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見えてきた”再会”への道のり

再生した瞬間に耳に飛び込んでくるのは、「ジャカジャーン!」という歪ませたギターと、軽快なシーケンス音。そこに躍動感のあるベースとシンプルながら音数の多いドラムが加わる。そして歌が入る。

“再会へ! 消えそうな道を辿りたい すぐに準備しよう”

2019年10月に発売されたスピッツの16枚目のアルバム「見っけ」の冒頭を飾る表題曲だ。リリース直後に高揚感あふれるこの曲を聴いて、半年後に当選していた公演への期待が高まった。

彼らの楽曲で、こんなにキラキラした電子音が前面に出ることは珍しい。けれどその土台にはゆるぎないバンドサウンドがある。三輪は出だしのギターを「ジャーン!」ではなくて「ジャカジャカーン!」にこだわったと、どこかのインタビューで言っていた気がする。厚みのある音に電子音が乗っかるのは、The whoの「Who’s Next」の楽曲思い出させた。

イントロとアウトロで印象的なギターのハーモニクス音はPVを観る限り草野が奏でているらしい。ちなみにPVはミラーボールが廻り、色とりどりの光が飛び交う空間でメンバーが演奏している。結成30年を過ぎて、メンバーの年齢も50代となっているにもかかわらず、そんなキラキラした映像のなかにいることに大した違和感が無いことはある意味凄い。

そして文頭であげた歌い出し。Aメロの最初の音程はかなり低いが、ほんの数小節後ではファルセットで歌っている。駆けあがるように音程が上がっていくところも高揚感が凄い。“流星のピュンピュン”“ランディの歪んだサスティーン”といった、抽象的な歌詞でイメージはつかみにくいが、耳に入ると気持ち良い言葉が並ぶ。

という訳で、私はリリース当初から、この曲をライブで見るときを楽しみにしていたのだが、その顛末は今さら言うまでもないと思う。“再会”への道が見通せず、消えそうな状態がしばらく続いた。

それにしても、草野マサムネがメロディメーカーとして、詩人として非凡であることは間違いない。ただ、風貌や歌声に老いを全く感じさせず、やや人間離れしている感があるところに、このタイミングでこのようなことを歌われてしまうと、予知能力的な何かを持っているのではと疑いたくなってしまう。

とにかく図らずもこの歌詞が強い意味を持つことになった。ライブはなかなか開催の目途が立たない状態が続いたが、ここにきてようやく新しいかたち、新しい日程で開催されることになった。準備は整いつつある。きっとこの曲は、ここぞという場面で披露されて、最高に盛り上がるのではないかと思う。とても楽しみだ。

まあ、まずはチケットが当選しなければいけないけど。

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