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スーパーのお肉は生で食べられるのか?生食用のお肉との違いは?自宅で「なま」で食べる方法とリスクの重要性を理解する

生で肉を食べる方法

よく『生で肉を食べる方法』を訊かれるので、要点をまとめて紹介します

世間には『生ハム』や『ユッケ』や『鳥刺し』などと、生の状態で食べられる肉が存在し、それらの虜になる方も少なくはないでしょう。

私の身の回りには、生肉の美味しさを忘れられずに、リスクを顧みずにスーパーのお肉でトライしている人が沢山見受けられます。

プロの料理人として気持ちがよくわかりますが、

どれだけの準備をすればよいのか、何が良くて、何がダメなのか、自分にとって許容できるリスクかどうかについて、よく理解しておく必要がありそうです

本記事では、知識を身につけてもらう為に執筆するのではなく、この記事を見れば、食べたいときに思いだして辞書のように使っていただければと思います。


まずは結論から言います


・基本的に食中毒菌が中心部に到達する事は、ほぼない(サイズの問題)

✅肉の構造: 肉は密度が高く、緻密な構造をしています。このため、表面に存在する食中毒菌が肉の内部へ浸透することは困難です。

食中毒菌の増殖箇所について: 食中毒菌は、主に肉の表面で増殖します。これは、酸素へのアクセスと栄養素が豊富であるためです。肉の内部は、酸素が少なく、菌が増殖しやすい環境ではありません。

✅サイズの問題: 食中毒菌のサイズ自体が非常に小さいため、肉の緻密な構造を通過するのは難しいです。また、肉の処理過程では、一般的に表面にのみ菌が付着することが多く、内部に菌が侵入することはほぼありません。

※傷などがある場合、筋肉繊維が緩い場合は危険

肉の表面を数センチ火を通せば、生でも基本食べれるが、E型肝炎だけは、対処の仕様がないので注意が必要です(特にジビエ)。これらの判断基準は適切に管理された畜産物を選ぶ事が重要です。事故事例もかなり少ないですが、管理が杜撰なジビエなどは危険です。

鶏肉を生(なま)で食べる方法

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結論:表面だけシッカリ炙ること、傷に注意する、二次感染に気を付ける

※目で見える寄生虫は例外なく危険です/ひき肉は危険です

特に胸肉の場合は、ささみと胸肉がくっ付いていて手で剥がせる状態で、販売されている事があるので、その隙間にカンピロバクターが潜んでいる可能性ある。そのような箇所には特に気を付けること

■注意するべき菌カンピロバクター・サルモネラ
牛肉の内臓・鶏肉・豚肉などにも表面に付着/毒性は比較的弱いので、腹痛や下痢、発熱38℃程度で済みます/致死率は1~4%)

■鶏肉の表面を加熱すれば死滅しますか?

特に、 鶏刺し、鶏レバー、鶏わさ、鶏肉たたき 等、生の状態、半生の状態、加熱不足の鶏肉の調理に起因するケースが多いです。 カンピロバクターは、主に肉の表面に付着していることが多く、基本的には表面を加熱すれば死滅します➡農林水産省の記述

農林水産省が提唱しているのは表面を加熱すれば大丈夫との回答ですが、筋肉繊維に入り込むとの情報も多数存在しています。しかし

カンピロバクターの大きさは1×1~5㎛とされており、グロビン含量も多く,赤 みの強い筋線維となる.鶏 および アヒルでは,こ の型の筋線維は一般に太くて40μm径以上とされています。カンピロバクターは増殖に際し、炭素源としてアミノ酸や有機酸を利用し炭水化物は利用しないので、筋肉繊維の内部に入り込む要素が無いと思われる。

表面をしっかり加熱すれば問題ないが、鶏肉自体に傷がついている場合は、カンピロバクターが傷付近についていると思われるので、その部位はそぎ落とすことで、表面さえ炙ってしまえば、食べられることになる

■食中毒事例の9割は加熱不足(二次感染も多い)

