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3-5. 金属結合と金属結晶

こんにちは、おのれーです。

これまで、非金属元素の結合について見てきましたが、いよいよ今回は金属元素の出番です。

■周期表の大多数は金属元素だ!

全ての元素のうち、金属元素はどれくらいあるでしょうか?

下の周期表では、金属元素の背景を青色、非金属元素の背景を黄色で示しています。これを見てみると、周期表のほとんどの部分が青色に染まっていることが分かると思います。実際、全元素の約80%が金属元素です。

世の中にある物質の多くは炭素原子が含まれていますので、必ずしも金属元素の種類が多いことが、物質の種類を増やしているわけでもないのですが、単体(1種類の元素からなる物質)だけに絞って考えると、多くが金属だけでできている物質だとも考えることができます。

では、金属元素だけからなる物質は、どのようにしてでき、どのような特徴があるのでしょうか?

■原子に捨てられても、健気に生きる電子ちゃん

1-1.原子のところでも確認しましたが、金属のかたまりを電子顕微鏡で観察してみると、金属の原子が規則正しくきれいに並んでいる様子を見ることができます。

ここでは金属ナトリウムNaに注目をしてみていきたいと思います。

金属ナトリウムは、次のように、ナトリウムNa原子が規則正しく配列してできている物質です。

しかし実際には、ただ規則正しく原子が並んでいるわけではありません。

なぜならば、ナトリウム原子は価電子を1つもつ原子であり、安定な閉殻構造をとっているわけではないので、まだまだ欲求不満な状態にあるからです。

ナトリウム原子にとって安定なのは、M殻にある価電子を1つ放出して、K殻に2個、L殻に8個電子が入った状態の閉殻構造をとり、ナトリウムイオンNa+となった状態です。

しかし、すべてのナトリウム原子Naが、ナトリウムイオンNa+になってしまうと、粒子がすべてプラスの電荷をもつようになり、互いに反発するようになってしまいます(静電気パチパチ状態)。

それでも、反発せずに、同じところにかたまって居続けられるのはなぜなのでしょうか?

実は、カギになるのは、ナトリウムイオンになるときに、ナトリウム原子に捨てられてしまった、かわいそうな電子ちゃんなのです。

「自分が幸せになるためだったら、君はいらない!」と捨てられてしまったら、恨み節の1つや2つ、原子に言ってやりたいところだと思います。

でも、この捨てられてしまった電子ちゃんは、一触即発でパチパチいいかけているナトリウムイオンたちの間に入って、「仕方がないな、間を取り持ってあげるよ!」とばかりに、仲裁に走り回ります。

このけなげに間をとりもってくれる電子ちゃんたちのことを、自由電子とよんでいます。

この自由電子たちが、金属の陽イオンの間を飛び回ることでできる結合を金属結合といい、金属結合でできている固体の物質のことを金属結晶とよんでいます。

■健気で自由な電子ちゃん、大活躍!

では、金属結晶の性質にはどのようなものがあるのでしょうか?

実はここにも、けなげな電子ちゃんの活躍が関係しています。

(1) 金属光沢がある
「金属かどうかを見分けなさい」と言われたら、多くの人が”ピカピカ光っているかどうか”で判断するのではないでしょうか。それだけ、"金属=ピカピカ"のイメージは強いものがあると思います。

金属がピカピカ光ることを、「金属光沢がある」といいます。この金属光沢は、実は自由電子が金属の表面で動き回っており、光をいろいろな方向に反射しているからなのです。

(2) 展性・延性がある
「展性」とは、"たたくとうすく広がる"性質のことであり、金をひたすらたたいていって、向こうが透けて見えるくらい厚さのうすい金箔をつくることができるというのも、この性質のお陰です。

「延性」とは、"引っ張ると伸びる"性質のことであり、銅のかたまりを両端から引っ張ると伸びて針金(銅線)にすることができるのも、この性質のお陰です。

このように、金属結晶には、"たたいたり、ひっぱったり、力を加えると形が変わる"という特徴があります。

実は、これも自由電子ちゃんのお陰です。

下の図で示すように、外部から力を加えられたとき、金属の陽イオンの並び方はずれるので、形(厚み)は変わりますが、その間を自由電子が健気に飛び回り続けるので、折れたり、割れたりすることはありません。

電子ちゃんは捨てられてもただじゃおかない、とても負けん気の強い粒子のようですね。

(3) 熱や電気を通しやすい
電流の正体は、"電子の流れ"です。したがって、電子が自由に動き回れる状態にある金属結晶は、電気を流しやすいといえます。ちなみに、最も電気を流しやすい(電気伝導率が高い)金属は銀で、次いで銅、金と続きます。銀は高価なので、導線として使われるものは銅線が多いですね(ダジャレではありません)。

熱を伝える仕組みはいくつか知られていますが、やはり電子も関係していると考えられています。金属結晶では、電子が自由に動き回れるので、熱も伝えやすいといえます。熱を伝えやすい金属は電気と同様、銀がもっとも伝えやすく、次いで銅、金と続きます。調理器具などで銅のお鍋があることも、納得です。

今回はここまでです。ここまで粒子同士の結びつきについて駆け足で見てきました。次回はこれまで出てきたものをいったん整理してみたいと思います。

最後にワンポイントチェック

1.金属結合はどのようにしてできるか?
2.自由電子とは何か?
3.金属結晶の特徴にはどんなものがあるか?

次回でいよいよ3章も終わり。これまで学んできた結晶の見分け方について考えていきます。お楽しみに!

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