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転ぶ、起きる、歩き出す

今夜の私は肋骨が痛い。
腫れていないから、骨折ではないと思う。
湿布貼ってみようかな。

今日、朝早く、初めての駅で待ち合わせをしていた。
予定よりも早く到着したので、駅前の店でラテを買って、手を温めながら待ち合わせ場所で飲もうかしらと、テイクアウトして…ちょっとしたタイミングで、ド派手に転んでしまった。

左手に持っていたラテは宙を舞い、エントランスのガラスを汚してしまうし、その一部は私の前髪からしずくになってポトンと落ちた。
散々じゃないか。

それにも増して辛いのは、右肩に掛けていたトートバッグの中の硬めの物が、倒れた身体の肋骨部分を圧迫して痛いし、息ができない。
「うっ、うっ、うっ…。」
やっと少し息ができるようになり、恥ずかしさを押し退けて上半身を起こすと、心配そうな表情の男性が静かに問うてくる。
「大丈夫ですか?救急車を呼びましょうか?」
ちゃんと恥ずかしい。
「ありがとうございます。頭は打ってないので、大丈夫だと思います。ここが痛くて、息ができなかったけれど、大丈夫になってきました。」

そんな話をしているうちに、お店のスタッフの方が飛び出してきて、
「ラテを作り直しますね。」とか
「ごめんなさい、エントランスを汚してしまいました。」とか、ズレ漫才みたいな会話があり、私は有り難く、新しいラテを頂き、立ち上がって歩き出した。


危ないね、気をつけよう。
利き手じゃないほうにラテを持ってたのも良くなかったな…とか、そもそも、お店で座って飲めば良かったとか、プチ反省会をして、左手首も痛い事にも気づく。転んだ時に、咄嗟にラテから手を離し、身体を支えた時に、捻ってしまったみたい。
散々な状態のスローモーションを想像して、ちゃんと落ち込んだ。

そんな事で、事故発生から12時間経過しているけれど、まだ痛いし、咳しても、笑っても響くんだけど、本当に大丈夫な感じ?


家に帰ってこの時間になり、今日起こった転倒事故を身振り手振りで、説明しているうちに、すごく昔の出来事を思い出した。

お世話になった上司が退職し、地元で里山ボランティアを始めたという話を聞いて、仲間達と週末イベントに出かけた時だった。まだ小さい子どもたちも連れて行った。

私の仕事仲間に遊んでもらって、大はしゃぎの子どもたち。
里山を駆け回っていたが、息子が勢い余って、落ち葉の中で派手に転んでしまった。
軽く斜面だった事もあり、見た事ないような勢いで、かなり痛そうだった。
あれは何歳だったんだろう。4、5歳だったかな。

「わー、上手に転んだね、ちゃんと両手が前に出て、顔や頭を打たないように守ってくれてたよ。上手!」

泣き出すまえに、気持ちを立て直す手伝いがしたいと思い、明るい大きな声で声がけした。
息子はすっくと立ち上がり、何もなかったのように、また妹を従えて走り出した。

遠くに走っていく息子達の様子を見ながら、
同僚の若い男性が言った。
「なんと、そんな褒め方あるんですね。」
満足気に笑っていた。
「そうだよ、転び方を小さい時に習得するのは大切だよ。上手に転んで、立ち上がる事も覚えるしね。」

ちょっとした出来事だったけれど、あの日、子どもたちの成長をしみじみと感じた事を思い出した。


肋骨の痛みを、友人にギャンギャン報告しているうちに、そんな昔話を思い出したよって、共有。

あの時、一緒の時間を過ごした同僚も、今ではお父さん。どんな子育てをしているんだろうか。
ガッツがあって、優しい人だったから、きっと、いいお父さん、いい旦那様になっているんだろうな。
君に幸あれ!

今はもう、集まる事も無くなったけれど、
忘れたくない仲間の顔や、一緒に過ごした休日を肋骨の痛みとともに思い出しましたよ…肋骨サンキューって事で、最悪な土曜日が、ほっこり土曜日に戻ったよ!というお話

良い週末を。

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