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真相は闇のなか

高校生の頃に初めて肝試しに行った時の事だった。

自転車で30分くらいかけて行ける小さな公園、そこにいかにもな雰囲気を漂わせた公衆トイレがある。

それはかなり昔からあり、整備が行き届いてないことから荒れ果てて使えなくなり立ち入り禁止になっていた。

巷ではそのトイレで自殺した人が居るという噂が流れていて、中に入ると霊が見えるとか女の人の声が聞こえるとかそんな話を聞いていた。

トイレには完全に木の板が打ち付けられていて入れなくなっているはずなんだけど、肝試しに来ている輩が無理やりこじ開けたのか人が1人通れるくらいの穴が空いていた。

俺たちはかまわずそこから中に入り散策した。

とは言え公衆トイレだから男用の場所と女用の場所があるくらい、まずは男子トイレを散策したが別になんの異変もなく噂とは違い意外と中はキレイだった。

「なんかおかしくね?」

そう話しながら女子トイレに行くとなぜか空気が変わった。

張り積めている緊張した空気になり、その場に居るだけで息苦しかった。

俗に言う寒さとかではなく、威圧的な空気感と重い感じ、頭が締め付けられて痛いし吐きそうになった。

「ちょっとまって、ここヤバくないか?」

俺がそう言うと他の二人も顔を真っ青にしながら頷いた。

言葉が出ないらしい

これはまずいと思い女子トイレを出ようとしたが、足元がフラつきその場に転んでしまった。

俺を助けてくれた他の二人は俺の肩を抱えてくれ起き上がらせてくれたがさっきよりも顔面蒼白になり俺の後ろを見つめていた。

その先には転んだ拍子に空いてしまった個室の中があった。

和式トイレを囲むように赤いなにかで書かれた六芒星、その端々には猫の首が置かれており、壁には殺してやると赤くて大きい文字が記されていた。

そしてその文字の真ん中に洋風な人形が釘で打ち付けられており異様な雰囲気を醸し出していた。

ヤバい空気の根元はこいつだった。

俺達はすぐにトイレから逃げ出し足早に公園から去っていった。

後日トイレの中がそうだったと話すが誰一人信用すらしてくれなく、まして確かめにいこうとした奴らからの報告で木の板が思った以上に頑丈に固定されていて破壊もできないし、穴すら空いていなかったと話を聞いた。

じゃあ俺達が行ったあのトイレはなんだったんだ?

いったいどうして中に入れたんだ?

全ては疑問のまま、ただ残っているのはあのとき見た女子トイレの異様な光景、それと・・・

逃げる時に聞こえた「手遅れだよ」というこの世のものではないような不気味な声、俺は毎日怯えて暮らしている。


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