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【器のはなし】白って二百色あんねん

好き好きの器を大自慢する回。今回は、江戸中期染付輪花縁なます皿。一目惚れと言っても差し支えないほど瞬時に購入を決めた。一客しか無かったし、傷モノだから安かったし。

夜に撮影したせいで暗めかも

まず注目すべきなのは白磁の部分が多いところ。江戸期の白磁は高い傾向がある。真っ白は高価がち。おそらく良いものしか残されていない。現在ではダメなのは出回ってない。白磁を美しく作るのは難しいからそもそもの基準が高かったのだろう。ここからは私の想像なんですが(栗原さんの口調です)、あまり良くないのは絵付けして誤魔化してた可能性があるかもしれんですね。そういう資料を読んだわけではないからマジで想像。

江戸中期の白磁といえば、何より柿右衛門が素晴らしく、私もいつかは欲しいもんですな〜と二年くらい思っている。柿右衛門の白磁は、濁手と呼ばれるクリーム色っぽさもある内側から輝くまろやかな白をしている。これは色絵に合う素地にするため作られた。これまでに出してきた染付の器を見返してみると、これらの素地は青みがかっている。青みがかっている方が作りやすいらしい。というか、そうなってしまうらしい。

磁器は真っ白で完璧なもの、パンまつりの器みたいなくらい完璧なものが良くて、歪みや黒点、青っぽくなってしまうのは欠点になる。その点で濁手はより白く、美しい。柿右衛門はクオリティが段違いなので、好みかどうか以前に美しいと思ってしまう。


まあ今回の器は白磁ではないんだけども、柿右衛門以後も色々と白磁は作られていて、もはやダイソーにすら売ってるくらいになった。数ある白磁の器を見比べてみると、冷たい印象のものがあれば暖かい印象のものもある。「白って二百色あんねん」なんですわよ。

この違いを意識するようになると、この色は好きだな〜というセンサーが発達する。そのセンサーに見事引っかかったのが、写真の器だ。

そして輪花縁なのも個人的に大変嬉しい。当時、別の器で輪花を入手しようか迷っていて、あともう一押しなんだよなあ……となっていたところにやってきた。

輪花というのは、花びらみたいに縁が丸くなっているもののことで、丸くならずに「{ 」のように丸の頂上が尖ったものを稜花と言う。私は稜花縁の方が好みで、なかなか輪花を入手したいと思えなかったのだ。そこを意識的にコレクションしたくなって、ピンとくるものを探していた。

ぷくぷくとした輪花が愛らしくも上品で、全体に貫入が入っているのが素朴さを感じさせる。絶妙な風合いがかなりツボ。

見込みは牡丹。座れば牡丹の牡丹。花がボリューミーで葉っぱがこんな感じだったら牡丹。撫子はもうちょいシンプルで花びらの先がメラメラしてる。ちょっと似てる。

高台周りは蓮弁文で、二重角福の銘が入っている。二重角福は上手のものに入れられることが多いらしいんだけど、これはどうだろう。うまく焼きあがっててツヤっとした質感だったら良さそう。

さてこの直し。焼き継ぎというもので、ガラス質のものを溶かしてくっつけるというもの。幕末頃まで使われていたが、現代では金継ぎに押されて知名度が低い。実はやってる人がいるらしい?正直漆より使い勝手良いはずだし、流行ればいいのにと思ってしまう。漆は乾燥に弱くて、しかも乾く(湿気を吸ってくっつく)のに時間がかかる。その点ガラスのようなものであれば、濡らしっぱなしでも平気だし一日あれば熱が冷める。

接着剤でくっつけたのと見分けがつきにくいのだが、接着剤は爪で引っ掻くと取れる。あと、これは透明の部分に細かなヒビが入っているので接着剤じゃないと分かる。

接着剤でくっつけた器は食品には使えなくなってしまう。一日で出来る新漆を使った金継ぎも同様。何ヶ月かかけて接着する本漆か焼き継ぎであれば、その後も食事で使えて便利。手間の分の価値はあると思う。金継ぎをすると電子レンジ使えなくなりそうだけど、その辺どうなんだろう。発火するよな?

金継ぎのサイトで「金継ぎが入ることでアクセントになりスタイリッシュ」的なことが書かれていたりするんだけど、これは私はあまり好きじゃない。直しはその後も使いたいという思いで繋ぐものであって、かっこよくするためではないと思う。あとは直すと「よりかっこよくなる」とは思わない。元々が好きで、割れてしまったから転生後の別の個体として迎えるんだと思う。「よりかっこよくなる」は、元々がかっこよくなかったかのようで悲しい。

というわけです。これ、継いであるんだけど劣化したのか継ぎ方が雑だったのか、真ん中から盛大に汁が染みてくるから使えてない。漆を隙間に入れて繋ごうかなって思って、かなり放置してる。


こういう系の話が好きな方は↓をどうぞ。

次回更新予定 7/29:未定
※だいたいリサーチ不足ですので、変なこと言ってたら教えてください。気になったらちゃんと調べることをお勧めします。

めでたし、めでたし。と書いておけば何でもめでたく完結します。