを使ってました。
スマートフォンの普及は2008年頃からなんだそうです。私は社会人になって、初めてアイフォンに変えたと記憶していて、だとすれば2011年、今から約10年前。今や、スマートフォンが当たり前の時代です。
ちょっと色々脱線しながらでしたが、キャリア・カオス理論は、10年先の予測も難しい、こんな現代社会だからこそ、役に立つ考え方だと思いました。
日々の小さな積み重ねや、小さな変化は、自分のキャリアにおいて劇的な変化を生み出すかもしれません。また、偶然の出来事がキャリアの成功に繋がってくるということもあると思います。6つの視点を意識しながら、目の前の事に全力で取り組む、これが大切なことなのだと思いました。
偶然とキャリアに関する理論は、クルンボルツの理論もご確認ください。
それでは、また。
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