平成29年に発生したカンピロバクター食中毒事例について、都道府県等の報告に基づき集計したところ、約9割の事例は生又は加熱不十分な鶏肉の提供が疑われました。

まな板に付着したカンピロバクターや、蛇口、手など二次感染要素が強いものも多いので、その点をしっかり注意して食べよう。生食の場合は、表面さえしっかり炙れば、問題はないだろう。

■新鮮な鶏肉か、そうでない鶏肉か

新鮮か、そうではないのかは関係がなく、カンピロバクターに関しては鮮度が高ければ高い程、カンピロバクターの生存状況としては良好な状態です。スーパーでパックに入って、表面の乾燥などによって日を追うにつれてカンピロバクターの数は減っていきます。

サルモネラ菌に関しては、乾燥しても生存はするが増殖することはないので、どちらにしても鮮度に依存しないので、極端に古くなければ食中毒に対する影響度は低いとされます。

■豚肉の汚染検体

厚生労働省の調査の結果市販豚肉の0%(0/28)、豚ひき肉の0.3%(1/367)がカンピロバクター陽性であった。

■汚染されていた検体について

鶏肉の80%が汚染されている。汚染されても、臭いや味に変化はない。京都市保健福祉局の調査によれば、ウシの胆汁から Campylobacter jejuni が150検体中42検体 (28 %) から検出、全国調査では胆汁から35 %、肝臓から12 %の検出が報告されており、屠殺の際に胆嚢を破らない、牛レバー生食による感染の危険性が示されていた。原因菌の多くはカンピロバクター・ジェジュニであるが、豚肉が原因食品と特定された事例ではカンピロバクター・コリが原因菌

牛肉を生(なま)で食べる方法

結論:表面だけシッカリ炙ること、傷に注意する、二次感染に気を付ける

※目で見える寄生虫は例外なく危険です/ひき肉も危険です

■注意するべき菌O-157(毒性が強く、非常に危険です)

➡基本的には内臓にしかいませんが、二次感染によって牛肉の表面にも付着していることが多いです

牛肉にもカンピロバクター菌が検出されていますので、こちらも鶏肉と同様の注意が必要になります。

■生食用の牛肉と、スーパーの肉では訳が違う

失敗


食中毒とは、食中毒菌の数と、どれだけ食中毒菌を摂取したら発症するのかには個人差があります。O157やカンピロバクターに関して言えば、75℃で1分間加熱すると大抵の食中毒菌は死滅するとされていますから、表面さえしっかり炙れば死滅します。牛肉は内部に入り込む食中毒菌はいないので

■スーパーに売っている牛肉の安全性

普通にスーパーに売っているお肉は、食品衛生法に基づく営業許可の必要な34業種の中の「食肉販売業許可」になります。したがって

施設には、冷蔵庫、枝肉取扱場所及び食肉処理室を設けること。ただし、枝肉を取り扱わない場合には枝肉取扱場所を、食肉の処理を行わない場合には食肉処理室を、設けないことができます。


単純にお肉を販売する場合は以下の基準を満たすと許可がおります。
食肉処理室は、他の場所と壁、窓又は戸により区画されていること。ただし、屋内における客用の場所との区画については、カウンター又は陳列ケースを用いることができます。
食肉処理室には、清掃がしやすく、かつ、じんあい等が落下しない構造の天井を設けること。
食肉処理室の内壁は、床面から1mまでは、耐水性材料で、清掃又は洗浄をしやすい構造であること。
食肉処理室の床は、耐水性材料で造られ、平滑で、清掃又は洗浄をしやすい構造であること。
食肉処理室の作業面における照度を100ルクス以上に保ち得る照明設備を設けること。
食肉処理室には、手指の消毒設備又は消毒器具及び流水式手洗い設備を設けること。
食肉処理室には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けること。ただし、食肉処理室の周囲にねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備があるときは、この限りではありません。
食肉処理室には、食品、添加物、器具又は容器を保管するための保管庫又はふた付き容器を備えること。
食肉処理室には、食品、器具又は容器を洗浄するための流水式で、下洗いと仕上げ洗いを区分して行うことができる設備を設けること。
食肉処理室には、食品に直接接触する器具又は容器の殺菌又は消毒ができる設備を設けること。
枝肉取扱場所は、食肉処理室に設けること。

