【器のはなし】あえて人気のなさそうな器を紹介する 7寸・8寸・長角皿編

自分の持ち物を都合よく自慢できる企画の続編。
前回は↓

いくぞ!


明治前期染付山水図7寸皿

今回のラインナップで一番人気なさそうなやつ。前にも載せたことがあるのだが、きっとみんな忘れてるだろうということにして再掲。

やはりこの土の色。上質な上がりではないが、焼成温度が低かったのだろうと思われる。そのためにツヤツヤとして真っ白なものが出来ず、少しくすんでいる。ここがいい。透明感ある有田が都会人なら、これは田舎者だ。

田舎者の豪快さがいい。この筆遣い。迷いがない上に荒々しい。小学生男児の書き初めのような親しみがある。

私には伊万里ではないところで作られたんだろう、としか分からない。高台内が無施釉で、よく見ると牡丹餅抜けのようになっている。四箇所に支えを置いたのがわかる。それからもう一度表面を見ると、こちらにも四箇所小さな点ができている。重ねたんだろう。


江戸幕末染付竹林雀図7寸皿

江戸後期っぽく見えるけど〜明治前期っぽさもある〜から中間をとるか〜、で幕末ってことにしたけど、これどうなんだろう。形と描き方が江戸後期感あるんだけど、柄がっぽくない気がして。

松竹梅が見込みにあって、周りの絵付けもなんとなく地味だからあんまり人気なさそうだなと思っている。でもちゃんと見ればかわいい。

縁の絵付けは三分割されており、その仕切りに雪持ち竹が使われている。そして、間にふくら雀が正面を向いてむくむくと居座る。雀がいるのはさすがに可愛い。雪があることからも分かるように、冬の絵付けである。そのため雀はずんぐりむっくりなのだ。

雪の部分と雀の腹と翼の間の線が同じカーブをを作っていて面白い。この竹が雪を持っていなかったら、ぱっと見の印象がずいぶん変わるのではなかろうか。


江戸幕末染付雲鶴図8寸皿

見つけた瞬間確保した器。一番の見どころは見込みの鶴なのだけど、ここは料理を盛り付けるとその瞬間に隠れてしまう場所でもある。

食べ終えれば再び顔を見せてくれるだろう。つぶらな瞳がキュートね。

縁の周りのモコモコした白い部分は雲で、その外側は山水図になっている。割と立派めな家が建っている。淡い藍色の背景に白い線で描かれているが、これは墨弾きの技法を使っている。墨弾きと、ただの白抜きでは線の感じが違う。墨弾きのがふんわりしている。

捻り縁になっているのはポイント高い。

裏側も山水図になっている。縁のところが欠けまくっているのが裏から見るととてもわかりやすい。使えるので使う。


明治後期〜大正銅判鶏とひよこ図長角皿

これ、普通に人気あるかも。刷りがちょっとべっとりしてるけど、絵柄も大きさも形も珍しい。

鶏は結構見かけるが、ひよこも一緒にいるのは珍しい。この小ささが愛おしい。ぶっちゃけひよこがいたから買ったところある。手作業で刷っているために、線が潰れて影絵のようになっているのがもったいない。

枠のような縁模様は桐が伸びている。どことなく西洋風な感じもあり、おしゃれだ。皿立てを使って飾ってもいい。

いくつかの小さい菓子をのせるとかわいい。カレーは微妙だった。カレーには丸みのある皿を使うべき。


江戸幕末染付壽文字長角皿

文字が一つだけドカンとあるタイプ。こういうの、好きなんだよ。でもあんまり出会えなくて持ってない。本当は、文字以外の柄がないやつのが好き。ただ、この器はめでたすぎるからめでたい時に使いたくて買うしかなかった。

こんな見た目なのに、四隅の柄を変えているのが面白い。別に変えなくてもそんな変わらんよ?と思わないでもない。これは職人のセンスなのか注文した人のセンスなのか。線描きの繊細な模様と白抜きの壽がマッチしてないよなあ〜って気持ちはある。特に左上の花が邪魔だ……めでたいから許すが……

試しに手巻き寿司を並べてみたら、ピッタリサイズで面白かった。し、よく似合っていた。寿司が似合う器ってなんかいい。おにぎりときんぴらと漬物と唐揚げなんかを一緒に盛り付けたら、とてもいいご飯が出来るだろう。



この間、ご飯茶碗が欲しいという人にくっついて器コーナーを見ていた。陶器のあとで磁器を見て「こういうんじゃなくて、もっと器っぽいやつがいいんだよなあ。さっき見てたみたいな。」と言っていた。そうか、器らしい器は陶器のざらっとした土感があるもの、というのが一般的な見方なんだなあと改めて思わされる。

確かに、私も以前は器といえば陶器のイメージだった。でも日常使いしているのは白くてツルツルの丈夫な磁器が多い。百均に並んでいる器の大半は磁器だし、一人暮らしを始める時に買ってずっと割れない皿の正体も磁器だ。普通にそこにあるから、いざ「器」と思ったときにスルーされてしまうんだろうか。大抵の人にとって器は必要な時に必要な分しか買わないものだから、買うときはそれなりに気合をいれる。

それとも海外の有名なもの、ロイヤルコペンハーゲン、リチャードジノリ、マイセン、バカラなどは気合を入れて買うときの「器」に組み込まれてくれるんだろうか。

私は磁器も陶器も好きだけど、人気なのはやっぱり陶器なのだろう。他者の持つ和食器=陶器のイメージを感じながらも、美濃焼や波佐見焼や瀬戸焼と書かれた旗の下にたくさんカラフルな現代磁器が並んでいるのを見る人々を見ている。


こういう系の話が好きな方は↓をどうぞ。

次回更新 9/25:考え中
※だいたいリサーチ不足ですので、変なこと言ってたら教えてください。気になったらちゃんと調べることをお勧めします。

めでたし、めでたし。と書いておけば何でもめでたく完結します。