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1-4. 電子殻と電子配置

こんにちは、おのれーです。
これまで原子の構造や性質について見てきましたが、今回は化学反応をするときに最も重要な役割を果たしているといっても過言ではない「電子」について見ていきたいと思います。

■原子の中で電子はどのように存在しているのだろう?

電子は、原子核のまわりを常に激しく飛び回っています。
※飛び回っているイメージ動画は下の1_4_1.mp4を参照

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原子番号が1番の水素原子は、飛び回っている電子も1個だけですが、原子番号が82の鉛原子は、82個もの電子が飛び回っています。こんなにもたくさん電子が飛び回っていて、原子の中で衝突事故が起こることはないのでしょうか?

実は、原子の中ではきちんと電子の交通整理が行われているのです。

原子内の電子は、原子核のまわりをものすごい速さで飛び回っているので、ある瞬間の電子の動きを正確に知ることはできません。でも、電子のいる場所は計算によって確率で求めることができ、「だいたいこのあたりにこれくらいいるだろう」という見当をつけることはできます。

その結果、電子はいくつかの"層"をなして運動していることが分かりました。この層のことを「電子殻」と呼び、手前からK殻、L殻、M殻…(後はアルファベット順)という名前がついています。

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なぜ、アルファベット順なのに一番手前が「A殻」じゃなくて、「K殻」なのでしょう?

これは、初めに「電子殻」の名前を考案したイギリスの物理学者、チャールズ・バークラが、「もし将来、A殻の内側の電子殻が見つかってしまったらまずい」ということで、ちょうどアルファベットA~Zの中心の位置にある「K」を一番内側の電子殻として発表したのだそうです。

A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z

でも、結局K殻の内側の電子殻は発見されなかった・・・ということで、今も「一番手前の電子殻がK殻」となっているのでした…。


■電子たちは、律義にルールを守って動いている!

電子殻に電子が入るときにはルールがあり、多くの電子たちは律義にこのルールを守って行動しています。

1.一番内側の電子殻から順番に入っていく

電子は負電荷をもつ粒子です。一番内側の電子殻は、正電荷をもつ原子核からの距離が一番近いため、電子にとっては一番居心地がよく、安定な場所です。電子にとっては大人気のアリーナ席みたいなものです。原子核がステージだとしたら、基本的には"ステージ近くの座席から順番に埋まっていく"と考えてみるとよいでしょう。

2.それぞれの電子殻に入れる数は決まっている

人気のアリーナ席も座席数が決まっていて、一定数を超えると完売になってしまうように、それぞれの電子殻には定員があり、それを超えて電子が収容されることはありません。

定員数は、原子核に近い方から順番に1, 2, 3, 4…と電子殻に番号をふり、その番号をnとおいたとき、2n^2(2nの2乗)個と決まっています。

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原子には、原子番号と同じ数の電子があります。これらの電子は、原則的に上の2つのルールにしたがって、それぞれの電子殻に収容されていきます。

たとえば、原子番号が11のナトリウム原子では、K殻に2個、L殻に8個、M殻に1個の電子が収容されています。

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このように、それぞれの電子殻に何個ずつ電子が収容されているのか、その配列の仕方を表したものを、"原子の電子配置"とよんでいます。

原子番号18のアルゴンArまでは、完全にルールにしたがって電子が収納されていくので、実際に書いて練習してみましょう。


■化学変化は、やんちゃな電子たちに引き起こされている?!

原子の最も外側の電子殻にある電子は、最外殻電子とよばれています。なぜ名前までついて特別扱いされているかというと、ほとんどの原子にとって、この最外殻電子が、化学変化をするときに重要な役割をするからです。

最外殻電子は、一番外側にあり、正電荷をもつ原子核から離れているので、原子核に引きつけられる力が弱く、外に飛び出していきやすい電子です。この不安定でやんちゃな最外殻電子が、外に出て行ったり、他の原子に使われたりすることで、化学変化が起こっていたりします。

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このように、化学変化に関係している最外殻電子のことを、価電子とよんでいます。価電子の数が同じ原子どうしは、化学的性質がよく似ていることが分かっています。

下に示すのは、原子番号1~20までの元素の原子の電子配置です。

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ここで、ちょっと不思議なことが2つ。気づきましたか?

1つ目は、原子番号19のカリウムKと原子番号20のカルシウムCaの電子配置です。M殻の定員は18のはずなのに、8個入った時点で次のN殻に電子が収容され始めています。

実はこのあたりからは必ずしも先ほどの約束が忠実に守られるわけではなく、「ちょっと混んできたから後ろの方の座席に先に座っちゃおうかな~」という原子が登場します。とりあえず今は、"最外殻に電子が8個入ったら、次は1つ外側の電子殻に入るようになることがある"くらいに思っておいてください。

2つ目はヘリウムHe、ネオンNe、アルゴンArの価電子数が0になっているというところです。一体これはなぜなのでしょうか?

■みんなの憧れの的、貴ガス(希ガス)!

貴ガス("希"ガスとも書きます。英語だとnoble gasなので"貴"ガスの方が忠実に訳しているかも)とは、空気中に微量に存在しているヘリウムHe、ネオンNe、アルゴンArなどの気体のことで、その電子配置は次のように表されます。

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貴ガスの電子配置に共通しているのは、最外殻電子が8個(Heは、K殻の最大収容数が2個なので、最外殻電子も2個)だということです。

実は、最外殻電子数が8個の電子配置というのは、原子にとってとても安定な構造であり、すべての原子にとって憧れの的になる電子配置です。化学変化というのは、できるだけ原子が安定な状態を求めて起こることが多いので、この構造を持っている貴ガス原子が、わざわざ他の原子の反応することはほとんどありません。貴ガス原子のもつ電子が外に出ていったり、よそ者電子が貴ガス原子の中に入り込んできたりすることはまずないのです。そのため、貴ガス原子の電子配置のことを、閉殻構造とよんでいます。

したがって、貴ガス原子の価電子数は0とみなして考えます。

ちなみに、貴ガス原子は反応しにくいので、1個の原子が分子としてふるまっているため、貴ガスは単原子分子(1つの原子からなる分子)として存在しています。


ということで、今回はここまでです。化学反応を考える時には、原子が持っている電子の数、特に最外殻にある電子がどのように行動するかが重要な意味をもちます。「電子の動きが分かれば化学反応が分かる」と言っても過言ではないでしょう。


最後にワンポイントチェック!

1.電子殻は原子核に近い方から何殻、何殻…と名付けられていただろう?
2.それぞれの電子殻には最大何個ずつ電子が入ることができただろう?
3.化学変化は、どんな電子によって引き起こされていたか?
4.貴ガスの特徴はどのようなものだったか?


次回は原子番号(電子数)と元素の性質についてまとめられた便利な表である「周期表」についてみていきたいと思います。引き続き頑張っていきましょう!

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