4-4. 物質量(2)
こんにちは、おのれーです。
前回は、"mol"とは粒子の個数を表す単位であり、「ダース」と同じような使われ方をするということを見てきました。
そして、個数を表す"mol"と、質量を表す"g"との間に、どのような関係があるのかを確認しました。
今回は、molと、体積を表す"L"との間に、どのような関係があるのかを調べていきます。
■すごいぞ、アボガドロ!
アボガドロという名前は、化学を学ぶ中で何度も出てきます。どこで出てきたか覚えていますか?
最初に出てきたのは、「分子」という粒子の存在を唱えた人物として紹介したと思います。
そして次に出てきたのは、前回学んだ「アボガドロ数」「アボガドロ定数」というところで名前を目にしましたね。
しかし、アボガドロの業績はこれだけはないのです。
実は、アボガドロの研究の集大成といっても過言ではないだろう「アボガドロの法則」というものが存在します。
それは「同温・同圧・同体積のもとでは、気体の種類に関係なく、同数の分子を含む」というものです。
これをもう少し言い換えてみると、「気体 1mol(分子を6.0×10^23個集めたとき)の体積は、温度と圧力が一定であれば、気体の種類にかかわらず、同じ体積を占める」ということができます。
上の図のように、水素分子H2でも、酸素分子O2でも、窒素分子N2でも、いろんな気体が混ざり合った混合気体であっても、分子が1 mol(=6.0×10^23個)あるとき、分子たちが飛び回ることができる空間の広さ(=気体の体積)は同じなのです。
■1 molの気体が飛び回れる空間の広さはどれくらいか?
では実際に、1 mol(=6.0×10^23個)の気体分子は、何Lくらいの空間を飛び回っているのでしょうか?
これを考える前に、アボガドロが「同温・同圧のもとで」と条件を限定した理由を考えてみましょう。
そもそも、気体の体積とは、"気体分子が飛び回ることができる空間の広さ"を表しています。
気体分子は温度が高くなるほど激しく動き回るようになり、気体の体積(=飛び回れる空間の広さ)も大きくなります。
また、圧力とは、気体分子が飛び回っている間に、壁にぶつかる回数のことをいいます。もし、容器に同じ数の気体分子が入っていたとしたら、気体の体積(=飛び回れる空間の広さ)が大きい方が、気体分子が壁にぶつかる回数は少なく、圧力は小さくなります。
このように、気体の体積というのは、飛び回っている分子の数が同じでも、温度や圧力によって異なるものです。したがって、気体 1 molの体積を調べる時には、温度や圧力の条件を一定にしてあげる必要があります。
よく用いられる温度と圧力の組合せは、0 ℃、1.013×10^5 Pa(=1気圧、海面での大気圧の大きさ)という条件で、「標準状態」とよばれています。
この「標準状態」において、1 molの気体は、22.4 Lの空間を飛び回ることができます。つまり、気体1 molの体積は、標準状態では22.4 L(=22400 mL)です。
気体分子の数[mol]に気体の体積[L]は比例しますので、1 molの気体の体積が22.4 Lということは、10 molの気体の体積は224 Lと求めることができます。ここでも、前回の質量の時と同様、比の計算式を使うと混乱しにくいかなと思います。
では、ここで少し練習してみましょう。
気体の体積とmolの関係はバッチリですか?
では最後にmolの総仕上げとして、物質量mol、質量g、体積Lの関係についてまとめていきたいと思います。
■"mol"計算のコツは「卵かけごはん」!
これまで、mol ⇄ 個 、mol ⇄ g 、mol ⇄ L という単位の変換を学んできました。しかし実際には、個 ⇄ g 、個 ⇄ L 、 g ⇄ L のような変換が求められることも多いです。特に、 g ⇄ L の変換は、実験をする前に予測を立てたり、実験結果を整理したりするときによく使います。
ここでやっかいなのは、質量g がからんでくる場合です。
個数なら、どんな種類の粒子でも「1 mol = 6.0×10^23個」ですし、気体の体積なら、どんな種類の粒子でも標準状態においては「1 mol = 22.4 L」と決まっています。しかし、質量の場合は、粒子の種類によって 1 molあたりの重さは異なります。水素分子(分子量=2.0)1 mol の体積は22.4 L、質量は2.0 gですが、酸素分子(分子量=32)1 mol の体積は22.4 L、質量は32 gと、”物質量molや体積Lが同じでも質量gが異なる”ということが起こるのです。
したがって、単位の変換をする時には、「必ずmolを通る」という原則があります。面倒でも、与えられた単位の数値をmolに直し、そこから求めたい単位に直す、という二段階の作業をすることが必要です。
下の図は、物質量mol、個数、質量g、気体の体積L の相互関係を表したものです。
基本的には、これまでやってきた比の計算式を使って、地道に解いていけば答えは求まるのですが、この関係を理解しておくと、計算のスピードアップにもつながるので、慣れてきたら、この関係式を利用して解く練習もしてみましょう。
ちなみにコツは、「割ってから、かける」ということです。
上の図を見ても分かるように、個・g・L という単位から、molという単位に直すときには、それぞれの"基準の値で割る"必要があります。ですから、まずは割り算が出てきます。
次に、molという単位から、個・g・L という単位に直すときには、それぞれの"基準の値をかける"必要があります。ですから、次にかけ算が出てきます。
このように、「割ってからかける」ものって何か思いつきませんか?
そう、この項のタイトルにも書いた「卵かけごはん(TKG)」です。卵かけごはんを食べるには、よそったご飯に、「卵を割ってから、かける」必要がありますよね。
もし、よくわからなくなってしまったら、「あ、mol計算はTKGだった!」と思い出すヒントにして頂けたらと思います。
では最後に、練習問題です。
これができたら、あなたもmolマスターです。
今回も、お疲れさまでした。
最後にワンポイントチェック
1.アボガドロの法則とは、どんな法則?
2.1 molの気体の体積は、標準状態で何L?
3.水素分子2.0 gの体積は、標準状態で何L?
次回は、気体についてもう少し突っ込んで見ていきます。計算が続きますが、頑張っていきましょう!