2-4. 物質の三態と熱運動
こんにちは、おのれーです。2章も今回で最後です。早いですね。
今回は、物質が固体、液体、気体、と変化するのはどのようなことが原因なのかを探っていきたいと思います。
■粒子は絶えず運動している元気な子!
物質中の粒子(原子、分子、イオンなど)は、その温度に応じた運動エネルギーを持って絶えず運動をしています。これを熱運動といいます。
下図のように、一方の集気びんに臭素Br2を入れて、他方に空気の入った集気びんを重ねておくと、臭素分子が熱運動によって自然に散らばって、2つの集気びん全体に均一に広がります。
このような現象をを拡散といいます。たとえば、電車に乗ったとき、自分の乗った車両は満員電車でギュウギュウ詰めなのに、隣の車両がまったくの空車だったら、隣の車両に一定の人数が移動するかと思います。分子も、ギュウギュウ詰めで狭苦しい状態でいるよりは、空間があるならば、ゆとりをもって空間を使いたいものなのです。
■温度に上限と下限ってあるの?
温度とは一般に、物体のあたたかさや冷たさの度合いを数値で表したものです。
気体分子の熱運動に注目してみると、温度が高いほど、動きの速い分子の割合が増えます。分子の動きが速い=熱運動のエネルギーが大きいということなので、温度が高いほど、熱運動のエネルギーの大きい分子が多いといえます。
逆に、温度が低いほど、動きの遅い分子の割合が増えます。つまり、温度が低いほど、熱運動のエネルギーの小さい分子が多いといえます。
つまり、温度をミクロな目でとらえてみると、「物体の中の原子・分子の運動の激しさを表すものさし」ということがいえます。
かんたんに言ってしまうと、高温のときはイケイケ(死語?)なテンション高めのパリピ分子が多いけれど、低温のときはテンション低めで冷静におちついて行動する分子が多いということです。
熱運動を小さくしていくと、やがて分子は動けなくなり、その場で止まってしまいます。この分子運動が停止してしまう温度が世の中の最低温度であり、絶対零度とよばれています。そして絶対零度を基準とする温度のことを絶対温度といい、単位はK(ケルビン)で表します。
このように、温度には下限がありますが、実は上限はありません。それは、分子の熱運動が活発になればなるほど、温度が高くなるからで、その運動エネルギーの大きさに限界はないと考えられているからです。
絶対温度と、私たちが普段使っているセルシウス温度[℃]との関係は以下の通りです。
化学の世界では、セルシウス温度[℃]よりも、絶対温度[K]を用いることが多いので、この関係性は覚えておいた方が良いかと思います。
ちなみに、ケルビンの名はイギリスの物理学者 、ウィリアム・トムソン(後に男爵、ケルビン卿となった)にとってなじみの深い川の名にちなんで付けられたそうです。
■物質は忍者のように姿を変化させる!
すべての物質には、固体、液体、気体の3つの状態があります。条件は物質によって異なりますが、温度や圧力を変化させることによって、どんな物質であってもこの3つの状態に変化する可能性を持っています。
(1) 固体
分子が規則正しく並んでいて、互いに強く引きつけ合っているので、分子はその場にとどまりながら、ブルブル震えています。
(2) 液体
分子はある程度かたまって存在していますが、分子同士の引き合う力が弱いので、それぞれの分子はまとまりながら動くことができます。そのため、液体は自由に形を変えることができます。
(3) 気体
分子が1つ1つバラバラになり、空間を自由に飛び回っている状態です。
そして、この固体・液体・気体の間の変化のことを三態変化とか、状態変化と呼んでいます。まとめると、次の図のようになります。
ちなみに、気体から固体に変化する現象名が書いていないのは、明確な名称が現時点では定まっていないからです。かつては気体から固体に変化することも「昇華」と言っていましたが、固体から気体に変化する場合と紛らわしいなどの理由から、新しく「凝華」という名称が検討され始めています。現段階では教科書にも「凝華ということがある」と注意書きがしてあるくらいですが、そのうち正式な名称に落ち着くのではないかと思います。※参考文献
あと、液体が気体に変化することは「蒸発」といっていますが、これは液体の表面から一部の粒子が飛び出して気体となる変化を指しています。それに対し、液体の内部からも蒸発が起こることを「沸騰」とよんでいます。水は100℃で沸騰しますが、私たちが普段暮らしている温度(例えば20℃くらい)であっても、蒸発はします。そうでなかったら、外に洗濯物を干していても乾かないですよね。逆に、洗濯物が乾くために、水が沸騰する必要があったら、洗濯物を取り込む時に大やけどしてしまうはずです。
くわしくは「化学」で学ぶ内容ですが、蒸発と沸騰の違いはおさえておくとよいでしょう。
■物質の状態を変化させるにはエネルギーがたくさん必要!
三態変化は、粒子の熱運動の激しさの違いによって、粒子の集合状態が変化するために起こります。
おとなしい粒子たちは互いに手を取り合い、その場で震えていますが、活発な粒子たちは個々が自由に空間を飛び回っています。それだけ、粒子の持っているエネルギーが違うということです。
したがって、固体から液体、液体から気体になるときには、外からエネルギーをたくさんもらって、粒子たちがテンションをかなり上げていかないといけません。おとなしくエネルギーをあまりもっていない粒子でも、誰かからエネルギーを与えてもらえれば、活発な粒子に変わることができるのです。
そのため、物質に熱を加えていくと、単一の状態(固体のみ、液体のみ、気体のみ)のときには温度が時間に比例して上がっていきますが、状態を変化させている間(固体 ⇄ 液体、液体 ⇄ 気体 )は、与えられた熱は温度上昇ではなく、粒子間の結合を断ち切り、状態を変化させるためだけに使われます。
■物理変化と化学変化
物質はいろいろと変化するが、物質の変化は、物理変化と化学変化に大きく分かれます。
(1) 物理変化
物質の形や運動の状態が変化するだけで、物質そのものは変わらない変化のことを物理変化といいます。
固体の物質を熱すると、液体から気体へと状態が変化します。反対に気体の物質を冷やすと、液体から固体へ変化します。このような状態変化は、粒子の運動の変化によるものであり、物質そのものが変化しているわけではありません。
(2) 化学変化
物質間で原子の結びつき方が変わり、物質そのものが違うものに変わる変化のことを化学変化といいます。
今回はここまでです。お疲れさまでした!
最後にワンポイントチェック
1.拡散とはどのような現象で、なぜ起こるだろう?
2.絶対温度とは何を基準にしており、セルシウス温度とはどのような関係がある?
3.三態変化はなぜ起こる?
4.物理変化と化学変化の違いは?
これで2章も終わりです。次回からは、原子や分子がどのように結びついて、物質ができているのか、化学結合について見ていきます。お楽しみに!
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