■生食用のお肉は全く違った基準を満たさないといけません

生食用食肉の成分規格
(1) 生食用食肉は,腸内細菌科菌群が陰性でなければならない。

とされている為生食用牛肉には、食中毒の原因となる細菌・ウイルス・寄生虫等は付着していません。容器包装に入れ,密封し,肉塊の表面から深さ1cm以上の部分までを60°で2分間以上加熱する方法又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌を行つた後,速やかに4°以下に冷却しなければならない。

これは生食用に精肉なれた個体の話であって、基本的なお肉がこのような管理基準を満たしているわけではありません。

プロの立場から言えば、信頼できる卸業者から肉を仕入れて、徹底的な保管時の温度管理や、成形管理ができることがシッカリ把握できないと、生食は危険だと思います。ましてやスーパーでは、内臓系のお肉もしっかり取り扱ってますから、それらの人間を信用して生食でも食べられるとは、到底言い難いし、そもそも生肉用の条件を満たしておりませんから、表面だけシッカリ炙らないと、食中毒になります。

詳細不明のE型肝炎ウイルスが怖い

E型肝炎ウイルス(HEV)➡豚以外の動物では鶏、イヌ、ラット、牛、ヒツジ、ヤギ及びニホンザルで HEV 抗体検出が報告されている

※管理された家畜の場合でも、そうでない物も危険(潜伏期間がながいので、E型肝炎と結び付けられることが難しく、よくわかってないが、80%の家畜豚からE型肝炎ウイルスの抗体が発見されている)

先進国ではウイルス汚染肉の喫食による動物由来感染症として注目される

・流行地はインド、ネパール、東南アジア、メキシコなど。
・発症は年齢は15歳〜40歳に多い。
・妊娠第3期に感染すると10%から30%で重症化や劇症化が見られるため注意が必要である
・ブタ・イノシシ・シカ・野生動物の生肉や、生レバーの喫食を行わない事も重要

便口感染の感染様式とされウイルスに汚染された水との接触(飲用)のほか、汚染された肉の加熱不十分での喫食や生食した場合に発症する。本症はほとんどの発展途上国で流行しており、暑い気候の国ではどこでも普通に見られる。東南アジア、北部及び中部アフリカ、インド、中央アメリカなどが主な流行地である。本症は主に糞便などによる水や食料の汚染によって媒介される。ヒトからヒトへの感染は稀である。

日本を含む先進国では、豚肉の生食やイノシシ、シカなどの野生動物、鱈の精巣の生食による感染が報告されている。しかし、三重県で2007年から2012年にかけて続発した感染例では、豚レバー摂取歴の無い感染者の発生が報告されている、二次的に汚染された食品が原因となった可能性があるが感染経路は不明である。潜伏期間が長いことから、原因食品の特定は困難な場合が多い

豚以外の動物では鶏、イヌ、ラット、牛、ヒツジ、ヤギ及びニホンザルで HEV 抗体検出が報告されている。わが国で HEV 遺伝子が検出された例は豚、ラット、イノシシおよびシカである。野生イノシシを対象とした調査において、10-50%の個体が HEV 抗体陽性であり、5-10%の個体の血液、肝臓
から HEV 遺伝子が検出されている。

発症菌数のデータは無い。先進国では不顕性感染が多い。日本では抗体陽性者は約500万人と推測され、そのほとんどが不顕性感染と考えられる。1999~2008年第26週までの累積報告数288例

殺菌条件

45-70℃の加熱処理した糞便をin vitroにより感染性確認試験、半生状態の調理ではウイルス不活化されないことを示唆56度1hでは不活化できない
加熱調理を行うことによりHEVは感染性を失うため、中心部まで火が通るよう十分に加熱すれば食肉による感染の危険性はなし

平成 21 年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」より抜粋 (社団法人 畜産技術協会作成)




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