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4-5. 気体の密度と平均分子量

こんにちは、おのれーです。

前回は、1 molの気体が飛び回ることのできる空間の広さはどのくらいなのか?ということについて学びました。そして、molとg, L, 個の単位変換のコツは「卵かけごはん」だ!ということも確認しました。

今回は、また気体に注目をしていきます。

■空気の重さってどれくらい?

「空気のような存在」という表現があるように、普段私たちは空気の存在をあまり感じることはないかもしれません。

しかし、空気にも重さはあります。もし、空気に重さが無かったら、どんな状況になるでしょう?

たぶん、私たちは膨れ上がって、下手すると破裂してしまいます。

なぜならば、空気に重さがあることで大気圧が生じ、その大気圧が私たちの身体を押す力と、身体の内側から外側に向かってはたらく力がちょうどつりあうことで、形を保つことができているからです。空気のない宇宙空間で、宇宙飛行士が宇宙服を着ているのも、そのためです。

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では、空気の重さはどのくらいなのでしょうか?

水1 Lと500 mLとでは重さが異なるように、どのくらいの量を集めるかで重さは変わりますが、空気1 Lの重さを測定すると、だいたい1.293 gになります。1円玉1枚分よりちょっと重いくらいですから、それなりに重いことが分かると思います。


■空気を1 mol集めると、重さはいくらになるか?

空気の成分は窒素分子N2や酸素分子O2などです。つまり空気の重さは、空気中に含まれているN2やO2などの重さと考えられます。

では、空気1 molあたりの重さはどのようにして求めることができるでしょうか?

空気は混合物ですから、空気1 molといっても、「空気分子」という名前の分子を6.0×10^23 個集めてきたわけではなく、実際は窒素分子や酸素分子を集めてきて、合計で6.0×10^23個のかたまりになったものだと思ってください。

気体1 molの重さは、分子量に等しかったですね。ですから、窒素分子(N2=28)なら28 g、酸素分子(O2=32)なら32 gというように、原子量と分子式から求めることができました。

しかし空気の場合は、ただ化学式中に含まれる原子の原子量の和だけで分子量を求めることはできません。どのくらいずつN2やO2が含まれているのかによって、重さが変わってしまうからです。

空気のように、何種類かの気体が混ざり合ってできている混合気体の場合、1 molあたりの重さは、仮にすべて同じ種類の粒子の集まりだったとして、その平均値(=平均分子量)で考えていきます。

実際に、空気1 mol当たりの重さ(=平均分子量)を求めてみましょう。

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”mol"とは個数の単位ですから、4.0 molは4(×6.0×10^23)個、1.0 molは1(×6.0×10^23)個と仮に考えます。

N2の分子量は28、O2の分子量は32ですから、”28という重さのN2が4個と、32という重さのO2が1個ある”と考えて、容器内にある5個の粒子の重さの平均値を求めることで、空気の平均分子量を求めます。 

では同じようにして、別の混合気体の平均分子量を求めてみましょう。

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少しわかりづらいところもあったかと思いますが、ここまでは大丈夫そうでしょうか?


■空気より軽い、重いってどうやって分かるの?

小学校や中学校の理科では、「空気より軽い気体、重い気体はそれぞれ覚えなさい」と言われるかと思います。例えば、

・空気より軽い: 水素、ヘリウム、アンモニア、水蒸気
・空気より重い: 塩素、塩化水素、二酸化炭素

などが有名なところでしょうか。

空気より軽いか重いかは、気体を発生させて集める時や、毒ガスを吸わないようにするためにも、大切な知識ではあります。でも実はこれ、暗記する必要なんてまったくないのです。

そもそも、ものが特定のものに対して浮くか、沈むかというのは、物質の密度の大小で決まります。密度とは、一定体積[cm3やL] 当たりの質量[g]を表している値であり、密度が小さいものが、密度の大きいものの上に浮かぶという特性があります。

気体の場合は、体積1 Lあたりの質量[g]を気体の密度といい、単位 g/L で表します。


では、どのようにして気体の密度を求めればよいのでしょうか?

前回学んだように、標準状態(0℃、1.013×10^5 Pa)のもとで、 1 molの気体が占める体積は22.4 Lです。また、1 molの気体の質量は、分子量の大きさに[g]をつけた値に等しいです。これらをまとめると、「標準状態(0℃、1.013×10^5 Pa)のもとでは、22.4 Lの体積を占める気体の質量[g]は、分子量の大きさに等しい」ということができます。

つまり、「22.4 Lのとき分子量の大きさと同じ重さである気体が、1 Lだけあったときの重さはどうなるだろうか?」という計算をしてあげれば、気体の密度を求めることができるわけです。

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逆に言うと、気体の密度(1 Lあたりの重さ)がわかれば、1 mol(=22.4 L)あたりの重さ、つまり分子量の大きさも求めることができるのです。

このことから、同温・同圧での気体の密度は、分子量に比例するといえます。したがって、同温・同圧での気体の密度の比は、分子量の比になります。

先ほど、空気の平均分子量は28.8 であるという計算をしました。要は、分子量が28.8より小さい気体は空気より軽いので浮かび、分子量が28.8より大きい気体は空気より重いので沈むという関係が成立します。

例えば、水素H2は分子量が2.0で28.8より小さいので空気より軽く、二酸化炭素は分子量が44で28.8より大きいので空気より重い、ということになります。

では、とりあえず問題を解いてみましょう。

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いかがでしょうか? 平均分子量やら密度やら、ややこしい概念が複数出てきて扱いには苦労するところだと思いますが、ただ公式に当てはめるのではなく、理屈を理解してしまえば、応用も効くはずです。意味を大切に再確認してみて下さい。

今回はここまでです。


最後にワンポイントチェック

1.気体の平均分子量とは、どのようなものか?
2.空気の平均分子量はいくつか?
3.気体の密度はどのように表されるか?
4.空気より軽い気体の密度は、空気の密度と比べて大きいか、小さいか?


次回は、溶液の濃度についてです。受験生でも苦手な人が多い分野ではありますが、焦らずにじっくりやっていきましょう。お楽しみに!

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