5-2. 化学反応の量的関係(1)
こんにちは、おのれーです。
前回は、化学式を用いて化学反応を表す「化学反応式」について見てきました。化学反応式を見れば、どんな物質がどんな物質と反応し、どんな物質に変化するのかがパッと見て分かります。
でも、化学反応式が表していることは「何が何に変わる」ということだけではないのです。今回は、化学反応式がもっているもう1つの意味に注目をして行きたいと思います。
■化学反応式が持つ、もう一つの意味とは?
化学反応式には、反応前の物質(反応物)を左、反応後の物質(生成物)を右に書き、両辺を「→」で結ぶという約束がありました。
しかし、それだけで化学反応式は完成だったでしょうか?
その後に、なんだかいろいろ数を合わせる作業がありましたよね。なぜ、そのような必要があったのでしょうか?
ドルトンの「原子説」に話は戻ります。
「原子説」によると、「化学反応の前後で、原子はなくなったり、新しくできたり、違う種類の原子に変化することはない」と説明されています。ですから、反応の前後で原子の数が変わらないように、それぞれの物質の前に係数をつけ、数合わせをしたのでした。
ということは、
化学反応式は、化学反応が起こる際の"物質の種類"だけではなく、"物質の数"も表しているということができます。
例えば、メタンCH4が完全燃焼し(酸素O2と結びつき)、二酸化炭素CO2と水H2Oになるという反応式は、次のように表されます。
この式を、分子の数に注目して読んでみると、「メタン1個と酸素2個が反応すると、二酸化炭素1個と水2個ができる」となります。
では、ここで"mol"の考え方を投入します。そもそも"mol"とはどんな単位だったでしょうか?
"mol"とは個数の単位であり、6.0×10^23個を1 molとまとめる数え方です。ですから、先ほどの文章は、「メタン1mol(1×6.0×10^23個)と酸素2個(2×6.0×10^23個)が反応すると、二酸化炭素1個(1×6.0×10^23個)と水2個(2×6.0×10^23個)ができる」と読み替えることができます。
■化学反応式の係数に注目すると、いろんなことが分かる!
このように、化学反応式の係数は、反応する物質の個数(mol数)を表しています。でも、それだけじゃないんです。
1molの質量[g]は、モル質量[g/mol](大きさは原子量・分子量・式量に等しい)から分かりますし、気体1molの体積[L]は、モル体積[L/mol]から求めることができます。このように、molが分かるということは、molから誘導される質量[g]や体積[L]の関係も分かるということになるのです。
これが分かれば、実験のとき、ある量の物質をつくろうとしたとき、どのくらいずつ薬品を測りとれば良いのか、あらかじめ計算して予測することができます。やみくもに混ぜて大爆発、みたいな昔のコントのようにはならないのです。
このとき、根本的な考え方になるのが、「化学反応式の係数比=物質量[mol]比」になるというものです。
ということで、化学反応の量的な関係を考えるには、「係数比=mol比」の関係を軸に、
① 化学反応式を書く
② 与えられている数字の単位を、molに直す
③ 係数比=mol比の関係から、目的の物質のmolを求める
④ 求めたい単位に、molから直す
という手順で考えていきます。ほとんどの問題は、この手順でいけます。
では実際に、問題を通して、この関係を確認していきましょう。
先ほどから出てきているように、メタンが完全燃焼すると、二酸化炭素と水が生成し、その反応式は、
と表されます。このとき、それぞれの物質の間には、
という関係が成立しています。これをもとに、(1)~(3)の問題について考えていきます。
いかがでしょうか? とにかく比の計算で考えていけば、そんなに難しくはないかと思います。ただ、どこに何を代入するかで間違えやすいので、慣れないうちは、物質名や単位などを省略せずに式を立てることがコツです。
引き続き、もう一題考えてみましょう。
もう大丈夫でしょうか?
ここまでが分かれば、化学反応の量的関係についての基本は大丈夫です。面倒くさがらずに、段階を追って考えていけば、ミスは減らせると思うので、苦手な人は指差し確認しながら進めていってみて下さい。
■気体の反応はmolを通らなくても大丈夫なことがある!
アンモニアという気体(名前を聞いただけで臭い!と思うかもしれませんが)をつくるには、気体の窒素と水素を反応させる方法が最も一般的です。ちなみに、この方法をハーバー・ボッシュ法といい、この方法が確立したお陰で人工肥料の大量生産ができるようになり、世界の人口増加に対し、食料の増産ができるようになったと言われています。さらには、このアンモニアが原料となり、第一次世界大戦での爆薬の大量生産を可能にしたという説もあります。このハーバー・ボッシュ法、高温・高圧のもとで反応させる必要があり、膨大なエネルギーが必要になるという難点があったのですが、最近になって日本で新しい方法が発明され(東大・東工大)、注目を浴びています。
ちょっと話が脱線しましたが、この反応について、まず問題を解いてみましょう。
このように、与えられた数値(1.12 L)をmolに直し、係数比=mol比の関係から目的の物質(アンモニア)のmolを求め、さらにそれを体積Lに変換するという方法でも問題を解くことができます。
ただし、よくよくこの計算の過程を見てみると、初めに22.4で割って、最後に22.4をかけています。この「22.4で割って、かける」というのは、結果的に「1をかける」ことと同じですから、やらなくてもいい過程だということが分かるかと思います。
なぜこれが成立するかというと、以前出てきた「アボガドロの法則」が気体分子の間に成り立っているからです。
要は、同温・同圧で同じmol数の気体であれば、同じ体積ということになりますから、「同温・同圧のもとで」「体積同士の比較」であれば、「係数比=体積比」の関係を使って解くこともできるのです。
では、先ほどと同じ問題を、「係数比=体積比」の関係を使って解いてみましょう。
結果的に同じ数値になっていることが分かると思います。
あくまで「同温・同圧で」「体積同士の比較」という条件付きなので、決して「質量同士の比較」には使わないで欲しいのですが、上手に活用できると便利ですので、こちらも意味を理解した上で使えるように練習してみると良いかと思います。
今回はここまでです。
今回は、問題も続いたのでワンポイントチェックはお休みです。次回は、化学反応の量的関係の応用編です。お楽しみに!
←5-1. 化学反応式 | 5-3. 化学反応の量的関係 (2)→